平和世を誓う夏 戦後79年の「慰霊の日」 沖縄戦の犠牲者を悼む

 戦後79年の「慰霊の日」を迎えた23日、県内各地では20万人を超える沖縄戦犠牲者を悼む催しが営まれ、島全体が恒久平和への祈りに包まれた。戦没者の名が刻まれた糸満市摩文仁の県平和祈念公園内の「平和の礎」には早朝から足を運ぶ人たちが絶えず、子どもから高齢者まで幅広い世代が犠牲者を追悼し、花や線香を手向けていた。

 

 同公園では午前11時50分から、沖縄全戦没者追悼式(主催・県、県議会)を開催。玉城デニー知事が平和宣言を読み上げる他、県立宮古高校3年の仲間友佑ゆうすけさんが平和の詩「これから」を朗読する。岸田文雄首相ら政府関係者も参列する。正午の時報に合わせ、参列者が1分間の黙とうをささげる。

 沖縄戦は「鉄の暴風」と形容されるほど激しい空襲や艦砲射撃が降り注ぎ、一般県民約9万4千人と日米軍人・軍属など合わせて20万人余が亡くなった。太平洋戦争などの犠牲者を追悼する平和の礎には、今年追加された181人を含め、計24万2225人の名が刻まれた。

 来年は戦後80年の節目となり、戦争体験者がいなくなる時代が目前に迫る。沖縄戦の「悲劇の始まり」の場所とされる首里城地下の第32軍司令部壕への関心が高まる中、二度と過ちを繰り返さないための記憶の継承が課題となっている。

 一方で「台湾有事」が強調され、南西諸島への自衛隊配備が強化されている。先島諸島に陸上自衛隊の駐屯地が相次いで開設され、うるま市の勝連分屯地には新たなミサイル部隊が配備された。また陸自第15旅団がホームページに日本軍の牛島満司令官の辞世の句を掲載していることが発覚。戦争体験者や市民団体から「皇国史観を想起させる」「戦争美化だ」などと抗議や削除を求める声が広がっている。

 さらに、沖縄戦を美化するような記述が目立つ教科書が相次いで文科省の検定に合格。住民虐殺など日本軍の加害性への言及がない教科書もあり、一面的な見方につながるとの懸念が強まっている。(社会部・下里潤)

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家族の名が記された石碑前で涙を流す長山和子さん(右端)と夫の松雄さん。「高齢で足腰が悪くて、今年がここに来ることができる最後かもしれない」と長山さんは話していた=23日午前8時25分、平和祈念公園・平和の礎(竹花徹朗撮影)

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