学校に塾に多忙な小学校高学年が質の良い睡眠をとるための生活リズム。食事、お風呂のタイミングと決めておきたいスマホルール

小学校の高学年になると塾へ通い出したり、習い事で家に帰ってくる時間が遅くなる機会が増える。

そんな多忙で時間のない高学年の子どもたちにからすると、生活の基本である就寝・起床時間を毎日一定にして睡眠リズムを整えることも難しくなる。

さらに高学年だからこそ起こり得る睡眠の悩みも出てくる。

小児科医で小児神経科医・熊本大学名誉教授の三池輝久さん監修で、乳幼児睡眠コンサルタントの愛波あやさんの著書『忙しくても能力がどんどん引き出される 子どものためのベスト睡眠』(KADOKAWA)から、多忙な高学年が質の良い睡眠をとるために整えたい食事、お風呂、スマホの習慣について、一部抜粋・再編集して紹介する。

塾行く前ならおにぎり&味噌汁

塾が21時に終わり、帰宅後に夕食というご家庭もあるでしょう。

消化時間を考えると、本当は食事を睡眠の3時間前に終えるのがベスト。

しかし、育ち盛りの子どもたちは、塾に行く前に食べても、塾の授業の合間にあるお弁当時間で軽食を食べても帰宅後にはお腹が空いているはず。

塾から帰宅後に食事をするなら、消化に時間がかかる揚げ物や脂肪分の多い肉などは控えた方がよいでしょう。

睡眠の直前に満腹になるまで食べると、食べたものを消化するために胃腸が働き、どうしても脳や体が休まりません。

ですから、できれば塾に行く前か塾のお弁当時間で軽く夕食を食べて、帰宅後もお腹が空いているようならおにぎりなどを追加で食べるようにすると、より良い睡眠がとれます。

とはいえ、仕事やきょうだいの子育てなどで忙しい場合、子どもが塾に行く前に食事をさせるのは難しいですよね。

そんな時、私がおすすめしているのは具だくさん味噌汁とおにぎりです。

おにぎりは事前に作って冷凍をしておき、前日にお味噌汁を多めに作っておいて冷蔵庫に保管しておきます。

夕食はなるべく同じ時間に

子どもが一人で塾に行く前におにぎりと味噌汁をレンジで温めて食べれば、火を使う心配もなく、お腹も満たされます。

そして帰宅後、主菜と副菜、サラダなどを食べるといいでしょう。このおにぎりとお味噌汁を塾弁として持っていってもよいでしょう。

もし、塾が自宅から遠くにあって帰宅時間が遅くなるようなら、塾前に作り置きの主菜と野菜などを食べてもらいましょう。

そして帰宅途中の車の中でおにぎりを食べれば、寝る直前に胃もたれする脂っこいものを食べることを避けられ、かつ食事時間を短縮することができるので睡眠時間を犠牲にすることもありません。

