マツダ サバンナGT(昭和47/1972年9月発売・S124A型)【昭和の名車・完全版ダイジェスト070】

この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第70回目は、サーキットでロタリーエンジンの実力の高さを証明した、マツダ サバンナGTの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

スカイラインGT-Rの前に立ちはだかる 新たな伝説を作ったロータリーパワーの象徴

昭和46(1971)年9月に発売されたサバンナは、俊足を誇ったファミリア・ロータリークーペの後継モデルとして開発された、ロータリーエンジン専用のパーソナルカーである。ロングノーズ&ショートデッキの躍動感あふれるスタイリングを採用し、フェンダーもレーシングマシンを思わせるワイドなものだ。

昭和48年6月のマイナーチェンジで、リアコンビランプが丸形6灯から六角形の4灯式コンビ(写真)に変わり、タイヤもZ78からZ70-13になった。

ボディは4ドアのセダンと2ドアのクーペが用意されていた。アフリカの大草原を奔放に走りまわる猛獣のイメージが強いのは、もちろん2ドアクーペのほうである。フロントはノーズ中央を張り出させ、その左右にデュアルヘッドライトを組み込んだ。このノーズピースはFRP製で、こうした構造は時代を先取りしたものだった。

サイドビューは弓を引き絞った力強いアーチェリーカーブで構成され、エアアウトレットも爬虫類の背ビレを思わせる大胆な造形になっている。また、リアエンドには、ロータリーパワーを誇示する丸型のリアコンビネーションランプを並べた。

インテリアも、ファミリア・ロータリークーペを昇華させたマツダ伝統のT型ダッシュボードを採用する。大径のタコメーターとスピードメーターを中心に、センターコンソールにコンビネーションメーターや時計を組み込んだ。ステアリングはホーン部分にロータリーマークを刻み込んだスポーティな3本スポークとなっている。

ブラックに塗られたダッシュボードに5連のメーターが並ぶ。3本スポークのステアリングやスポーティな意匠のシフトノブもGT感覚を盛り上げる。

エンジンは、ファミリア・ロータリークーペから譲り受けた10A型2ローター・ロータリーを積んだ。アイドルリミッター付き2ステージ4バレルキャブレターやフューエルリサキュレーターなどを採用して排出ガスと騒音を低減しているが、パワーは逆に高められた。

10A型は単室容積491cc×2ローターで、 最高出力105ps/7000rpm、最大トルク13.7kgm/3500rpmの性能だ。4速マニュアルミッションを介しての最高速は180km/h、0→400m加速も2L級スポーティカーに肉薄する16.4秒の俊足を誇った。

サスペンションは、当時としてはオーソドックスなストラットとリーフリジッドだが、リアはオイルダンパーの取り付け角をずらしたバイアスマウント方式として、乗り心地と操縦安定性を向上させている。

そして、サバンナの真打ちとして昭和47(1972)年9月に投入されたのが、12A型ロータリーエンジンを搭載した最強バージョンのサバンナ「GT」だ。これはマツダRX-3の名で先にアメリカに送り込まれていたモデルを、国内向けにモディファイしたものである。

すでに同年5月に開催された日本グランプリで先行デビューを果たし、常勝スカイラインGT-Rを退けてスーパーツーリング部門のウイナーになりモータースポーツ界で注目を浴びていた。当時、スポーティカーの話題の中心にあったクルマとも言える。

最大のセールスポイントは、前述のとおりその強力な心臓部にある。10A型に代えて搭載されたのは、カペラGS用の12A型2ローター・ロータリーで、573cc×2の排気量から120ps/6500rpm、 16.0kgm/3500rpmのハイパワーを絞り出し、パワーウェイトレシオも7.38kg/psを達成した。

この強力なエンジンにカペラGS-IIと同じ5速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、最高速190km/h、0→400m加速15.6秒が実現したのである。ブラックアウトされた精悍なインテリアには丸型の5連メーターと新デザインのセンターコンソールが採用され、決して評価の高くなかったサスペンションも大幅に強化された。

サイドポート式の12A型ロータリーはレブリミットの7000rpmまでストレスもなくモーターのように回った。マツダのロータリーの屋台骨を支えたエンジンだ。

デビューから1年後の昭和48(1973)年6月にはフロントグリルをリファインし、リアコンビネーションランプも丸形から六角形に変更されている。しかも昭和49(1974)年11月には、排出ガス対策に追われてライバルたちが軒並みパワーダウンするなか、サバンナだけはパワーアップを図った。

最高出力は125ps/7000rpmに高められ、最大トルクも16.2kgm/4000rpmに向上しているのだ。これはライバルに大きく差をつけた部分だ。

マイナーチェンジ後のサバンナGT。フロントグリルの形状が変更された。リアは丸型6灯式から独創的な六角形のテールランプになっている。

スカイラインGT-Rを退けサーキット常勝マシンの座に君臨したサバンナGTは、公道でも群を抜く速さを見せつけている。ロータリーパワーに市民権を与えた初めてのモデルが、RX-3の名で親しまれていたサバンナGTと言えるだろう。

MOTORSPORT「スカイラインGT-Rの50連勝を阻止」

サバンナGTは「サバンナRX-3」の名で 昭和46年12月の「富士ツーリスト•トロフィー」に参戦。50連勝のかかったGT-R勢がリタイアし、加茂進/増田建基組のRX-3がデビューウイン。47年3月の「富士GCシリーズ第1戦」ではGT-Rが勝利を収め50勝目をマークしたが、5月の日本グランプリでは片山義美のRX-3が優勝した。

SPEED TRIAL「レーシングサバンナが237.23km/hを記録」

モーターマガジン誌:昭和50年9月号に、レーシングRX-3のテストレポートが載っている。オーバーラップが大きくなるために高回転が得意となるペリフェラルポートのロータリーエンジンを積む釡塚RX-3は推定250psのパワーをフルに発揮して237.23km /hの最高速をマーク、0→200m=9.11秒、0→400m =13.4秒の加速力を記録している。

マツダ サバンアGT(S12A型)諸元

●全長×全幅×全高:4065×1595×1335mm
●ホイールベース:2310mm
●車両重量:885kg
●エンジン型式・種類:12A型・2ローター
●排気量:1588cc
●最高出力:120ps/6500rpm
●最大トルク:16.0kgm/3500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:Z78-13-4PR
●新車価格:79万5000円

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