【宝塚記念 みどころ】夏の始まりを告げる 灼熱のグランプリ 主役はドウデュース!春秋グランプリ制覇なるか!?

競馬ファンにとって、宝塚記念は夏が始まる合図のようなものだろう。

蒸し暑い6月終わりに行われる夏のグランプリレース。日本競馬の上半期の集大成ともなる一戦の歴史を見ると、実力馬たちによる激しく熱い戦いが繰り広げられてきた。

例えば2001年は覇王テイエムオペラオーに何度も挑みながら、ずっと勝てずにいたメイショウドトウが早めに抜け出し、オペラオーの追撃を凌いで念願のGⅠ初制覇を飾った。

その2年後の2003年にはシンボリクリスエス、ネオユニヴァース、アグネスデジタルといった豪華メンバーが集まった中、天皇賞(春)を制して勢いに乗ったヒシミラクルがロングスパートを打って突き抜けた。

レース後にヒシミラクルの鞍上、角田晃一が汗だくで装鞍所に戻ってきた姿を見て、夏の香りを感じたファンも少なくないだろう。

以降もディープインパクト、オルフェーヴル、ゴールドシップにイクイノックスと歴代の勝ち馬を辿ればスターホースの名前がズラリ。それだけに今年もスターホースたちの競演が楽しみでならない。

2023年有馬記念優勝 ドウデュース (C)SANKEI

そんな今年の宝塚記念、主役となるのはドウデュースだろう。

新馬戦から無傷の3連勝で朝日杯FSを制し、3歳になってもダービーの舞台で末脚を爆発させ、イクイノックスらを凌いで世代の頂点に立つなど、常に光を浴びてきたスターホースだったが4歳緒戦の京都記念を快勝後、ドウデュースに待っていたのは苦難の道のりだった。

ドバイへ遠征した際に跛行でドバイターフを取り消したことでケチが付いたか、復帰戦の天皇賞(秋)は落馬負傷でパートナーの武豊が乗れないというハプニングに見舞われ、急遽戸崎圭太とタッグを組んだが、直線で伸びきれずに7着完敗。

巻き返しを図ったジャパンCでは4着に入ったがいずれもかつてのライバル、イクイノックスに屈する形となってしまった。

このままでは終われないとばかりにドウデュースが意地を見せたのは有馬記念だった。

武豊が鞍上に戻ってきたことでドウデュース本来の走りを見せ、直線で粘るタイトルホルダー、追いすがるスターズオンアースらとの叩き合いを制して復活の勝利をマーク。

苦難を乗り越えて再び表舞台に姿を現し、多くのファンの感動を呼んだ。

5歳となり、再び主役として迎えた今年。

今回は1年前に出走できなかったドバイターフに臨み5着からの臨戦、京都コースはこれが初となるが、最高のパートナー、武豊とともに歴代最多となる23万8367票を投じてくれたファンのためにも最高の走りを見せたい。

2023年天皇賞・春 ジャスティンパレスがGI初制覇 (C)SANKEI

ドウデュースの一強体制に待ったをかけるとすれば、同じ5歳のジャスティンパレスか。

春のクラシック戦線で期待に応えられなかったが、3歳秋に本格化。

神戸新聞杯を制して菊花賞では小差の3着に入るなどステイヤーとしての片鱗を見せると、4歳になった昨年春は阪神大賞典、そして天皇賞(春)を連勝してGⅠホースの仲間入りを果たした。

長距離向きのスタミナだけでなく、天皇賞(秋)では勝ったイクイノックス以上に速い上がりを使って2着に食い込むというスピード決着にも対応し、有馬記念は4着に敗れたとはいえ、その末脚はドウデュースに次ぐ速さだった。

ドウデュース同様、ドバイ遠征以来での実戦となる今回。

京都コースは天皇賞(春)を制した時に走っているため相性の良さを感じさせるが、それ以上に期待が持てるのはクリストフ・ルメールとのコンビ。

キャリア全5勝の内、4勝をルメールとのコンビで挙げていて、しかもこのコンビでの戦績は4戦負けなし。昨年のイクイノックス同様、漆黒の王者が夏のグランプリを制するのだろうか。

大阪杯でGI初優勝 ベラジオオペラ (C)SANKEI

今年の宝塚記念は5歳馬が中心になっている感があるが、4歳馬にも活きのいい馬はいる。大阪杯を制して臨むベラジオオペラはそんな4歳勢の代表格だ。

無傷の3連勝でスプリングSを快勝。道悪馬場すら気にしないパワフルな走りに目を奪われたが、肝心のクラシックでは皐月賞10着、ダービー4着ともう一つ振るわなかった。

ベラジオオペラが目覚めたのは3歳の冬のこと。菊花賞をパスして中距離戦線に的を絞り始めた際に狙ったチャレンジCでは+20キロという成長した馬体からパワフルな走りを見せて快勝。

4歳緒戦の京都記念こそプラダリアに屈したが、上がり3ハロンの時計はメンバー最速と力のある所を見せてくれた。

そして大阪杯ではスタートから終始2番手に付けて流れに乗ると、直線でも早めにスパートを打って快勝。世代レベルに疑問符があるとされた明け4歳の代表として堂々たる走りでGⅠを制してみせた。

ここまで8戦して、馬券圏内に入れなかったのは昨春のクラシックの2戦のみという具合で抜群の安定感を誇るベラジオオペラ。強気の先行策を見せれば、ここでもスターホースたちを蹴散らすかもしれない。

歴代最多投票数を集めた現役屈指のスターホース、遅咲きの青鹿毛の覇者、そして昇龍の勢いで駆け上がってきた若き才能、あるいは......今年の宝塚記念も熱い戦いになりそうだ。

■文/福嶌弘

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