消費者庁もサウナに注意喚起!「整う」ブームに潜む危険性を専門医が解説

「整う」爽快感を求めて…(C)日刊ゲンダイ

身も心も「整う」と老若男女問わず人気のサウナ。爽快感やリラックス感を得られるものの、実はキケンと隣合わせだ。一歩間違えば命を落としかねない事故も多発しており、6月5日には、消費者庁が国民に向けて注意を呼びかけた。

消費者庁によると、事故の約9割は「やけど」「骨折・打撲」等の外傷だという。「ロウリュウで発生した大量の高温水蒸気が当たりやけどをした」という、さもありなんという事例もあれば、「熱いと思いながらも10分間ヨガのポーズを取り続け、臀部にやけどを負った」というケースもあった。

40代以上の中高年では、外傷に加えて、より危険度の高い「めまい・意識障害」「循環器障害」も目立つ。50代の女性はスポーツクラブのサウナ利用中に心臓発作を起こし、70代の男性はスーパー銭湯のサウナ室で座ったまま意識を失った。どちらも死に直結してもおかしくない事故だ。

近年、漫画やドラマの影響によるサウナブームで、サウナ愛好家が増えているような印象があるが、データを見る限りそうとも言い切れない。一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所の「日本のサウナ実態調査2024」(日本全国1万人、18~69歳の男性5015人・女性4985人を対象)によると、増えているのは年に1回程度利用するというライトユーザーだ。サウナ利用をする全体人口とライトユーザーは、22年と23年の比較で、それぞれ1681万→1779万人、845万→1128万人と増加している。その一方で、月に4回以上サウナに入るヘビーユーザーと月1回以上のミドルユーザーは、それぞれ287万→219万人、548万→431万人と減少している。

熱いサウナ→冷たい水風呂の急激な温度差が血圧を急上昇させる

事故が増加している背景には、サウナの正しい入浴方法や危険性を熟知していないライトユーザーの増加があるようだ。

そこで、正しいサウナとの付き合い方について、入浴を医学的に研究する東京都市大学人間学部の早坂信哉教授(温泉療法専門医)に聞いた。

「熱いサウナに長時間入って冷たい水風呂に入る、いわゆる『整う』と、もてはやされている入浴法ですが、あまりお勧めできません。爽快感やトリップ感をもたらすと言われる温度差が、体には大きな負担となります。急激な温度差が血圧を急上昇させ、男女を問わず中高年の方には負担が大きいため、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす要因にもなるのです。サウナの本質は体を温めること。血流が良くなり、サウナと上手に付き合うことは、長期的な健康維持には良い入浴法です。サウナの本場フィンランドの研究では、体を温めること自体は長い目で見ると脳卒中や心筋梗塞の予防に効果があるという結果もあります。苦行のように熱さに耐える必要はないですし、温度差が体に負担がかかるため、水風呂も必須ではありません。誰かと競うことなく、無理せず心地よく入って欲しいですね」

“整う”がもてはやされているが、サウナの危険性を知らないと、返って“整わず”、体調不良を起こすこともあるようだ。

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