「人生で1番緊張しました」J2モンテディオ山形MF氣田亮真の同点弾でみちのくダービーはドロー決着

J2第21節モンテディオ山形vsベガルタ仙台戦が22日に天童市内で行われ、両者接戦の末に1-1で引き分けた。山形は仙台にペナルティーキック(PK)を決められて先制を許すも、今季仙台から加入したMF氣田亮真が前半40分にPKから同点弾を挙げて宿命の対決「みちのくダービー」はドロー決着となった。

前半40分―。ペナルティーキッカーに名乗り出た氣田がボールを抱えると、仙台サポーターが割れんばかりのブーイングをスタジアムに響かせた。仙台から「禁断の移籍」を経て宿敵に渡った男だけにはゴールを許したくないといった具合に、アウェーゴール裏からすさまじい圧力をかけた。

それでも山形の背番号10はゆっくりと助走をつけて勢いよく右足を振り抜き、ゴール右隅へとシュートを突き刺した。

同点弾が決まると、氣田はFW高橋潤哉と熱い抱擁を交わして喜びを爆発させた。

高橋と抱擁する氣田(背番号10)

「(ゴールの)後ろにたくさんの仙台サポがいましたけど、あまり関係ない。いろいろ駆け引きはありましたけど、自分の能力を信じてゴールできて良かった」と氣田。

仙台から山形へ移籍し、背番号10を背負って挑んだ今季は仙台戦前までリーグ戦20試合1得点と思ったような結果を出せずにいた。そしてペナルティーキッカーを務めたJ2第9節鹿児島ユナイテッドFC戦では相手ゴールキーパーにシュートをセーブされて苦い思いをしていた。

それだけに古巣であり、宿敵でもある仙台からゴールを奪って自信を手にしたように見えた。

譲れない思いがあった

背番号10は量り知れない重圧を抱えていた。専修大時代から気持ちが強く、劣勢であっても冷静に試合へ臨む姿があった。その姿勢はプロになっても変わらず、クールな表情を崩すことなく鋭いドリブルで何度もチャンスを創出してきた。

仙台DF真瀬(左)と対峙する氣田

みちのくダービー前に背番号10は古巣との対決に注目が集まっていたが、決戦前でも「緊張しているようには見えなかった」と、山形の広報スタッフが明かした。

筆者がダービー前にインタビューした際も氣田はクールな面持ちで取材に応じたが、ダービーの話題になれば「自分がネットを揺らす」と自分自身へ言い聞かせるように力強く繰り返した。

その気持ちの強さはレフェリーからPKを言い渡された際に改めて垣間見られた。ペナルティーキッカーに高橋が名乗り出たが、氣田は決してキッカーを譲ろうとしなかった。

背番号10は「お互い『蹴りたい』と言い合いをして、最後に彼(高橋)が『亮真が蹴っていい』と譲ってくれました」とやり取りを明かし、「サッカー選手としてもそうですし、男として逃げ出したくないというのもありました」と信念を突き通してネットを揺らした。

ペナルティーキッカーを高橋(左)から託された氣田

そして「とにかく怖かったです。人生で1番緊張しました。前回(鹿児島戦でPKを)外していますし、古巣相手ですし、いろんな思いがあって…。緊張しましたけど、ここで一つ大きなハードルを越えたかなと思います」と本音をこぼした。孤独の中でプレッシャーと戦いながら有言実行を果たした男は、腫れ物が取れたような表情を浮かべていた。

【インタビュー】古巣対戦に燃えるモンテディオ山形MF氣田亮真が語る「みちのくダービー」への決意

チームは勝点23で暫定14位と昇格プレーオフ圏内6位レノファ山口と勝点が11点差離れている状況だ。氣田は「勝ち切って勢いを出したかったです。でもなにかを掴んだきっかけになるゲームになったので、ここから這い上がりたい」と闘志を燃やす。さらなる進化の兆しを見せる期待のアタッカーが、チームを2015年以来9季ぶりのJ1復帰へと導いてみせる。

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