「息子の病気に治療法はない」平均死亡年齢4歳の病気に向き合う親子 世界に30人もいないの希少遺伝子疾患の子を持つ母に、闘病について聞いた

ねむ(@nemu_manga)さんは、希少疾患児である3歳の息子むたろうくんや家族についてを漫画にし、SNSで発信しています。
ねむさんによると、むたろうくんの病気は世界に30人もいない超希少遺伝子疾患です。病名は公表していません。

病気との向き合い方やSNSの発信について、ねむさんに話を聞きました。

夢かと思った

むたろうくんが患っている病気は症例が少なく、日本での病名がついていません。感染症に弱く、発熱すると脳症になったり亡くなってしまったりする確率が高まるのだそう。また、遺伝子の疾患で、とある栄養素を運べない体質。内臓が悪く、血糖を保つことが苦手という特徴があります。発達の遅れや低身長のといった症状がみられることも。
リスク回避のため、むたろうくんは人が多い保育園や幼稚園には通わず、ねむさんがお世話をしています。

いつか幼稚園に(nemu_mangaさんより提供)

妊娠8ヶ月のとき、むたろうくんは早産で生まれました。生まれたときの体重は約1000g。むたろうくんはNICUで他の早産児と同じようなケアを受けていました。しかし、生後3ヶ月ごろに血糖値が異様に低いことがわかり、むたろうくんは遺伝子検査をすることに。

検査の結果、早産も低出生体重児だったのも、疾患によるものだと考えられました。遺伝子検査の結果が出たのは、2歳手前のときでした。

検査をお願いした施設では、似た症状の病気がどれも否定され、どこかの研究所が検査したいと挙手を待つという状態になっていたそう。検査には1年半かかり、3ヵ所目でやっと判明しました。

ねむさんは病名がわかるまでは数時間おきに血糖測定し、長時間かけての栄養注入を頻回にする生活がいつまで続くのだろうと、不安な気持ちで過ごしていたんだとか。判明していないため「どうにかよくなるんじゃないか」とポジティブに考えてもいたそうです。

珍しい遺伝子疾患とわかったときには、ただただ驚いたねむさん。

「不意打ちで告知され、先生も初めて知ったということで、夢かと思ったのが正直な感想です」と、当時の気持ちを語ってくれました。

病気の診断がついたことで、他の患者さんの資料を参考にできるため「むたろうくんが生きるため、何に気をつけるべきか」がある程度明確になったのでよかったと感じたそうです。

低体重で産まれたむたろうくん(nemu_mangaさんより提供)

楽しみを増やして

むたろうくんの病気に、治療方法はありません。

生まれてから3歳までは経鼻胃管経管栄養で、特殊ミルクや栄養剤で栄養をとっていたむたろうくん。ねむさんは多いときは1日8回、1回2時間かかるなど常に注入するか注入の準備や片付けをしているような感覚だったといいます。現在は胃管が外れたとのこと。

そして、病気に合わせた食事を心がけています。これは指導を受けたものではなく、ねむさんが勉強し医師に有効そうか確認して実践しているのだそう。

「実際のところ、これが本当に息子の体のためになっているのかはわかりません。情報もなく正解もわからないまま、自分から何が子に良さそうか、情報をキャッチできるように視野を広く持たなければと思っています」

体調管理はしっかり行います(nemu_mangaさんより提供)

大変なことだけではなく、嬉しい成長も見られました。

感染症予防のため、ずっと人ごみや集団を避けて暮らしてきた親子。療育に通いはじめ、他の子と楽しそうに遊んでいるむたろうくんの姿を見て嬉しかったとねむさんは言います。

「1番つらいのは、本人がやりたくても感染予防のため避けている活動がたくさんあることです。公園で遊具に触って風邪をひき、集団に参加したら発熱して入院したことも何度かありました。そのため、なるべく親がつきっきりで物に触らないようにしたり、遊びたがるものが目に入らないように避けたりしていました。今はさらに活発になってきたこともあり、本人の意思をできるだけ尊重し、触ったらすぐ消毒、せっけんを携帯してどこでも手を洗う、帰宅したら着替える、足を洗うなどをするようにしています。息子が楽しめることを増やしてきているところです」

血糖値の検査(nemu_mangaさんより提供)

現在、むたろうくんが行っている医療的ケアは血糖測定のみ。保育園、幼稚園へは通わず療育のみ週5日通っています。

通所中は、発熱したらすぐに連絡をしてもらうようお願いし、低血糖の症状が見られたら、すぐに糖分をとるようブドウ糖やラムネを持たせているそう。飲ませ方のメモも渡しています。また、念のために解熱剤も保管してもらっているそうです。

たくさんの方がむたろうくんをサポートしています。

ねむさんの頑張り(nemu_mangaさんより提供)

「日々、感染症や食事に気を使うのはもちろんですが、むたろうには本人の知的身体的可能性を楽しく伸ばしていってほしいと思っています。私自身が知識をつけ、むたろうの病気を理解いただける施設やサービスと繋がれる努力をし、安全に成長していけるようサポートしたいです。病気の診断がついたときには、感染症を避けるため義務教育年齢までずっと家で世話をするつもりでしたが、本人の成長を見ていて家庭内だけで育てるには限界があると感じました。さまざまなサービスや児童発達支援施設の方と相談し、息子の病気に配慮をいただき、最善の努力をして助けてくださること、みんなでこの子の成長を願えることを知って救われました。私だけでは到底できなかった支援に日々感謝しています」

これからもねむさんの試行錯誤は続きます。

ほ・とせなNEWS編集部

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