広島ドラゴンフライズB1初優勝で注目高まる新アリーナ構想 音楽イベント事業者も後押し、「広島飛ばし」の悩み解消も?

Bリーグ日本生命チャンピオンシップ決勝で広島の勝利に沸く横浜市の横浜アリーナ

 バスケットボール男子Bリーグの広島ドラゴンフライズが初の年間王者となり、新たな「夢の器」づくりへ関心が高まっている。新アリーナ構想を掲げるクラブは民設民営を理想とし、年内にも建設の方向性を打ち出す方針。音楽などのイベント事業者たちも歩調を合わせ、機運を盛り上げる。

 ドラフラが優勝を決めた2日後の5月30日。報告のため広島市役所を訪れた浦伸嘉社長の言葉には頂点に上った勢いが表れていた。「サンフレッチェ広島さんも優勝してスタジアムの話が一気に加速したと聞いた。われわれのアリーナの話が加速するのを願っている」。2月に開業したエディオンピースウイング広島(中区)を引き合いに期待をにじませた。

 スポンサーや後援企業の熱も高まる。今月6日に中区であった「感謝の会」には約300人が集い、出席者からは「次は体育館じゃね」と高揚した声が飛び交っていた。

 クラブにとってアリーナ整備は待ったなしの課題だ。2026年に発足する「Bリーグ・プレミア(Bプレミア)」に参入するには5千人以上を収容する本拠地が不可欠。VIPルームなどを備えた施設を28~29年シーズンまでに構える計画を示す必要がある。

 ホーム戦で主に使う広島サンプラザ(西区)は最大4500席で基準を満たすのが難しい。クラブは参入条件に対応するため、最大約6900席の広島グリーンアリーナ(中区)を自己負担で改修し、26~27年シーズンから5年程度使う。浦社長によると、この暫定利用を終える30年ごろまでに新アリーナを整備する工程を検討中という。

 全国ではBリーグ公式戦で使うアリーナの建設ラッシュとなっている。21年に沖縄市、23年に佐賀市と群馬県太田市で開業した。25年夏までに千葉県船橋市や長崎市、神戸市、名古屋市でも完成する見通し。約1万人収容が主流。プロスポーツ以外にコンサートやアイスショーも誘致できる「稼ぐ施設」が目立ち、半数以上は民設民営だ。

 広島県内でも、大型コンサートの会場不足を訴えるイベント事業者がドラフラの構想を後押しする。

 5月に中区でアリーナをテーマにしたシンポジウムを開いた広島イベント事業振興協会の松本朋憲理事長(50)は「地域の文化やスポーツの発展には多目的な新アリーナが不可欠だと確信した。ドラフラと協調して市民の理解を広げたい」と力を込める。8月にも市民に建設の賛同を呼びかけるイベントを予定する。

 今後の焦点は建設地や事業の枠組みだ。5月のシンポジウムでは、市中心部を候補地に挙げる参加者が複数いた。また、広島市の松井一実市長は「官民一体でやりたい」、湯崎英彦知事は「県としてどういった協力ができるのかを検討したい」との意向を示す。野球、サッカーに続く「夢の器」づくりは、民間が主導しつつ、行政や市民が幅広く後押しする形が見込まれる。

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