【異例の展開】「あなたは大罪人」特捜部の取り調べ映像が法廷で公開 主任検事も机たたき怒鳴る過去も…証拠示され「思い出した」

大阪地検特捜部が捜査した業務上横領事件で、無罪となった不動産会社「プレサンスコーポレーション」の元社長が検察の違法捜査を訴えている裁判では、3日間にわたり主任検事ら4人の証人尋問が行われました。法廷では、取り調べで「あなたは大罪人ですよ」などと発言した取り調べ映像が流されるという異例の措置がとられ、この発言をした検事が「不穏当だった」などと証言しました。

さらに事件の主任検事は、過去に別の事件の取り調べで、机をたたいて怒鳴るなどしたため、裁判所が供述調書の証拠能力を否定したと、元社長の弁護団が法廷で明らかにしました。証人尋問で主任検事は「(強引な取り調べを)したことはない」と証言していましたが、詳細を示されると「思い出した」と答える場面もありました。(報告:田上瑛莉香・丸井雄生)

■『特捜部』の取り調べ映像が法廷で“異例”の公開

「どうして説明できないんですか。だんだん悪い顔になってきているよ」

「あなたはその損害を賠償できます?10億20億じゃ、すまないですよね。それを背負う覚悟で今話してますか?」

「あなたはプレサンスの評判を貶めた世間の評判を貶めた大罪人ですよ」

証人尋問1日目の冒頭、約5分間の取り調べの映像が流され、男性検事が容疑者に迫る声が法廷に響き渡りました。

プレサンスコーポレーションの元社長・山岸忍さん(61)は2019年、学校の土地の売買をめぐる21億円の横領事件に関与したとして、大阪地検特捜部に逮捕・起訴されましたが、刑事裁判では山岸さんの元部下の供述の信用性などが否定され、無罪が確定しました。

法廷で流された映像は、この元部下への取り調べを録音・録画したもので、この取り調べの前には、机をたたくなどしていたことも明らかになっています。山岸さんは“違法捜査”によって損害を受けたとして、国に7億7000万円の賠償を求め訴えを起こしています。

大阪地裁は4月、取り調べを行った検事や事件の主任検事ら4人の証人尋問を行うことを決めたのです。

■「使った言葉は不穏当」も法廷で検事は「怖い顔で怒らなくても…」

その後、証言台に立った男性検事は、取り調べについて「ウソや言い訳を重ねていると感じ、真摯に取り調べに向き合ってほしいと思って机をたたく行為や大声で厳しく問いただした」などと証言しました。

また、山岸さんの代理人弁護士から「反省の一言もない?」と問われると「聞かれていないので。使った言葉は不穏当で、全く自分に非がないと言いたいわけではない。同じことはまずしないと思います」と語りました。

その一方で、無罪判決に対する感想を問われた検事は「非常に残念な判決と思った」と発言。男性検事が山岸さん側の弁護士に対し「そんな怖い顔で聞かなくても…」と意見すると、弁護士は「あなたから距離も離れているし、机もたたかないけれども」と返す場面もありました。

山岸さんは検事に「あなたが先ほど『怖い』とおしゃったが、元部下も当時怖いと感じたと思わなかったのか」と尋ねると、「本人に聞かないとわからないが、腹の据わった方ですので」と答えました。

■「逮捕待った方が」進言も…主任検事「記憶にない」「回答差し控える」の繰り返し

証人尋問2日目の14日、事件関係者の1人の取り調べを担当した男性検事と、事件の主任検事が出廷。この事件関係者は、山岸さんが関与したとする供述を撤回したため「逮捕は待ったほうがいい」と主任検事に進言していたことが判明していました。

進言した男性検事は法廷で「事件関係者がこれまでの供述を撤回したため、証拠関係が変わると思ったので主任検事に伝えた。主任検事からは『検討する』と返答があった」と説明しました。

その後、進言を聞き入れなかったとされる主任検事が証言台に立ち、主任検事は「進言は記憶に残ってはいない。担当検事が言っているならそう」と述べた上で、「事件関係者の撤回前の供述の方が信用性が高く、逮捕に影響しないと考えた」と答えました。

山岸さん側から進言の経緯など詳細を問われたものの、「覚えていない」「記憶にない」などと繰り返し、逮捕・起訴に至る過程についても「職務上の秘密にあたり、証言は差し控える」という回答に終始しました。

■強引な取り調べ「しない」と回答も 過去に机をたたき怒鳴る…証拠の任意性が否定

18日も主任検事への尋問が続き、山岸さんの元部下を取り調べた男性検事が机をたたくなどの強引な取り調べが行われたことについて、「捜査段階では録画映像を見ておらず知らなかった。取り調べを受けた事件関係者は任意で供述していると理解していた」と語りました。また映像を見て驚かなかったのかと問われると、「相応に驚いた」と胸の内を明かしました。

山岸さん側から「強引な取り調べをするのか、したことがあるのか」という質問に対し、一貫して「しない」と答えていた主任検事。

山岸さんの代理人弁護士が主任検事のある事実を告げました。この主任検事が過去の別の事件で行った取り調べで、机を数回叩き、大声を出すなどし、刑事裁判で証拠の任意性が否定されていたのです。

主任検事は「本当に正直あまり覚えていない」と話していましたが、代理人弁護士から詳細を告げられると「思い出した」と回答しました。

■山岸元社長は怒り「取り調べでは『本当のことをしゃべろ』というのに…」

18日の証人尋問を終えて、山岸さんは会見で「(検事らは)不利なことに対しては、うそをついたり答えなかったりする。取り調べでは『本当のことをしゃべろ』と言っているのに、フェアじゃない。はっきり言ってめちゃくちゃ」と怒りを口にしました。

弁護団は「尋問で真摯に向き合っていない面が多々あり極めて残念だが、検察庁の大きな問題が明らかになった意義は大きい」と語りました。

検事らが『不適切であった』ことは認める発言をした3日間の証人尋問。特捜部の取り調べが『違法』なものだったか、大阪地裁は10月に判断を示す見込みで、裁判所の判断が注目されます。

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