【THINK ME】なぜ大勢いた女性パティシエの大半が辞めてしまうのか?高い離職率の製菓業界「若手の本音」

外から見れば華やかで、きらきら輝くパティシエ業界。しかし、実際に就職した人、特に女性の多くが、数年のうちに離職を検討していることをご存じでしょうか?

その現実を把握するために、スイーツメディア「ufu.(ウフ。)」はパティシエ希望者・経験者の年齢ごとの男女比率を調査。すると、25歳以下では女性が87.01%を占める一方で、31~35歳では69.18%に。わずか10年ほどで約18%も比率が低下し、さらに46歳以上では45.09%と、男女比が逆転することがわかりました。
※協力/パティシエの求人募集サイト「パティシエント」

現場を見ても、たしかにキャリアと年齢を重ねた有名シェフは男性ばかり。一体、なぜこんな現象が起こるのか?

そんなとき、出産や子育てを経て資生堂「FARO」のシェフパティシエを務める加藤峰子氏と、ufu.編集長が出会って始まったのが、THINK ME PROJECTです。

プロジェクトの一環である今回の会には、若手パティシエ、オーナーシェフ、報道陣、一般企業で働く女性社員など約150名が参加。製菓業界にどんな問題が生じているのか、未来ある人たちのために消費者、同業者、メディアができることは何なのか。

オーナーシェフらによるトークセッションや多様な立場の人が話し合うテーブルセッションによって、その答えを模索しました。

女性パティシエの厳しい現実。業界が目指すべき理想とは

左:スイーツメディア「ufu.(ウフ。)」編集長の坂井 勇太朗、右:「資生堂FARO」シェフパティシエの加藤 峰子氏

会場は、資生堂銀座ビル3階の花椿ホール。日ごろは一堂に集まる機会のないメンバーを前に、まずは主催者の2名、加藤 峰子シェフと、ufu.編集長の坂井 勇太朗がステージに上がります。

今回のシンポジウムは、プロジェクトが目指す2つのゴール、「女性パティシエのコミュニティ創出」「共通の理想像の発見」のうち、後者に重きを置いたもの。女性の仕事復帰が難しい現状を変えるにはどうしたらよいか?目指すべき理想の形とは何なのか?率直な意見や疑問の話し合いを経て、その答えの糸口を探ります。

活躍している女性シェフや有名店のトップが登壇したトークセッションでは、働きやすい職場の傾向や、壁を乗り越えてきた方法を笑顔で打ち明ける場面も。そして、若手シェフの声をオーナーや有識者らが聞き皆で意見を交わす、テーブルセッションが始まりました。

「出産をしても復帰できる?」「自分も力をつければここまでいけるかも」

計5つのテーブルに分かれて行われたテーブルセッション。参加者の輪の中に、トークセッションの登壇者が加わります。

「出産をしても復帰できる?」「結局は才能の問題?」などの率直な疑問や、実際に独立して働いているシェフに対する「そうした働き方に至るにはどうしたらよいのか」といった具体的な質問。いま直面している悩みや将来へのアプローチを探る若いパティシエたちの多様な声が、各テーブルから聞こえます。

その話を聞いたオーナーシェフや有識者からは、自分自身の経験や、運営する店での取り組みを開示する言葉が。多くの困難を乗り越えてきたシェフによる過去のエピソードを交えた話には、ただのQ&Aでは感じられない含蓄があふれています。

飲食系の職を辞めて別の業界で働いている友だちとの給料の差に悩み、パティシエの道を諦めるか悩んでいた参加者からは、「自分も力をつければ高みにのぼれると実感でき、考え方が変わった」との声も。経験を積んだシェフとの気兼ねない会話を経て、「これまでは怖かったけど、上司とのコミュニケーションを頑張ろうと思う」と、明るく話す人もいました。

対話を、これからも

1回目の開催でありながら、オーナーシェフ18名、若手パティシエ約100名、企業やメディア関係者約30名が集まったシンポジウム。多くの感心や笑顔が見えたセッションを経て、この業界が目指すべき理想は何なのか?その答えのひとつは“対話”にあるように見えました。

会場では、参加者に向けてufu.編集長が選んだハーブティー『HERB ARE YOU?』のお土産も。女性、男性、若手、母親、LGBT…さまざまな境遇のパティシエたちが、幸せにスイーツを作り続けられるように。「THINK ME PROJECT」の取り組みは、まだまだ序章にすぎません。

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