医師が体験した「膀胱がんの予兆」たまたま自らエコー検査…実感した「定期的ながん検診」の重要性/ 中川恵一医師

東京大学医学部附属病院放射線科特任教授・中川恵一医師

ふだんは“宣告する側”である医師が、初めてがんになって感じたショックと不安。生還した今、「がんに気づいた瞬間」や、人生観について聞いた!

「一般的に、がんは5年再発しなければ寛解といわれますが、膀胱がんの場合には、10年経過しても再発するケースがあります。半年に1回検査し、今のところ幸いにも問題はありません」

2018年に、内視鏡切除のあと、抗がん剤注入療法も受けた中川恵一医師(64)。がん専門医として、啓発活動もおこなっている。

そんな中川医師は、当直のときに自分自身でエコー検査をし、がんを発見した。

「もともと僕には脂肪肝があり、空き時間には自分でエコー検査をしていたんです。このとき、膀胱も見てみたら影があり、すぐに『がん』だと思いました。膀胱は風船のように、膨らませると見やすくなるんですよ。たまたま尿が溜まっていたので、『たまには見てみるか』と思ったのが発見のきっかけでした」

膀胱がんのリスクとしてわかっているのはタバコだが、中川医師に喫煙歴はない。

「相当ショックでした。しかし、ステージ1で発見できたのはラッキーで、尿道から内視鏡を挿入して切除できました。やはり早期発見・早期治療が大切です。私は自分で検査をしましたが、皆さんならば、やはり定期的にがん検診をするべきだと思います。それから、『自分の体は自分で守る』という意識を持ってください。たまには足の裏を見てヘンなホクロがないか、女性なら胸にしこりがないかを自分で確かめて、体の変化を見すごさないことが大事です」

がんに向き合い、中川医師の心境には変化があった。

「それまで当たり前と思っていたことや、家族や仲間への感謝の気持ちが大きくなりました。ワインが好きで、自己責任で楽しんでいますが、以前よりも高いものを飲むようになりました(笑)。1本1500円が3000円になったくらいですけどね」

体の異変に気を配り、定期的に検診を受ける。生還した医師たちに学べることは多いはずだ。

取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)

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