ホテル競争、広島市中心部で激化 新設計画が次々浮上 迎え撃つ地場ホテルは独自色で勝負

広島名物の小イワシの天ぷらなどが並ぶ広島ワシントンホテルの朝食

 広島市中心部で、外資系を含めたホテルの新設計画が次々と浮上し、競争激化の様相を呈している。新型コロナウイルス禍が落ち着いて人の流れが回復し、円安で訪日客も増えているためだ。地場のホテルは、支配人が自ら選ぶ地元の食材入りの朝食や、サウナ付きの大浴場で独自色を打ち出す。一方、業界では「ホテルが多過ぎる」と過当競争を懸念する声もある。

 瀬戸内海の小イワシの天ぷら、音戸ちりめんの五目ご飯、スライスした広島県産レモンをのせたフレンチトースト…。広島ワシントンホテル(中区)の朝食には、県産の食材を使った食事がバイキング形式で並ぶ。シェフが客の前で焼くお好み焼きもある。

 渡辺恭庸(やすみち)総支配人は自ら産地を訪れ、生産者から食材を仕入れる。狙いは訪日客など観光客。客室266室の稼働率はコロナ禍前を上回る水準に回復したが、競争激化を見据えて朝食を充実させ、集客力を高める考えだ。

 近くでは、米ホテル大手マリオット・インターナショナルが中国地方初の「コートヤード・バイ・マリオット広島」を2027年前半に開業する予定。旧市営基町駐車場一帯の再開発でも、27年度に完成予定の高層ビルにホテルが入る計画だ。

 渡辺総支配人は「ホテルが増え、集客は厳しくなる」とみて手を打つ。昨春にフロント隣のロビーをコワーキングスペースに改装し、宿泊客が無料で使えるようにした。

 広島市中心部で特に競争が激しくなりそうなのがJR広島駅(南区)一帯だ。アパグループ(東京)は7月下旬と10月に1施設ずつオープンする予定。28年にも1施設を開業し、今から2年後をめどに既存のホテルを建て替える。

 観光庁の宿泊旅行統計によると、23年の広島県の外国人延べ宿泊者数は129万2千人(速報値)で、コロナ禍前の19年と比べて97・7%まで回復した。市環境衛生課によると、コロナ禍でもホテル・旅館は増え続け、23年度末時点で275施設と3年前より31施設(12・7%)多い。

 地場のホテルは独自のサービスを磨く。広島パシフィックホテル(中区)はサウナ付きの大浴場をアピール。一度に約20人が入れるサウナと、正午から入浴できる時間設定を売りにする。訪日客は狙わず、スポーツ大会に参加する学生やビジネス客のリピーターを増やす。

 木村吏(つかさ)社長は「ホテル併設のサウナでは中国地方で最大規模。小規模ホテルならではの気遣いを徹底する」と力を込める。

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