【コラム・天風録】6・29豪雨25年

 広島市の西の方で大きな被害が出ている―。市役所の中で取材し続けていたからか、にわかには信じられなかった。佐伯区はじめ県内で30人を超す犠牲者が出た「6・29豪雨」といえば、そんな記憶がよみがえる▲雨の降り方が以前とは一変した。特定の場所に集中して降り、大きな被害をもたらす。そう身に染みた豪雨災害から間もなく25年になる。「土砂の滝 家屋のむ」「体、一瞬で土中に」…。当時の本紙の見出しからも大雨の恐ろしさが浮かんでくる▲広島土砂災害や西日本豪雨とその後も大雨に苦しめられてきた。広島ならではの悪条件もある。水を含むともろさを増す「まさ土」や急傾斜地の多さが被害を増幅させている▲気象庁はきのう、中国地方が梅雨入りしたとみられると発表した。平年より16日、3年前に比べると41日も遅い。その分、大雨警戒の日が減れば良いのだが、相手は自然、油断は禁物だ▲「自ら身を守ろう。そのために必要な情報を行政など関係機関は伝えよう」。6・29豪雨の後、本紙が始めた緊急連載は、そんな提言で締めくくっている。何度も繰り返された言葉かもしれない。それでも、梅雨入りを機に改めて胸に刻んでおきたい。

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