最終コーナーでクラッシュ続出。ドライバーたちの不満と“危機意識”「もうちょっと耳を傾けて欲しい」/SF第3戦SUGO

「レースをするコンディションではなかった」

 表彰式後のミックスゾーン、そして記者会見にやってきたドライバーたちは一様に、危険なコンディションのなかレースが行われたことに対してシリアスなコメントを残した。

 6月23日にスポーツランドSUGOで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦。朝から降り続く雨のなか、当初予定より遅れてセーフティカー先導でスタートしたレースでは、実質スタートの際に大嶋和也(docomo business ROOKIE)が最終コーナーでコースオフし、クラッシュ。セーフティカーが再び導入されるが、そこからのリスタートでも太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が最終コーナーでコースを外れ、あわやクラッシュ寸前に。

 さらに次の周、阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)が同じ場所でクラッシュを喫したことでレースは赤旗中断。ガードレール修復に時間を要し、安全を確保できないことから、12周終了時点での順位をもってレースは終了となった。

 最終コーナーに関しては、決勝前のウォームアップ走行でも山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)がクラッシュを喫し、レースへの出場を断念している。これによってガードレールの修復が必要となり、スタート時刻はディレイすることとなっていた。

「正直、あの状況でレースをスタートすることが、まったく理解できなかったです」と憮然とした表情でレース後に語ったのは、印象的なオーバーテイクも見せた小林可夢偉(Kids com Team KCMG)だ。

「水の量もそうだし、見てのとおりスタートしては最終コーナーでみんな飛び出している。そこで『なぜクラッシュするのか』という状況を聞くこともなく、何周かセーフティカーで走ったらまたリスタートして、またクラッシュが起こって……レースを安全にするというところを本来は見ているはずだと思うんですけど、正直、何を基準に安全だと判断したのかなというのはドライバーとして疑問。僕らは『前は見えないし、まだまだ危ない』と訴え続けたのですが、残念ながらレースは再開してしまい……。誰にとっても望んだ結果ではなかったですが、結論としては命の危険がなくてよかったなと思います」

 雨での危険度に関してル・マン24時間レースとの比較を問われた可夢偉は、「去年は危なかったですよ。でも、それが危ないって分かったから、今年はあれだけセーフティカー出していたので」と答えた。もちろん、スーパーフォーミュラにおいても競技団は一定の判断基準を設けてレースをコントロールしているはずだが、少なくとも今回はコース上を走っていたドライバーたちとは“ズレ”が生じていたのだろう。

「(事故が)起こってからでは遅いのではないかという気もするし、やっぱりドライバーの意見にもうちょっと耳を傾けて欲しいというのが本音かな」と可夢偉は本心を語った。

 一方、「(レースを止める)判断が遅い」と語気を強めたのは牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だ。

「止めるタイミングはあったと思う。まず尚貴さんがクラッシュした時点でも、なぜあそこがガードレールなんだって話があるし、同じところで大嶋さんがクラッシュした時点で、もう無理だってみんな分かったと思うんですよ。朝(日曜フリー走行)の岩佐(歩夢)くんのスピンだって、スーパーフォーミュラに出てるドライバーが普通に走ってあんなことにならないと思うんです。そういう意味でも、レースしてはいけないシチュエーションだったと思います。何かあってからじゃ遅いと思う」

 今回、多くのドライバーがタイヤ、とくにリヤタイヤが発動せずにグリップが得られない状況であり、とりわけコースアウトが続出した最終コーナーでは、それが顕著であることを訴えていた。

 今回は、昨年の富士テストから投入された、サステナブル素材の比率が高められた新型ウエットタイヤでの、初めてのレース。セーフティカーでの低速走行が続いたことや「コースとの相性もあるかもしれない」と語るドライバーもいたが、発動のしづらさは多くのドライバーが訴えているところでもあり、牧野も「急に(グリップが)抜けちゃう感じはあって、朝のフリー走行でピットインしようとゆっくり走っている時に僕もなって、フルカウンターあてました」と言う。水量がさほど多くない状況でも、その特性は顔を出していたようだ。

 ただし、「タイヤ単体の問題だけではなくて、(昨年から)SF23になってダウンフォースが削られていることや、今年共通ダンパーになってタイヤへの安定した荷重が減る方向であることも関係しているのかもしれない」と、あるドライバーは事故が続出した原因について考察している。

65分遅れで開始された決勝レースを雨のなか、さらにセーフティカーランや赤旗中断が続くなか最後まで見守ったSUGOのスーパーフォーミュラファン

■過激な発言は、愛情の裏返し

 また、事故が起きた箇所にタイヤバリアが設置されていなかったことで、車両とドライバー、そしてガードレールへのダメージが大きくなった側面も指摘されている。

 優勝した野尻智紀(TEAM MUGEN)も記者会見で「金曜にトラックウォークをしているときに、『タイヤバリアとか必要じゃない? ガードレールいったら、絶対補修に時間かかるよね』という話はしていました」と述べている。

「そこから(話を)打ち上げてもそのタイミングではタイムオーバーだったと思うのですが、準備が足りなかったんじゃないかという意味でも、非常に残念なレースウイークでした。ファンの皆さんをお待たせしてしまってすごく申し訳ないレースウイークになってしまったなというふうに思います」と野尻はファンを気遣った。

 3位の坪井翔(VANTELIN TEAM TOM’S)も、野尻の意見に同調して次のように発言した。

「SUGOのストレートで言うと、舗装が変わっているところから急に水浸しみたいになっていて……これだと正直、雨になった時点でレースができないのではないかと思ってしまいます。ドライじゃないとレースできない、という話になりかけている状況に僕には見えます。せっかく雨でもお客さんが来てくれていることに対して、僕らがそれを返せるだけの環境作りがちゃんとできていないんじゃないか、というのは今日改めて感じたので、危機意識を持って、レースに対してのやり方を考えていかなければいけないと思います」

 今日一番の問題が、ドライバーからの声に運営側から対応がなかったことにあるのか、設備等のハード面で安全を担保できない状況だったことにあるのか、と記者から問われた野尻は「私個人的には、両方かなというふうに思っています」と答えている。

 全体的に重苦しい雰囲気に包まれた会見で、野尻は「僕らがしっかりとレースだけに集中するという環境を作ってもらえるとすごく嬉しいですし、こういった過激な発言をしてしまっているのは、愛情の裏返しでもあるとご理解いただきたい」とも述べた。もちろん、今回の状況にコメントしたドライバー全員が、同じ気持ちを根底に持っているはずだ。

 さまざまな論点が噴出した、14周の決勝レース。議論が深まり、より安全で魅力的なレースへと発展することを願うばかりだ。

2024スーパーフォーミュラ第3戦SUGO 決勝TOP3会見の様子

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