“ヴェルディらしくない”2年生FW山田将弘が首位攻防戦で2発!「天狗になりやすい性格」だが飛躍の兆しも。ロールモデルはイタリア代表スカマッカ

決して巧いほうではない。最大の強みは、当たり負けしないフィジカルと泥臭いポストプレー。誤解を恐れずに言えば“ヴェルディらしくない”武骨なタイプで、本人も、イタリア代表で196センチの大型FWジャンルカ・スカマッカ(アタランタ)をロールモデルにしていると話す。そんなストライカーが大一番で躍動した。

6月22日に行なわれたU-18高円宮杯プリンスリーグ関東1部の第7節。2位の東京ヴェルディユースが、勝点2差で首位を走る横浜F・マリノスユースをホームに迎えたなか、首位攻防戦は予想外の大差がついた。

U-16日本代表の活動に参加しているFW浅田大翔(2年)、DF山中優輝(2年)、DF藤井翔大(1年)を欠く横浜ユースに対し、東京Vユースは序盤から主導権を掌握。サイドから決定機を何度も作り出し、前半だけで3得点を奪う。後半に入っても勢いは止まらず、終わってみれば7-2の快勝で首位浮上を果たした。

この試合でマン・オブ・ザ・マッチを挙げるとすれば、2ゴール・1アシストを決めたエースの左MF川村楽人(3年/トップ昇格内定)だろう。だが、限られたプレータイムで結果を残した男も見逃せない。途中出場ながら2ゴールを決めたFW山田将弘(2年)だ。

60分に投入されると、1トップのポジションでプレー。身体を張ってボールを収めながら、果敢にゴールへ向かっていく。相手にぶつかられても強引に前へ進むなど、随所に良さを発揮。5-2で迎えた79分にはMF半場朔人(3年)の右クロスに反応し、ネットを揺らす。

「今日は打ったら入る気がした」とは山田の言葉。勢いに乗った2年生FWは82分にも見せ場を作る。左SB渡邊大貴(3年)のフィードに抜け出し、相手DFに寄せられたが、弾き飛ばして前に進み、最後は豪快に左足でネットを揺らした。

183センチ・75キロ。高校時代にラグビーの全国大会に出場した経験があり、大学時代はアメリカンフットボールをやっていた父親から譲り受けたフィジカルの強さが一際目を引く。中学時代からそのプレースタイルは変わっておらず、ヴェルディSS AJUNTに所属していた頃から身体の強さに自信を持っていた。

だが、当時は無名の存在で実績も皆無。「自分のプレースタイル的に、高校サッカーに挑戦した方が合うかもしれない」と考えていたなかで、中学3年次の関東大会で中村忠アカデミーヘッドオブコーチングの目に留まって東京Vユース入りが決まった。

1年次は思うように結果を残せず、仲間たちの技術力に驚いた。それでも自分を見失わずに努力を重ね、今年の2月には早生まれで資格を有していたU-16日本代表に初招集。ポルトガル遠征に参加し、貴重な経験を積んだ。

「代表で一緒にプレーした浅田は巧かった。刺激をもらったし、ライバルと言ったら相手に申し訳ないけど、少なからず意識するようになった」

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迎えた今季は、憧れの存在で2つ上の先輩であるFW白井亮丞(現・東京V)が昨季まで背負った9番を2年生ながら継承。期待値が高まるなかで、現実はそう甘くなかった。開幕から全試合に出場したが、スタメン起用はゼロ。短い出場時間しか与えられず、「本当に苦しんでいた」(薮田光教監督)。

ポジション争いに勝てなかったとはいえ、指揮官は決して山田を評価していなかったわけではない。「本当は長く使ってあげたい」と思わせている選手であるのは事実。「ポストプレーや身体をうまく当てられる特長がある。そこはどんどん伸ばしてほしい。できないことには多少目をつぶってでも、彼の良いところを伸ばしてあげたい」(薮田監督)。攻撃面で違いを作れる選手として期待をかけていた。

今季は第4節・健大高崎戦でしかゴールを決められていなかったが、横浜ユース戦で2発の大暴れ。自信を深め、飛躍の兆しも見えてきた。

ただ、性格的には自他ともに認める調子に乗りやすいタイプ。「練習や試合で手を抜いてしまうこともある。彼には細かく伝えてはいけないけど、そういうところに早く気が付いて取り組んでほしい」と薮田監督が話せば、山田自身も「自分はやれるなと思うと、気を抜いてしまうというか、天狗になりやすい性格。むしろ、干されたほうが絶対にやってやるぞとなって燃える」という。

だからこそ、この2発に満足すべきではないし、自身の目標設定をさらに高い場所に置く必要がある。チーム内での地位確立はもちろん、U-16日本代表への復帰を果たすために、何をすべきなのか。同時期に自身が選外となったU-16日本代表は、U-16インターナショナルドリームカップ2024を戦っており、横浜ユース戦の結果に浸っている暇はない。

今秋にはU-17ワールドカップの1次予選を兼ねたU-17アジアカップ予選が控えている。残された時間は約4か月。長所に磨きをかけ、本物のストライカーとなるために研鑽を積む。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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