悲惨な戦争、もう二度と 沖縄「慰霊の日」 平和への祈り島を包む 軍備強化に強い懸念も 

礎に刻まれた両親や集落の人たちの名前を見て、当時を思い出して涙ぐむ佐久川富子さん(95)=23日午前8時6分、糸満市摩文仁の平和祈念公園(喜瀨守昭撮影)

 沖縄県は23日、沖縄戦で命を落とした20万人余に心を寄せ、平和を誓う「慰霊の日」を迎えた。79年前の激戦地、糸満市摩文仁の平和祈念公園では、県と県議会が主催する沖縄全戦没者追悼式が開かれた。玉城デニー知事は平和宣言の中で「自衛隊の急激な配備拡張が進み、県民は強い不安を抱いている」と、国が沖縄で進める防衛力強化に言及。参列した岸田文雄首相らに「沖縄の現状は、犠牲になられた御霊(みたま)を慰めることになっているか」と問いかけた。

 式には遺族ら約4500人(県発表)が参列した。額賀福志郎衆院議長や尾辻秀久参院議長も出席。参列者らは正午の時報に合わせ黙とうした。

 玉城知事は平和宣言で「抑止力の強化が地域の緊張を高めている」と指摘。しまくとぅばと英語を交え、交流による信頼関係の構築を訴えた。

 岸田首相は「沖縄戦の悲惨な実相と平和の尊さを次世代に継承することは責務」と述べた。名護市辺野古の新基地建設や自衛隊増強には触れなかったが、会場から激しいヤジが飛んだ。

 県遺族連合会の我部政寿会長は「二度と戦没者遺族を出さないという強い信念をもって活動する」と述べた。宮古高校3年の仲間友佑さんは平和の詩「これから」を朗読。世界で戦争が続く現状にあらがい、「僕らが祈りを繋(つな)ぎ続けよう」と誓った。

 沖縄戦などで亡くなった人の名前を記す同公園の「平和の礎」には、今年は181人の追加があり、刻銘総数は24万2225人に。日曜の慰霊の日とあって訪れる人は途切れず、碑の前には手向けられた花束が並んだ。

(宮沢之祐)

© 株式会社琉球新報社