植物工場でイチゴ栽培に取り組む地元新興企業 中国貴州省

植物工場でイチゴ栽培に取り組む地元新興企業 中国貴州省

イチゴの植物工場の実験室で生育状況を検査する貴州有数農業発展の担当者、徐緯氏。(5月22日撮影、遵義=新華社記者/劉智強)

 【新華社貴陽6月22日】中国貴州省遵義市匯川(かいせん)区泗渡(しと)鎮を拠点とする農業スタートアップ企業、貴州有数農業発展は今年、地元でイチゴの植物工場を稼働させた。

 季節を問わず通年で作物を栽培、収穫できる植物工場はここ数年、注目度が急速に高まっている。スマートコンピューターと電子センサーシステムを用いて作物の生育に適した気温、湿度、照度、二酸化炭素(CO2)濃度などの条件を自動制御することで、単位面積当たりの収益性を向上させる。

 担当者の徐緯(じょ・い)氏によると、同社は4年以上前から地元でイチゴのハウス栽培を行ってきたが、気候に影響されやすく、競争も激化していることから、植物工場の運営に乗り出した。

 植物工場で大規模な作物栽培を実現させるのは容易ではない。初期投資コストが高いほか、大量のデータサポートが必要になる。同社はまず、広さ67平方メートルの植物工場の実験室を作り、イチゴ栽培の実験を3年以上かけて実施。大量のデータを収集するとともに、コスト削減についても検討した。

 イチゴの生育や病害などに関する各種データを得たことで、病気になりにくく、大きさのそろった甘いイチゴを育てることが可能になった。同社は業界に先駆けて、比較的規模の大きいイチゴの植物工場の稼働にこぎ着けた。

植物工場でイチゴ栽培に取り組む地元新興企業 中国貴州省

イチゴの植物工場のスマート管理プラットフォームを紹介する徐緯氏。(5月22日撮影、遵義=新華社記者/劉智強)

 野菜の植物工場で行われる水耕栽培と異なり、イチゴの植物工場では10年以上経過した川砂や松葉、半年以上発酵させたミミズ堆肥、ヤシガラ培土(ココピート)、土壌改良資材パーライトなどを混合して作った「土壌」を使い、イチゴの生育に必要な栄養を供給する。

 工場の敷地面積は3800平方メートルだが、イチゴの収穫量は26万平方メートル余りの耕地と同等になる。従来のイチゴ栽培拠点であれば、26万平方メートルの広さに年間300人以上の労働者が必要だが、スマート化された植物工場で人手が必要なのは定期的な剪定と毎日の摘み取りのみ。運営は10人ほどで十分だという。

 徐氏は「試算によると、植物工場の水使用量は従来のハウス栽培と比べ、99%以上節約できる」と説明。単位面積当たりの収益は20倍余りになると話した。

 同社は農業を主力事業としているが、デジタル人材が中核業務を担う。従業員17人のうち、管理職6人を除いた11人中8人がソフト開発とデータ分析を担当。イチゴ栽培の経験者は3人のみとなっている。

 徐氏は、農業に従事したい若者は減少傾向にあるが、イチゴの植物工場によって「畑で汗水たらして働く」という固定概念を払拭し、農業を「自然任せ」ではなく働きがいがあって稼げる産業にすることで、農村に戻り農業に従事する若者が増えることを期待すると語った。(記者/劉智強)

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