上野にある完全予約制のショップ「SELECT(セレクト)」【WN編集部のヴィンテージウオッチショップ探訪】

By WATCHNAVI salon

現行モデルのみならずヴィンテージウオッチにも目がないWN編集部の平野が、まだ訪れたことのない店舗に取材していく不定期連載をスタート! 記念すべき第1回は上野にある「SELECT(セレクト)」を訪ね、取材時に店頭にあった時計の説明とともに店主の杉田さんが考えるヴィンテージウオッチの魅力を教えてもらった。

上野にあるヴィンテージショップ「SELECT」の内装

“もっと時計が好きになる”アメ横の秘密基地

スマホ片手に日課のヴィンテージウオッチ探しをしていると、上野に気になるお店を見つけた。その名も「SELECT(セレクト)」。早速取材を申し込むとすぐに返信があり、快く引き受けてもらえることになった。取材当日、いったいどんなお店なのかワクワクする気持ちを抑えつつ、2階まで階段を上がりインターホンを押す。開いたドアの奥から、店主の杉田さんが笑顔で迎えてくれた。木目調で温かみのある店内では、こだわりが伝わるヴィンテージウオッチが販売されていた。

SELECT店主の杉田さんが着用していたモデルは、1968年製のキングセイコーのセカンドモデル。比較的手ごろな価格で、当時の日本最高峰の技術力を味わうことができる点が魅力だと語る

早速、店主の杉田さんにお店を始めた経緯を聞いてみると、「大学在学中から、ヴィンテージウオッチ専門店での仕事を開始し、販売、仕入れなど、多岐にわたる業務を経験しました。ヴィンテージウオッチの魅力を伝えるために、2018年に上野のアメ横に店舗を構えました」とにこやかに話す。

商品ラインナップは、1930年代から80年代くらいの機械式で、ブランドも幅広く、実用的に使用できる時計を扱っているとのこと。それに加えて、杉田さんが宝探しだと話す、低価格でデザイン性の高いヴィンテージウオッチも見逃せない。セイコーなどの国産から海外ブランドまで、中々見かけることのないデザインは眺めているだけで面白い。これらは、ヴィンテージウオッチの2本目以降にハズシとして購入するにはうってつけの時計といえる。

初心者がヴィンテージウオッチを始めて選ぶ際には、デザインや価格はもちろんだが、長い年月が経っているものだからこそ、アフターサービスが重要になる。杉田さん曰く、「最低でも半年、できれば1年以上の保証が付いている時計の購入を勧めている」という。1年以上の保証が付いている場合、買ってすぐに壊れるような可能性は低いので、特に初心者の場合は参考にしてほしい。他にも、ヴィンテージウオッチ選びで重要なのがサイズ感。「装着感が悪くて手放した人はたくさん見てきましたけど、小さくて軽い時計は手放す人が少ないですよね」と説得力のある経験談を話してくれた。

上野のアメ横にあるビルの2階にひっそりと佇む「SELECT」は、まるで、秘密基地にいるかのような居心地の良さが魅力。商品知識豊富な店主と楽しく話しながら、ヴィンテージウオッチへの理解を深めることができる。「SELECT」という店名の由来は、国内外問わず、誰もが読めるようにと名付けられたそう。店名の由来からも、時計の習熟度に関わらず、幅広く受け入れてくれる懐の深さが伝わってくるはずだ。

「SELECT」流|ヴィンテージウオッチの楽しみ方

文字盤の焼けに注目

文字盤が経年変化により変色する「焼け」は、ヴィンテージウオッチ特有の現象である。この変色の原因は完全には解明されていないが、一般的には日光による日焼けが経年変化を促進すると考えられている。しかし、日の当たらない場所で保管されたデットストック品でも変色する個体があるため、文字盤の酸化が原因である可能性も指摘されているなど、様々な要因が関与している。

満遍なく焼けたハニカムダイアル

チューダー「オイスター」 Ref.7902 1950年代 手巻き

エンボス加工を施したハニカムダイアル(別名ワッフルダイアル)で、全体的にエイジングされた文字盤が魅力。12時位置に小さな薔薇がデザインされた個体は、「小バラ」と呼ばれる。大きな薔薇がデザインされた「デカバラ」も存在する。直径29.5mm。

