人気ラノベがDRPGに「転生」?『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ Quest of Memories』その内容は【プレイレポ】

人気ラノベがDRPGに「転生」?『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ Quest of Memories』その内容は【プレイレポ】

今回は初期『世界樹の迷宮』や『ロストヒーローズ』、『ザンキゼロ』といったさまざまな3DダンジョンRPG(DRPG)を手がけたランカースが開発し、ブシロードゲームズがパブリッシャーを手掛けるDRPG『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ Quest of Memories』のプレイレポートをお届けします。なお、今回のプレイレポートで用いたのはニンテンドースイッチ版です。

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『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ Quest of Memories』とは

本作の原作となる『無職転生~異世界行ったら本気だす~』は、2012年11月から2015年4月までWebサイト「小説家になろう」で連載された、いわゆる「なろう系ライトノベル」の金字塔と呼ばれるタイトルです。主人公である37歳無職男性は高校生を助けようとしてトラックに轢かれ、異世界で「ルーデウス」という名の貴族の赤ん坊として転生する……という、いわゆる「異世界転生もの」です。異世界に転生したことで心を入れ替えて真面目に2周目の人生に取り組む(でもたまに前世の記憶が顔を覗かせる)主人公・ルーデウスと、さまざまな個性豊かなサブキャラクターが織り成すファンタジー小説は大ヒットとなり、2022年まで商業化された小説版が発売されました。また、漫画化やアニメ化も果たしており、2024年6月現在ではアニメの第2期第2クールが放映中です。

DRPGとしての本作『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ Quest of Memories』は原作における少年期編で描かれた魔大陸への転移事件を舞台にしており、突然魔大陸へ転移させられたルーデウスと、彼が家庭教師を務める領主の娘・エリス、そして魔大陸で知り合った「デッドエンド」の異名を持つ戦士・ルイジェルドが共にパーティを結成し、魔大陸の脱出を目指すまでを描く作品です。

危険なダンジョンが点在する魔大陸。クエストをこなし知名度を高め協力者を増やして先に進もう

本作のストーリーは青年期のルーデウスの回想という形で語られます。彼が如何にして魔大陸で戦ってきたか、そしてどんな成功や、あるいは失敗をしてきたのか……その語りを基に、プレイヤーはルーデウスの経験を追体験していくことになるのです。

ルーデウスたちが飛ばされた魔大陸には、本作のゲームシステムの上ではマス目形式で一歩一歩を踏みしめていく危険なダンジョンが多数あります。拠点となる各地の街の冒険者ギルドでクエストを受け、ダンジョンに潜ってクエストを達成し、主人公たちの知名度を高めて新たなクエストを出現させ、また新たに受注する……というのが、本作の基本的な流れになります。

完全な余談ですが、異種族のギルド受付嬢の胸部がいろいろとすごい。

ダンジョン内で現れる敵との戦闘は行動順が可視化されたタイムライン制。上手くタイムラインを見て、敵の行動を潰すようにスキルを仕掛けていくのがコツです。

本作の戦闘には最大3速の加速機能、および通常攻撃オート機能も用意されており、こうした機能を使うことで自動かつ快適に戦闘を終わらせることもできます。本作は敵の攻撃力がやや高めですが、もし戦闘不能に陥っても戦闘終了後にHP1で復活して回復魔法をかけることもできますし、各キャラクターのレベルアップ時にはスキルを使うのに必要なSPも全回復するので、なかなかリソース不足に陥るということもありません。

また、メニュー画面には「RETURN」というコマンドもあり、これを使うことでダンジョンのどんな場所からも一瞬でワールドマップへ戻ることが可能です。ダンジョン内でリソースを使い果たして二進も三進もいかなくなった、あるいはクエストをこなしたので早く拠点に戻りたい……というときにとても便利な機能です。

複雑な構造をしたダンジョンはありますが、本ゲームではオートマッピング・および周囲のミニマップを完備。全体オートマッピングと周囲のミニマップはいつでも切り替えられるうえ、閲覧制限なども特にありません。これはDRPGを遊んだことがない方にも嬉しい機能といえるでしょう。

キャラクターのスキルは『世界樹の迷宮』に類似した「スキルツリー」で習得します。しかしスキルの習得に必要なポイント(本作では「AP」)はレベルアップでの獲得ではなく、敵と戦闘するたびに経験値や資金などと同様に得ることができます。本作では地道な敵との戦闘がキャラクター強化の秘訣です。本作では参入するキャラクター構成自体は固定ですが、「もしあのキャラクターがここに居たら?」という設定で、原作ではその場にはいないキャラクターがパーティに参入することもあります。スキルツリーの振り方でキャラクターの個性を伸ばすのか、どんな場面でも器用に立ち回れるように強化するのか。プレイヤーの選択が分かれるところでしょう。なお、スキルの振り直しもいつでも可能です。

