3時間で完売、堺・大鳥大社のスケルトンお守りが超人気の理由 倍以上の転売には「意味がない」と神社は嘆息

透明なアクリル板でできた超人気の大鳥大社の『先が見通せる御守』 撮影/編集部

サンリオのキャラクターがあしらわれた東郷神社(東京・原宿)の『サンリオキャラクター御守』や、スマートフォンや車にも貼れる上常呂神社(北海道・北見市)の『「神のいるところ」お守りステッカー』など、昨今さまざまなお守りが注目を集めている。

なかでも今、高額転売の問題も取り沙汰されているほど大人気なのが、大阪府・堺市の大鳥大社が2023年10月から領布を始めた『先が見通せる御守』だ。

「名前のとおり透明なアクリル板のお守りで、光に当たるとさまざまな色に輝く箔で彩られています。これがSNSなどを通じて話題となり、24年の初詣の際には行列ができ、あっという間に授与終了(完売)。メールなどでの問い合わせが1日100件も来るほどの反響を呼んだそうです。2月に再販した際もわずか3時間ほどで完売してしまったというから、その人気ぶりはすさまじいですね」(トレンドライター)

そもそもなぜ、この“スケルトンお守り”は誕生したのか。大鳥大社の権禰宜(ごんねぎ)・河野将也氏が弊サイトの取材に応じてくれた。

「最初はおみくじでした。当社は日本武尊(やまとたけるのみこと)を祭っていまして、勝負事に優れた神様ということで『勝(かち)みくじ』というおみくじを考案しました。強運・大勝運・中勝運・末勝運と4種類あって、一番上の強運だけキラキラする箔押しに。

その後にコロナがあって、参拝客が減ったり、お祭りが中止になったりという状況に“先が見通せないな”なんて話していたので、先が見通せるように強運のおみくじを透明にしたら喜んでいただけるんじゃないかと」(河野氏)

こうして21年のお正月に“先が見通せるおみくじ”が登場。これが若い世代を中心に人気を博し、半年分を用意していたおみくじがなんと2日間でなくなってしまったのだとか。

“先が見通せるおみくじ”な『勝みくじ』強運 ※画像は大鳥大社提供

これを受けて誕生したのが、『先が見通せる御守』だった。

「強運を引かないと帰れないという人も出てきて、それでは参拝に来られた方にお金を使わせてしまうし、みなさんに行き渡らない。そこで、おみくじではなくて透明のお守りならどうか、と考えたんです」(前同)

通常のお守りは年間1000個ほどを用意するが、この『先が見通せる御守』はその5倍以上を事前に用意したものの、頒布開始からわずか2か月後、24年の初詣の際に完売してしまったのは前述のとおり。しかし、簡単には増産できない事情がある。

「『先が見通せる御守』は、アクリル板を毎朝1週間ご祈祷し、業者にカットして箔押し加工していただいた後、最後にうちで魂を入れる儀式をして、それで初めて“お守り”になるんです。なので時間がかかりますし、多くつくることは難しいんですよ」(同)

『先が見通せる御守』のために行列をなす人々 ※画像は大鳥大社提供

■転売問題に「お守りは神社の“グッズ販売”ではないと伝えたい」

「お守り」であるがゆえに大量生産できず、希少価値が上がってしまった大鳥大社の『先が見通せる御守』。なかなか手に入りづらいということで、すでに他所から類似品も現れているようだが、大鳥大社は意匠登録と商標登録を出願中だとか。

ところで、“お守りの中身を見たらバチが当たる”といった発想から「透明のお守りはアリなのか?」と素人は考えてしまうが、「問題ないですよ」と前出の大鳥大社の権禰宜(ごんねぎ)・河野氏は笑う。

「我々神主がお祓いしたものが、“お守り”になります。なので木や鉄だとダメだとか、中が見えているからダメだとか、そういうことはないんです。木のお札だってありますし、アルミのプレートにレーザーで彫ったお守りなんてものもあります」(河野氏)

『先が見通せる御守』にアクリル板を採用した背景には、SDGs的な観点も。

「お守りは汚れたりすると神様の力が弱くなってしまうので、1年に1回交換してくださいとご案内しているわけですが、古くなったお守りは御霊(みたま)抜きの神事をして“お守り”ではなくしてしまった後、通常はお焚き上げをします」(前同)

ただし、アクリル板を燃やすと一酸化炭素に代表されるような有害物質が発生する。そこで、『先が見通せる御守』は御霊抜きを行なう際に燃やすのではなく、リサイクル業者に頼み細かいチップにしてもらっているそうだ。

「今の技術では『先が見通せる御守』に使われたアクリル板の70%までは、再生アクリル板へと生まれ変わります。時代に適った持続性のあるお守りであるという点も、アクリル板をお守りの素材に選んだ理由です」(同)

『先が見通せる御守』 撮影/編集部

まさに令和ならではのお守り。ただ、一部ネットでの高額転売には河野氏も頭を悩ませているそうだ。『先が見通せる御守』の初穂料(はつほりょう。祈祷のお礼として神社に納めるお金)は1500円だが、倍以上の価格で転売されてしまっているのだ。

「これは商品の販売ではないんです。初穂料という言葉なのは、神社で神様にお供えしてお下がりとしていただく授与品だからであって、グッズの物販ではありません。転売したものを買ってしまうと、それはただ高いだけのストラップになってしまいます。神社での授与以外で手に入れたものは意味がないということは、今後も発信していきたいと思っています」(同)

キラキラでかわいいアクセサリーではなく、これは時間をかけて祈祷や儀式を行なって初めてできるお守り。ちゃんとご利益のある「お守り」として正しい形で手に入れたいものだ。

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