なお、一つ注意をしてほしいことがあります。それは夕食をとる時間帯です。

ある日は19時に食べて、ある日は22時、と夕食の時間に90分以上の差があると入眠時間がずれ、疲労や精神面にも影響があるという報告があります。

塾で忙しいでしょうが、なるべく同じ時間にしましょう。

時間がなければお風呂は翌朝に

疲れを取るために、塾から帰宅後にお風呂に入るように子どもに伝えている家庭もあるでしょう。でも、睡眠直前のお風呂はあまりおすすめできません。

眠りに入っていく時、脳と体(内臓)の温度、いわゆる「深部体温」は下がっていきます。この深部体温が下がると眠気は強く、深くなるという研究結果が出ています。

でも、お風呂に入って温まった直後は脳も体も温度はかなり高くなっていて、ここから体温が下がるまでには時間がかかります。

そのため、入浴した直後に布団に入ると深部体温を下げることができず、すぐに眠ることができないのです。

塾から帰宅して就寝時間まで時間がないようならお風呂には入らず、パジャマに着替えて睡眠を優先して、翌朝お風呂に入る方が、結果的に良い睡眠をとることができます。

入浴後90分、最低でも60分が経過すれば皮膚から熱が放出されて深部体温が下がります。

どうしてもお風呂に入りたい場合、例えば子どもが22時30分に寝るのであれば、21時までにお風呂に入れば睡眠を阻害することはありません。

ちなみに40℃前後のお湯に15分程度入ると深部体温が上がり、90分後には温度が下がるので深い眠りに入ることができます。

一方、お風呂に入りたいけれど、その時間がないようであれば、足湯がおすすめ。

リフレッシュもできますし、軽く温めるだけなので深部体温が下がるまでの時間が短くなり、深い眠りも得やすくなります。

日中、人間は脳をフル活用しています。そして子どもたちは寝る直前まで勉強をして脳の機能を働かせています。

そんなオーバーヒートぎみの脳の温度を下げて、休ませるためにも、お風呂を上手に使うことを考えてみましょう。

寝室は大人が肌寒いくらいで

寝室の温度は大人が肌寒いくらいがよく、これは体から上手に放熱をさせ、深い睡眠を促すためです。

暖房が強すぎたり、夏で室温が高すぎたりすると眠りは浅くなります。

ですから、冬は眠ってから少ししたら暖房を下げる、夏は眠りに落ちるまでは熱を放出しやすいように室温を低くして、その後は寝苦しくない程度に冷房をつけ続けるなど、寝室の温度をタイマーで調節をすると、子どもはよりぐっすりと寝られます。

塾帰りにコンビニはNG

塾帰りに「甘いものを買いたい!」と子どもとコンビニに行くこともあるでしょう。でも、帰宅後にコンビニに行くのはなるべく避けてほしいのです。

夜間に明るい光を浴びるとメラトニンの分泌が抑制されてしまいます。

コンビニは照明が煌々と照っていて明るいので、その強い光が眠気を遠のかせてしまいます。

同じように自動販売機やスーパーマーケットなどもかなり明るいので、なるべく避ける方が良いでしょう。

親子で決めよう!スマホのルール

テレビを見る時間がない受験生の子どもたちは、自宅までの移動時などスキマ時間でゲームや動画コンテンツ、またSNSを楽しむこともあるはずです。

ただ、電子機器から発せられるブルーライトは脳の強い覚醒を引き起こし、刺激的なゲームやコンテンツは脳を活性化させてしまいます。

さらには視聴をやめられなくなりこっそりベッドの中でスマホを見て、睡眠時間を削っているということもあるでしょう。

現代においてスマホは睡眠を阻害する一番の要因と言っても過言ではありません。

特に子どもにとっては楽しい情報が次々と出てくるので、やめることは難しいはず。

だからこそスマホ使用のルールを決め、その悪影響も伝えてほしいと思います。

「毎日頑張っている勉強を定着させるためにも、そして健康な体を維持するためにもしっかり睡眠をとってほしい。だからスマホの利用ルールを一緒に決めよう」と親の気持ちを伝えつつ、子どもの意見を尊重しながら話し合ってみてください。

視聴するコンテンツにも注意

ルール決めの際に気をつけたいのが視聴時間と場所、そしてコンテンツの内容。

本来であれば就寝時間の2時間前にはスマホを見るのをやめてほしいですが、そうなると塾から帰宅したタイミングではスマホ利用の時間を設けることができません。

それではスマホを取り上げられたのと一緒で、子どももストレスがたまるはず。

例えば「車で移動中の15分」「帰宅後の食事を準備する間の15分」など自室での利用はやめて、親の目の届くところでなるべく就寝時間直前ではないタイミングで時間を決めて利用の許可をするのがよいでしょう。

また、視聴するコンテンツにも注意が必要でしょう。ショート動画など次々と新しい内容が出てくるものや、刺激的なゲームは脳を興奮状態にさせてしまいます。

SNSなどコミュニケーションをするものも、お友達の言葉や反応が気になってしまい眠れなくなることがあります。

どうしても見るのであれば刺激が少なく、悩みの種にならない情報が発信されるコンテンツを時間内で見るのがいかがでしょう。

スマホ使用はすべてNGではなく、睡眠を妨害しない程度に子どもの息抜きツールとして賢く使いましょう。

著:愛波あや
慶応義塾大学文学部教育学専攻卒業。外資系企業勤務後、拠点をアメリカ・ニューヨークに移し、2014年に米国IPHI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。現在、IPHI日本代表、Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。著書に『ママと赤ちゃんのぐっすり本』(講談社)、『マンガで読む ぐっすり眠る赤ちゃんの寝かせ方』(主婦の友社)がある。2児の母

監修:三池輝久
小児科医、小児神経科医。熊本大学病院長、日本小児神経学会理事長、兵庫県立リハビリテーション中央病院「子どものリハビリテーション睡眠・発達医療センター」センター長などを経て、現在は熊本大学名誉教授、日本眠育推進協議会理事長。著書に『赤ちゃんと体内時間 胎児期から始まる生活習慣病』『子どもの夜ふかし 脳への脅威』(ともに集英社)など

© FNNプライムオンライン