遠藤「最高」めがけて ボッチャ代表が白河合宿、パラ本番へ調整

練習試合で難易度の高いロングスローを決めるなど、好プレーを披露した遠藤とアシスタントの母さとみさん=白河市

 パリ・パラリンピックボッチャの日本代表「火ノ玉ジャパン」に内定している女子脳性まひBC1クラスの遠藤裕美(37)=福島市出身=ら代表が22日、福島県白河市で行っている合宿を公開した。夢の舞台まであと2カ月。遠藤は柔和な笑顔で取材に応じ、「気持ちは高まってきている。最高のパフォーマンスが出せるように調整したい」と、決戦に向けて充実感を漂わせた。

 この日は全国大会で優勝した健常者の強豪チームと団体戦の練習試合を行った。遠藤は第2エンドで難易度の高いロングスローを決めてジャックボール(目標球)に近づけるなど、持ち味を発揮。試合には敗れたが、「アプローチをもっと強化していきたい」と本番に向けた課題が見えたようだった。

 パラリンピックには初出場となる37歳。生まれつき脳性まひの障害があり、手足が不自由で「自分の足で立ったことは一度もない」と、幼少期から車椅子で生活している。そんな遠藤がボッチャを本格的に始めたのは24歳の時。郡山支援学校を卒業して運動の機会が減り「体を動かしたかった」と、練習会に参加したのがきっかけだった。

 今では、ロングスローを武器とする遠藤だが最初の頃は「全然飛ばなかった」と振り返る。半年間の練習で飛距離は10メートルに届くようになり、大会にも出場するようになると「勝つ喜び」に楽しさを覚えていった。

 遠藤の競技時のアシスタントを務める母さとみさん(58)は「天才肌ではなく努力の人」と遠藤を評する。平日は福島市の体育館で父芳文さん(64)やさとみさんが付き添い、週3~4日ペースで練習。投げる球は1日180球だ。

 「練習した分、うまくなるわけではない。脳性まひの特徴で前日に投げた感覚は次の日にゼロになる。そして練習を続けないと、その感覚はどんどん戻しづらくなっていく」。遠藤が小さな努力を積み重ね、競技を始めて13年かけて、ようやくつかみ取ったパラの切符だった。

 代表のムードメーカーでもある遠藤。パリ大会では、個人戦と男女混合の団体戦に出場する予定だ。白河市で行われた合宿では、地元の声援を受け、交流イベントなどにも参加した。「得るものがたくさんあった。パリで活躍することで福島や東北、全ての人たちに感謝の思いが伝わればうれしい」。万全の準備を整え、ふつふつと闘志を燃やしている。(佐藤智哉)

 ボッチャ 重度の脳性まひや四肢の障害がある人のために、欧州で考案された競技。赤や青のボールを投げ、ジャックボール(目標球)と呼ばれる白い球にいかに近づけるかを競う。1988年からパラリンピックの正式競技になった。

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