『Empire of the Undergrowth』自分の周りにはどんな蟻がいる?足下の小宇宙に目を向けて【ゲームで世界を観る#81】

『Empire of the Undergrowth』自分の周りにはどんな蟻がいる?足下の小宇宙に目を向けて【ゲームで世界を観る#81】

本記事では虫を撮影した写真を掲載しています。

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苦手な方は優雅な女王蟻様に免じてお引き取りください。

前回の「ゲームで世界を観る」に引き続き、『Empire of the Undergrowth』を取り上げます。水の中草の中森の中土の中、どんな場所にでも住み着いて繁殖する蟻ですが、目の焦点を合わせてじっくり観察するのは子どものとき以来全然という人は多いでしょう。街中でしゃがみ込む機会もあまりないですし、害虫として遭遇する以外はほとんど気にすることも無いと思います。

実際の所、身の回りにはどんな蟻が潜んでいるのか?どんなところに巣があるのか?変わった生態を見ることはできるのか?今回改めて、短い時間ながら調査を行ってみました。

調査した環境は山林に接する住宅地で、鷹やイノシシ、猿も出没することがあるエリアです。今回は森の中には入らず、花壇や植樹が多い住宅地の範囲内で何種類見つかるかを試しました。

種類の特定にはAndroid/iOS「いきものコレクションアプリBiome」を使用します。こちらは撮影した写真をAIで判定し、登録した生息地をビッグデータとして蓄積する優れものです。スマートフォンで撮影、またはデジタルカメラからインポートした画像を送信すると、一致率と共に複数の候補を提示します。確証が持てない場合は公開投稿で意見を募れるので、生物好きの方は是非使ってみて下さい。今回の撮影にはスマートフォンを使ったため、画質の不鮮明さはご容赦下さい。

最も多く見つかったのは体長3ミリメートルほどの茶色く小さいアミメアリでした。というのも、ひとかたまりになっているときの数がとにかく多く、その理由は巣を持たずに移動しているからだそうです。木の枝や草の影に留まっているのを見かけますが、翌日に同じ場所を見てもきれいさっぱりいなくなっていました。

グンタイアリのように、川のような列を作ってサナギを運搬している様子も撮影できました。アミメアリはなんと女王蟻がおらず、働き蟻がそれぞれで卵を産んで育てています。しかも単性生殖で!このような生体を持つ蟻は約1万種のうち僅か2種類しかおらず、そんなレア種が日本にいるなんてなんとラッキーなことか。もし夏休みの自由研究などで蟻の観察が必要になったら、アミメアリは確実に面白い結果をもたらしてくれるでしょう。

クロオオアリは、働き蟻と兵隊蟻のサイズ差が大きく別の種が混ざっているように感じます。巣の入り口はかなり大きい方で、周辺には掘り進めて出た余分な土が溜められています。周囲環境の色と大きく違うので見つけやすいですね。しばらく張っていると、土を捨てに来る蟻が時々出てきます。

ダンゴムシを集団で襲っている現場にも遭遇。ダンゴムシさんには気の毒ですが、きっとおなかをすかせている幼虫たちがたくさん待っているのでしょう。

日本において誰もがイメージする普通の蟻ことクロヤマアリ。クロオオアリに似ていますが、こちらは触角がやや長いのが見分けるポイント。

一匹だけでうろうろしていたのは、山から下りてきたらしいムネアカオオアリ。クロオオアリと並んで国内最大級のサイズです。クロオオアリと違ってコンクリの環境には入らず、山の中の倒木を主に住処にします。

オオヒラタシデムシも時々見かけます。腐肉を食べるスカベンジャーですが、最近ではミミズの方を積極的に好んでいるという研究も出ています。

数日の散策で発見できた虫は以下の蟻四種、全8種類でした。

地表がコンクリートで覆われている場所が多い中、大きな巣穴を作るクロオオアリは石段の隙間や浅い花壇の中にも巣を作っていて、体格に見合ったタフさを備えているようです。驚いたのはやはりアミメアリで、巣を持たずに移動していく生態は今回初めて知りました。生活のすぐそばに広がっている小さな「帝国」のことを、私達はほとんど知らずにいるのです。

しかし、その世界は今や外からの脅威に晒されています。前回も紹介したアルゼンチンアリです。西日本の主要な港湾都市ではほぼ侵入が確認されており、駆除が追いつかなければ爆発的に規模を拡大させる恐れがあります。もし1匹でも怪しい個体を見つけた場合は、逃げられる前にすぐさま写真に押さえてから、「Biome」や国立環境研究所に報告をお願いします。

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