子宮頸がんワクチン、機会逃した世代への「キャッチアップ接種」低調 知らない人も50%以上

子宮頸がんについて説明する河野院長

 子宮頸(けい)がんを防ぐためのヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン。国は中止していた積極的な接種を2022年度に再開したが、機会を逃した世代への「キャッチアップ接種」が進んでいない。3回接種が必要だが、同年度に初回を終えた人は広島県で1割に満たない。無料で受けられる期間は来年3月末まで。初回接種を9月末までに終える必要があり、産婦人科医たちは啓発に力を入れる。

 HPVワクチンは2013年から無料で小学6年~高校1年相当の女性を対象に接種できるようになった。しかし、接種後に激しい副反応を訴える人が相次ぎ、国は約9年間、接種の勧奨をやめていた。

 現在は、この間に接種の機会を逃した女性を対象に無料で受けられる「キャッチアップ接種」を実施している。対象者は1997~2007年度生まれの女性。ワクチンは6カ月で3回打つ必要があり、全てを無料で受けるには9月末までに初回接種を終える必要がある。来年4月以降は自費負担となり、予防効果の高い9価ワクチンは計約10万円かかる。

 「がんのリスクを抑えられると聞いて、ひとまず安心です」。広島市中区の河野産婦人科クリニックで、西区の大学院生(22)は笑顔を見せた。市から案内はがきが届き、無料で打てるならと接種を決めた。

 河野美代子院長によると、最近、クリニックには月平均約30人と「駆け込み接種」が続いているという。初接種の際には、原因となるウイルスは性交によって感染することや、がん検診も大切であることなどを丁寧に説明する。

 厚生労働省によると、22年度に初回のキャッチアップ接種を受けた対象者は全国では6・1%。広島7・5%▽山口7・2%▽岡山8・5%▽島根10・8%▽鳥取9・1%―となっている。さらに、同省が23年1月に実施した調査では、キャッチアップ接種を知らない人が対象者の53%に上った。

 県は医師会などと連携して、チラシ配布などで呼びかけを強化。河野院長は「欧州などではすでに子宮頸がんは希少な病気になっている。ワクチン接種と検診を両立してほしい」と話している。

 通常の定期接種の対象者である小学6年~高校1年相当の女性は、引き続き無料で受けられる。

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