独特の風合いが魅力のラジウム夜光

オメガ「イギリス陸軍 ダーティダース」 1940年代 手巻き

夜光塗料として使われていたラジウムが経年変化により、褐色に変化している個体。この時計は、第二次世界大戦末期にイギリス陸軍用として製造されたW.W.W.シリーズの一部で、通称「ダーティダース」とも呼ばれている。約2万5000本が製造された。直径35mm。

現行モデルのルーツを探る

現行モデルでも販売されているコレクションの過去を知ることができるのもヴィンテージウオッチ探しの醍醐味のひとつ。ヴィンテージウオッチは、そのデザイン、ケースサイズ、素材選びに至るまで、それぞれの時代の特徴を色濃く反映されており、レトロで小径のモデルが豊富に揃っている。また、近年の復刻デザインブームが示す通り、ヴィンテージウオッチのデザインは現代でも高く評価されている。

小径の2代目クロノマット

ブライトリング「クロノマット」 Ref.808 1967年製 手巻き

世界初の計算尺を備えたクロノグラフ、クロノマットの2代目モデル。Bのロゴも含むアップライトインデックスは視認性が高く、ドットデザインの回転ベゼルがクラシカルな雰囲気を醸し出している。1960年代ならではのコンパクトなサイズ感も魅力。直径37.5mm。

ジェンタデザインのコンステレーション

オメガ「コンステレーション Cライン」 Ref.168.027 1968年製 自動巻き

通称「Cライン(ジェンタケース)」と呼ばれる、ケースとラグが一体化したデザインは、数々の名作を生み出したジェラルド・ジェンタが手掛けた。絹糸のような模様のリネンダイアルに、ホワイトゴールド製のコインエッジベゼルを装備した高級機。直径35mm。

国産の個性派は1960~70年代が面白い

1960年代から70年代にかけてのセイコーは、高級モデル「グランドセイコー」や世界初のクオーツ時計「クオーツアストロン」を市場に投入するなど、時計製造の技術力が大きく向上。ダイアルの型打ち模様やケースのプレス加工など、精密な仕上げが可能になったことでデザインの多様化が進み、これまでにない個性的なモデルが登場した時代でもあった。

当時を象徴するレトロなTVスクリーン

セイコー「シャリオ」 Ref.2559-3010 1969年製 手巻き

当時のセイコーでは珍しいスクエアケースに、少し緑がかったブルー文字盤とブルーのインデックスを備えた一本。当時の純正ブレスレットは、スライド式で簡単に調整が可能。厚さ7mmとスリムなケースのため、装着感も良好だった。縦32×横30mm。

ブルー&ブラックの個性的なマーブル柄

セイコー「シャリオ」 Ref.2220-0460 1974年製 手巻き

文字盤のカラーがブルーとブラックのマーブル調になった個性派。手書き風のアラビア数字のインデックスと針をホワイトにしたことで、判読性が高さとレトロな雰囲気を両立している。文字盤のマーブル柄が個体ごとに異なる点も魅力的。直径34mm。

仕上げ分け文字盤にゴールドメッキケース

セイコー「シャリオ」 Ref.2220-0520 1976年製 手巻き

グレー&ブラックのツートン文字盤は、左右半分ずつで異なる仕上げが施されており、光の反射によって表情が変化する。ゴールドメッキケース(ASGP)に黒系文字盤、金色の長短針と12時位置のデザインが華やかな印象を受ける。直径33mm。

取材協力店【SELECT(セレクト)】住所:東京都台東区上野6-5-1 岩坂ビル201
TEL:03-5846-8834
定休日:水・木曜(臨時休業有り)
営業時間:9:30 〜 17:00(最終入店16:30)
※完全予約制

Text/平野翔太(WN編集部) Photo/高橋敬大(TRS)

◎本記事は『ウオッチナビ 2024 Summer Vol.94』より抜粋・編集しています。

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