敵の詳細な解説やドロップアイテムが記載されたモンスター図鑑や、登場キャラクターの図鑑が用意されているのも地味ながら頑張っている点です。モンスター図鑑にはドロップアイテムが記載されているため、特定のアイテムをクエストで要求された際にどのモンスターを狩ればよいのか……というのを調べるのに役に立ちます。個人的な願望を言うなら、モンスターの生息領域と弱点が記載されるようになっていればもっと良いと感じたでしょうか。

ボス戦ではシビアな点も。そして運任せ感が否めない酒場経営

本作のボス戦はザコ戦と比べて結構厳しいものとなっており、適切なレベル上げとスキル振りが必須です。例えば最初のボス敵である「グレートトータス」は、最初のボス敵だからしょせんチュートリアル的なものだろう……と思いきや意外に高い防御力と、そして3ターンの間完全防御+HP回復の防御姿勢で恐ろしい硬さを誇ります。本作では序盤からいわゆるタンク向けの「かばう」技能や、ヒーラー向けの「ヒーリング」技能が充実していますが、最序盤にそういったスキルを取っているとグレートトータスの防御力と自動回復を突破できず、いわゆる「詰み」が発生します(筆者はした)。

幸いスキルは振り直しが可能ですし、またある程度レベルを上げれば与ダメージも増えるので、攻撃特化のスキル構成をしましょう。おススメはルイジェルドの「ためる」「捨て身」のコンボで、相手が防御姿勢を解除する直前に「ためる」で攻撃力を高めつつ防御姿勢を解除したら3ゲージ消費の「ブースト」で威力強化&SP無消費の「捨て身」を叩き込むことで効率よくダメージを与えられます。

本作の戦闘中に溜まるゲージ3つ消費の「ブースト」はスキル威力強化+SP無消費ということで、例えばザコ戦の間でもブースト全体回復魔法でリソース無消費でHP回復など、意外と使い道が広い技能です。なお中盤以降ゲージ5つ全消費の「必殺技」が解禁され、こちらはまさに「必殺」にふさわしい威力なので、これらを絡めた戦術も中盤以降は重要です。

なお本作の多くのモンスターは「素材」をドロップしますが、これは『世界樹の迷宮』などのDRPGとは違って単なる換金アイテムという扱いではなく、多くのクエストで「素材」を要求されるほか、中盤以降解禁される「アクセサリ合成」でアクセサリーに特殊効果を付与するために必要になるので、極力売らない方が良いと思います。

本作では中盤以降、主人公の師匠である、原作の人気ヒロイン「ロキシー」の率いるパーティを操作するパートもあります。

その中で「酒場経営ミニゲーム」を強制的にプレイすることになるんですが、正直このミニゲームがちょっと……な印象です。「酒場の人気レベルを5日以内に2に上げる」というミッションなのですが、とにかく序盤は酒場に人が来ない&人気がなかなか得られない!

スキル「呼び込み」を使うと大量にお客さんを呼べるのですが、スキルを使用するのに必要なポイントは客からの高評価が必要……と、「呼び込み」に必要な25ポイントを溜めるのに運が絡みます。「呼び込み」が可能になっても食材不足やメニューの不人気で低評価を溜め込むことがあったり……と高評価の道はなかなか遠いです。「呼び込み」2回の成功がだいたいのミッション達成ラインなのですが、筆者はこれをクリアするまで5回やり直しました。こういう運任せの要素が強いミニゲームを、本編進行に必須にしてしまうのは如何なものか……というのが筆者の正直な感想です。

辛さひかえめ、だけどゲームの練り込み自体は感じる3DダンジョンRPG。DRPG入門にどうぞ

本作はザコをオートで処理できて戦闘後の回復で充分リソース管理が間に合う探索や、ミニマップと全体マップをいつでも自由に見られて切り替えられる、痒い所に手が届く位置にショートカットが配置されている、何時でもダンジョンを脱出して拠点に戻れる……など、遊びやすさに細かい配慮が見られます。また、ボイスも豊富に使用されており、キャラクターの感情や魅力が良く伝わる点は、他のなかなかDRPGに見られない本作の特色といえます。

ただ、潜ることになるダンジョンの大半が見栄えや構造に特色がなく、ギミックにも欠けるので、他のDRPGを遊び慣れている人にとってはやや退屈さを感じるかもしれません。とは言え、全体的に地に足のついた遊びやすいゲームは確かなので、『無職転生』の原作ファンや、「DRPG」に全く触れた事がない方が初めて遊ぶDRPGとしては、本作を手に取る価値は十分にあると思います。

スパくんのひとこと

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