今季限りで選手キャリアを終えた元日本代表FW岡崎慎司が新たな挑戦に臨む。
6月17日に東京都内で行われた引退会見で、今後は指導者の道に進み、日本代表監督としてワールドカップ(W杯)で優勝することを次のキャリアの最大目標に掲げた。
【動画】岡崎慎司 19年の現役生活に幕―引退を決意した理由と今後の展望
2005年にJリーグの清水でプロとして歩みを始めて約20年。
自身の選手としてのキャリアを「やってきたことに後悔はないが、自分が目標としたことはほとんど達成していない」と振り返り、W杯やオリンピックでの優勝やセリエAでのプレーなど選手として掲げていた目標を列挙。
「選手としてW杯で優勝できなかった。監督として目指すのはそこ。日本代表の監督になってW杯で優勝したい」と言った。
2018 FIFA W杯 岡崎慎司 写真:ロイター/アフロ
岡崎は、日本代表でプレーした2008年から2019年の間に119試合に出場して50得点をマーク。
釜本邦茂、三浦知良に次ぐ歴代3位の代表得点記録を保持する。泥臭いプレーが特徴的で、相手の裏を取ってゴールをねじ込み、代表でもクラブでもチームの力になってきた。
清水からドイツのシュツットガルト、マインツを経て加入したイングランドのレスター・シティでは、2015/16シーズンにプレミアリーグ優勝を遂げた輝かしい実績もある。
レスターでの優勝シーズンにホームでのニューキャッスル戦で決めたオーバーヘッドは印象に残っているゴールの一つと振り返り、プレミア移籍加入1年目で、「岡崎はこういう選手」という固定概念を打ち破りたいと奮闘していた中でのゴールだったと明かした。
岡崎慎司 ©︎STVV
それを含めて2018/2019までプレーしたプレミアリーグでの得点は114試合で14得点。
岡崎は「もっと獲れた、もっと重要なゴールを決められた」と語り、「反骨心。そのメンタリティがあったからやってこれた」と選手としての原動力に言及した。
2019年からはスペインへ移り、マラガ、ウエスカ、カタルヘナでプレー。ウエスカでは2部リーグ優勝も遂げた。2022年からはベルギーのシントトロイデンに所属。そこが選手キャリア最後のクラブとなった。
日本代表でのプレーも「ワンチャンある」と最後まであきらめていなかった岡崎さんだが、選手引退を決めた直接的要因は膝のケガ。「プレーできないくらいのケガ」だったと明かし、「これまであきらめたことは1回もなかったが、サッカー人生で初めて辞めたいと思った」という。
だが引退を決めても、不屈の精神を持つ元日本代表FWは「このまま終わりたくない。この続きを欧州で作りたい、挑戦したい」という思いに突き動かされるように指導者として歩き出すことを決意した。
すでにUEFA(欧州サッカー連盟)のB級ラインセンスの講義を受けて「勉強中」であることを明かして、英語の学習を含めて「なかなかしんどい」と苦笑する。
だが、「自分は選手としては感覚で生きてきた。指導者としてはそれを1から説明できないとならない。それもおもしろい」と語り、選手を始めた頃のように再びいろいろと吸収するものばかりという現状を楽しんでいるようだ。
活躍の拠点も、悔しさをバネに戦いを続けてきた欧州を選択。
シントトロイデンで今年7月からクラブのアンバサダーに就任し、その一方で、自ら立ち上げにかかわったドイツのバサラマインツ(現在リーグ6部)で、トップチームの監督として8月から活動を始める。
強さや競争などが常に求められる欧州で戦える人材が求められるとして、「そのきっかけになることを自分がやっていきたい」と話す。
「(選手として)悔しさばかりが残っている。次の人生でその先を見たい」という新たなチャレンジに岡崎さんは欧州で踏み出す。「次は指導者として、ここから吸収して成長したい」
その言葉は力強かった。
岡崎慎司 ©︎STVV
取材・文:木ノ原句望