プールの中、観光客戻る 金沢21世紀美術館、全館再開

「スイミング・プール」の地下部で記念撮影などを楽しむ来館者=22日午前10時半、金沢21世紀美術館

 能登半島地震で施設が損傷し、一部のみの開放となっていた金沢21世紀美術館は22日、半年ぶりに全館での営業を再開した。人気作品「スイミング・プール」地下部など有料の展覧会ゾーンが入場可能となり、再開を待ちわびていた観光客らが午前中から鑑賞を楽しんだ。正午までの入館者数は3284人と先週土曜の1.3倍となり、関係者は「やっと美術館があるべき姿に戻った」と、安堵(あんど)の表情を見せた。

  ●有料展覧会ゾーンも

 「スイミング・プール」の地下部は、1時間につき最大110人限定で入場を受け付け、午前の分は早々に予約で埋まった。家族連れや女性グループがスマートフォンを手に続々と入場し、地上部から見下ろす人に手を振ったり、記念撮影をしたりして21美の代表作を堪能した。

 展覧会ゾーンでは全館再開を記念し、「Lines―意識を流れに合わせる」(北國新聞社後援)や「コレクション展1」(同)が開幕。地震で一部が落下した天井のガラス板は全て撤去されて骨組みなどがむき出しとなっており、展示内容に応じて布の幕を張るなどの工夫が施された。

 市民ギャラリーAで開催中の「ヨシタケシンスケ展かもしれない」(北陸放送主催、北國新聞社特別協力)も親子連れが行列をつくるなど人気を集め、館内は午前中から混み合った。正午までの入館者数は、2456人が訪れた15日より828人多かった。

 埼玉県から家族3人で来館した会社員土田貴章さん(42)は「ちょうど全館再開のタイミングでラッキーだった。プールは不思議な感じの作品で、見られて本当に良かった」と喜んだ。

 21美は、元日の地震で被害を受け、約1カ月にわたって休館。2月上旬、無料の交流ゾーンの一部で営業を再開した。担当者は「この半年間は辛うじて美術館としての機能を保っていたという状態だった。今から夏休みもあるので、21美の魅力をさらに楽しんでもらえると思う」と話した。

 金沢市によると、1~5月の入館者数は47万9456人で、コロナ流行拡大前の2019年の同時期(105万7054人)と比べて半分以下に落ち込んだ。市は震災前から大規模修繕を計画しており、今年度着手する実施設計では天井のリニューアルなども盛り込む。

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