遺体、早く確実に遺族へ 群馬県警 医師らと災害時対応訓練

頭部のけがや瞳孔を詳しく見る検視官。さまざまな部位を細かく写真撮影した

 全国で毎年のように地震や台風などの大規模災害が発生し、多くの犠牲者が出る中、群馬県警が遺体の搬送から検視、遺族へ引き渡すまでの連携強化に取り組んでいる。警察官や医師による訓練を昨年度から始め、1月に発生した能登半島地震でも現地の活動で力を発揮した。県警の担当者は「災害時でも犯罪死の見逃しや取り違えは許されない。普段から備えることが大切だ」と強調している。

 20日に前橋市の県警察学校で行われた訓練。マグニチュード(M)7.1の地震で同市内の家屋が倒壊し、土石流の中から多数の遺体が見つかった想定で実施され、県警捜査1課検視官室や警備2課の警察官、医師と歯科医師ら約50人が参加した。

 「発見時間は0時10分。場所は神社西側事務所」。青い袋に入った遺体を検視場所へ運び込んだ広域緊急援助隊と受付担当者が、書類と口頭で発見状況を共有した。遺体があった場所や発見時の体勢、身に着けていた物は、死因や身元を特定する手掛かりになる。検視官や死体検案書を書く医師に正確に伝えるため、連携は欠かせない。

 遺体が検視台に乗せられると、検視官らが手を合わせ、欠損部や傷を調べていく。服を脱がせ、全身の皮下出血も細かく確認。医師に遺体の状況を説明し、死因を割り出す。

 身元の特定には、歯の特徴や治療跡を記録し、生前のカルテと照合させる。近年では治療に使う主な素材が、金属からプラスチックに変わってきているという。プラスチックが見えやすくなるブラックライトを当て、治療の痕跡を探す。

 取り違えなく引き渡すには、動揺する遺族への対応も習熟させる必要がある。担当者が落ち着いた口調で安置所を案内し、丁寧に衣服と遺体を示した。

 杉浦亘人検視官室長は「できるだけ早く、正確に遺族の元に帰せるよう、各業務の練度を高めたい」と力を込めた。

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