森林環境譲与税 問われる有効活用 6月制度本格化 県内への配分増加

森林環境譲与税を活用し、岡山県産の木材を用いた放課後児童クラブの室内=岡山市東区の山南学園内

 森林保全を目的に国から自治体に配られる「森林環境譲与税」が本年度、岡山県内の全ての自治体で前年度より増える見込みだ。原資となる「森林環境税」の徴収が6月から始まって制度が本格化し、譲与額が全国合計で前年度より約100億円増える影響が大きい。県産材の利用促進など、有効活用できるかどうかが各自治体に問われる。

 森林環境譲与税の譲与額は段階的に増えており、前年度は全国で計500億円だった。総務省の集計によると、岡山県内への配分額は県が1億1835万円だったほか、新見、真庭、岡山市が1億円前後に上った=グラフ。本年度はまだ配分されていないが、全体の増額に加え、人工林面積に応じた配分が手厚くなることから「県内の自治体はいずれも前年度より増える見込み」(県林政課)という。

 新見市は本年度当初予算に約1億8200万円を計上した。前年度実績より4400万円近く多く、うち約1200万円は配分方法の見直しに伴うものだ。伐採期を迎えた人工林の再造林奨励金事業などを新たに始める。

 森林は、地球温暖化の要因となる二酸化炭素を吸収したり、災害を招く土砂の流出を防いだりする機能を持っている。健全な維持には、木の伐採と活用も大切だ。真庭市は市内産木材を一定量以上使った木造住宅の新築などを譲与税で助成している。岡山市は譲与税の86.7%(2022年度分)を公共施設の木造・木質化事業に充てており、放課後児童クラブの新改築への活用が目立つ。

 林業の担い手不足解消も大きな課題である。美咲町は譲与税を活用し、一日林業体験や実務研修会を開いており、参加をきっかけに町内で林業に就いた人もいるという。

 ただ、人口が多く森林が少ない自治体では使い道が決まらない場合もある。倉敷市は例年、基金への積立額が多く、残高は22年度末で1億4千万円を超えている。市農林水産課は「学校園の整備など、将来の需要に備えたい」としている。

 県は市町村や林業従事者の研修などに活用している。

 森林環境税と森林環境譲与税 森林環境税は個人住民税に1人年間千円を上乗せして徴収する国税。全額を森林環境譲与税として自治体に配る。配分額は私有の人工林面積、人口、林業就業者数に応じて決まる。人口の多い都市部に余分に割り振られているとの指摘があり、本年度から総額に占める比率を見直し、人工林面積に応じて配る分を50%から55%に引き上げ、人口比例分を30%から25%に引き下げた。財源はこれまで国が全額を工面していたが、本年度からは森林環境税を活用する。

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