え!?開山前でも「富士山」で登山できるの? 絶景の中腹・五合目までバス活用「大展望ハイキング」

二ツ塚下塚山頂からの眺め。二ツ塚上塚、宝永山、富士山がきれいに並ぶ姿が爽快だ(撮影:しょういち)

あまり知られてはいないが、6月より土日祝日限定の登山バス「春季ハイキングバス」が、JR御殿場駅から富士山御殿場新五合目に向けて運行を開始している。

この時期は富士山開山前であるため、山頂に向けての登山道は閉鎖されているが、御殿場新五合目から片道1時間30分の位置にある二ツ塚(二ツ塚下塚山頂まで)へ続く登山道は開放されている。

大きな富士山や宝永山を見据えながら、砂漠のような広大な砂礫の丘を歩く爽快さは何とも魅力的だ。

今回は片道の登山時間が30分増えるが、御殿場新五合目をスタートして、二ツ塚の2つの山頂を踏んで帰ってくるまでのルートを紹介する。二ツ塚下塚だけでも十分楽しいが、ぜひ2つの山頂にチャレンジして完全踏破を目指してほしい。

■二ツ塚(ふたつづか・二ツ塚下塚 標高1,804m、二ツ塚上塚 標高1,929m)静岡県御殿場市

二ツ塚は、富士山御殿場口新五合目から徒歩で1時間30分の位置にある、小ぶりな2つの山の総称だ。

山容はお椀を逆さにしたような、円錐台形が二つ並んだスコリア丘。スコリア丘とは、空洞の軽石のような溶岩石(スコリア)が降り積もってできた地形で、踏み締めるとカラカラと砂丘のように崩れ、登りづらい特徴がある。

反対に下るときには堆積したスコリアがクッションとなり、足を下ろした時の衝撃を和らげてくれる。

御殿場下山ルートの大砂走りを駆け降りることができるのは、これと同じ理屈によるものだ。山頂からの展望はすばらしく、東面には御殿場の街並みと箱根の山々、西面には巨大な富士山に宝永山、南面には尖った山容が特徴的な愛鷹山(あしたかやま)に湾曲した駿河湾と、360度全方位で楽しめる。

■第一駐車場の奥にある二ツ塚登山口

第一駐車場奥にある二ツ塚への登山口。こちらは富士山閉山中も空いている

二ツ塚への登山口は、第一駐車場の奥にある。バス停を降りて直ぐの登山口は山頂方面への登山道で、開山時期しか開放されないので注意が必要だ。

第一駐車場の手前には無料のトイレと長椅子が設置されているので、そちらで準備を整え出発しよう。なお、御殿場新五合目の駐車場は無料で、箱根や御殿場への眺望もよく、ドライブに赴く人も少なくない。駐車場を横切る際は、一般車両の動きに十分気をつけよう。

バス停を降りてすぐにある鳥居。この奥に山頂へ続く登山道への入り口があるが、富士山開山前は閉鎖されているので注意

■3つのピークを写真に収められる二ツ塚下塚山頂

登山口からしばらくは、カラマツの樹林帯を進む。この辺りのスコリアはそれほど深く積もっておらず軽快に進めるが、10分程進むと見えてくる幕岩(まくいわ)への分岐辺りから深さを増し歩きづらくなる。

このような地形に有効的な、つま先を砂礫に蹴り込んで歩く「キックステップ」を使いながら悪戦苦闘しつつ、1時間ほど進むと二ツ塚に到着だ。

山頂には、伊邪那岐命(いざなぎのみこと)と伊邪那美命(いざなみのみこと)の二柱を祀る社と小さな鳥居が建っている。山頂を示す標識もしっかりとしており、記念撮影するならこの場所がおすすめだ。富士山山頂、宝永山山頂、二ツ塚上塚山頂の3つのピークを眺めつつ、写真撮影を楽しもう。

■標高差125mの二ツ塚上塚にチャレンジ

二ツ塚下塚山頂を一通り楽しんだら、もう一段高い二ツ塚上塚へもチャレンジしてみよう。こちらの山頂への道は、今まで以上にスコリアが深く積もっており、かなり登りづらい。急勾配も加わり、一歩進む度に足元がズルズルと崩れてしまうので、今までの道程以上にキックステップを意識して進むとよいだろう。

足元に気をつけて30分ほど登ると、石積みが2つ見えてくる。南側に当たる石積みに三角点が埋まっており、ここが二ツ塚上塚山頂となる。

二ツ塚下塚との標高差は125mと登山活動でみると僅差に感じるが、ビルにすれば30階以上の高さ。景色も変わって見えるはずだ。下の山頂では水溜まりのように薄い山中湖だったが、ここまで登れば見慣れた茄子型の湖となって見える。これだけ登ったんだと達成感を味わいつつ、周囲の眺望を楽しんでほしい。

二ツ塚上塚山頂の南側の石積み。三角点と思しき人工石が積んである
二ツ塚上塚から眺める愛鷹山。右手には駿河湾の湾曲した海岸線が確認できる。奥に見える雲から突き出た山並みが伊豆の天城連山

■スコリアをクッションに下山してみよう

二ツ塚上塚山頂で充実感を満喫したら、お楽しみの下山タイムだ。先ほどは非常に厄介だったスコリア丘も下る時には、クッションとなって膝回りの筋肉疲労を軽減してくれる。

本来下り坂では、スピードが出過ぎないように反射的に膝周辺の筋肉を使ってブレーキをかけるが、このブレーキをスコリアが肩代わりしてくれるため、軽快に下ることができる。

コツは、できるだけスコリアが盛ってある箇所に踵から足を下すこと。こうすることでクッション性が上がるだけでなく、ブレーキも掛かりやすくなり、より楽に下れるはずだ。

欠点は砂や小石が靴の中に入ってくる点だが、ゲイターを履けば容易に回避できる。登山用ゲイターは、大雨の山行やスノーハイキングにも有効なアイテムなので、ぜひ揃えておこう。

二ツ塚上塚を下ったら、あとは一本道を下るだけ。周囲に広がる砂漠のような風景、正面に見える御殿場の街並みや箱根の山々を楽しみながら、下山しよう。

【コースタイム】
所要時間(往復):約2時間40分
富士山御殿場新五合目〜(約10分)〜幕岩分岐点〜(約1時間10分)〜二ツ塚下塚山頂〜(約30分)〜二ツ塚上塚山頂〜(約50分)〜富士山御殿場新五合目

【アクセス】
JR御殿場駅富士山口バスターミナルより季節運行バスにて約30分
※運行期間(6月:春季ハイキングバス、7月〜9月の富士山開山時期:夏季ハイキングバス)

●【MAP】富士山御殿場新五合目

住所:〒412-0006 静岡県御殿場市中畑

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