直径最大100m「宇宙の基地局」を仮想的に構築–インターステラなどが研究開発

インターステラテクノロジズ(北海道大樹町)は6月21日、総務省からの研究開発「電波資源拡大の研究開発」に採択されたことを発表した。岩手大学、大阪大学、東京工業大学、奈良先端科学技術大学院大学、新潟大学とともに進める。

総務省から受託した研究開発の課題は「低軌道衛星と地上端末直接通信における周波数共用を可能とするナローマルチビーム形成技術の研究開発」。受託金額は初年度上限が2.7億円、期間は3カ年。

地上の通信インフラでカバーできない地域の通信手段として米Space Exploration Technologies(SpaceX)の「Starlink」を代表格に、多数の衛星を地球低軌道(LEO)に打ち上げて一体的に運用する衛星コンステレーションでの高速ブロードバンドが利用されるようになっている。近年は、専用の地上アンテナを使わずに、スマートフォンなどの地上の端末と直接つながる(「モバイルダイレクト」と言われる)機能を実現するための検討が始まっている。

今回の研究開発は、多数の超超小型衛星での編隊飛行(フォーメーションフライト)全体を大型のアンテナとして機能させるための無線系や衛星間情報処理系の基礎技術を確立することが目的。

LEOで1万個以上のアンテナ素子を組み合わせて、直径25~100m、実効開口面積が数百平方メートル以上という大口径の“フェーズドアレイアンテナ”を仮想的に構築(仮想フェーズドアレイアンテナ)。各アンテナ素子の搬送波の周波数や振幅、位相などを制御することで任意の方向や範囲に複数の電波(ナローマルチビーム)を送受信する。各アンテナ素子は位相などに誤差を含むことから自動的に補正する仕組みも構築する。

こうした技術が実現できれば、地上系と衛星系のネットワークで周波数を共用し、地上の携帯電話ネットワークと同等の通信速度や接続数で地上端末とのモバイルダイレクトが可能になるという。

仮想フェーズドアレイアンテナのイメージ(出典:インターステラ)

アンテナを構築する衛星の大きさは「将来的には0.1kg未満」とみられる(現在、小型衛星については、重さが100~500kgのミニサテライト、10~100kgのマイクロサテライト、1~10kgのナノサテライト、0.1~1kgのピコサテライト、~0.1kgのフェムトサテライトという区分がある。インターステラが考えている超超小型衛星はフェムトサテライトに分類される)。

インターステラによると、衛星通信は静止軌道(GEO)を周回する大型衛星による「衛星通信1.0」、LEOを周回する、Starlinkのような衛星コンステレーションによる「衛星通信2.0」とバージョンアップしてきているという。

モバイルダイレクトでは、米AST SpaceMobileの試験衛星「BlueWalker 3」が約64mのフェーズドアレイアンテナを搭載。ダウンロードの速度は14Mbpsを達成。AST SpaceMobileは商業サービス衛星「BlueBird」の第1世代「Block 1」を7月以降に打ち上げる計画。通信容量がBlock 1の10倍という第2世代の「Block 2」も計画している。

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インターステラプレスリリース

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