【漫画】幼い頃に別れた実の母、初めて送ったプレゼントに冷たい反応で……『梅ちゃんのおせっかい』が残酷で優しい

「僕が中学一年生になったばかりの頃/父の妹の梅叔母ちゃんがやってきた」

少年・茜と叔母である梅子、そして茜たちの家族を描いた漫画『梅ちゃんのおせっかい』が2024年6月にpixivで公開された。実の母とは離れて暮らす茜であったが、どうやら梅子は茜の母を見かけたらしく……。

リアルで、たしかにあたたかい家族の関係が描かれる本作の作者・そら豆ぽん太さん(@pyuzu1005)は、作中に登場する家族について10年ほど描き続けている。登場人物について、家族を題材にした漫画を描き続ける思いなど、話を聞いた。(あんどうまこと)

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

そら豆ぽん太(以下、そら豆):私は自分の身の周りで起きたことを漫画として描くことが多く、本作も家族に関する話を耳にした際に抱いたモヤモヤとした気持ちを題材に描きました。

本作に登場する家族は昔から漫画として描いており、今年で10年ほど経ちました。この家族にも愛着があるので、自分のモヤモヤを表現した結果、本作の主人公である茜にかわいそうな思いをさせてしまいました。そのため最後は良い話で終われるようにすることを意識しながら描きました。

ーー茜さんやあおいさん、梅子さんや桜太郎(おうたろう)さんなど、登場人物の名前が印象的でした。

そら豆:最初に生まれたキャラクターはあおいでした。当時の私は仕事を辞め、おばあちゃん家で庭を眺めていると「立葵(たちあおい)」という花が咲いていました。立葵は茎が空に向かって伸びていき、下から順に花が咲いていく植物です。そして梅雨が明けるころにてっぺんの花が咲きます。

その話を初めて聞いたとき、そういった何気ない日常の話を描いていきたいなと思い、漫画を描きはじめました。そのため「立葵」からあおい、クサカンムリがつく茜など、植物つながりでキャラクターの名前を考えました。

ーー作中では随所に植物が描かれていました。

そら豆:私自身が植物が好きということもありますが、作品にリアリティを出すために、現実に咲いている植物を描いています。

本作は梅ちゃんが家に来た5月から物語がはじまり、父の日である6月で幕を閉じます。そのため冒頭では菖蒲(しょうぶ)やツリガネスイセン、終盤ではアジサイや立葵を描きました。

ーー印象に残っているシーンは?

そら豆:茜が買った母の日のプレゼントを、実の母に突き返されてしまうシーンです。ちょっと残酷ですが、そこが1番描きたかったので印象に残っています。

母の愛は絶対なものではないと思っており、世の中には絶縁した家族も多いです。ただ家族に捨てられようとも、人間は1人ではないと思っていてーー。

本作であれば傷ついた茜に対し、父の桜太郎や叔母の梅ちゃんが味方になってくれました。もちろん人だけでなく、音楽をはじめカルチャー作品も味方になってくれる存在だと思います。

ーー本作に登場する茜さんの家族、また家族を題材に漫画を描き続ける思いは?

そら豆:私の描く漫画のほとんどは家族をテーマにした作品です。恋愛もの、アクション漫画も描こうと思いましたが、自分には向いておらず……。自分が得意なもの、描いていて1番楽しいものとして、身の回りで起きた家族に関する物事を漫画として描いています。

ーー漫画を描きつづけるなかで感じる思いは?

そら豆:おばあちゃん家の庭で立葵を眺め、あおいが生まれ、ほかのキャラクターたちが生まれーー。日常を描き残したいという思いから、彼ら彼女らの漫画を描きつづけていくうちに、私にとって漫画は、日常のちょっとしたものを描き記す日記のようなものになりました。

ーー本作の舞台は現在お住いの地域?

そら豆:はい、今は千葉県に住んでおり、作中で登場した海も自分がよく行く場所です。作中に出てくる景色は自分が見てきたところを描いています。

これまで私は田舎に住んできたので、私にとって身近ではない都会を舞台に漫画を描くことはできないと思います。これからも漫画を通じて田舎の風景を描いていきたいです。

ーー今後の活動について教えてください。

そら豆:今までと変わらず、家族や身の回りの物事を題材に漫画を描いていきたいです。漫画とともにイラストやハンドメイドもやっているので、それぞれを両立しながら創作できればと思います。

また私の父親は油絵を描いており、母親は農家をやっているので、私も油絵や農作業をしています。そのため田舎で農作業をしながら、絵を描きつづけていけたら嬉しいです。

(あんどうまこと)

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