新漁船に祖父の思い...孫にバトン 南相馬の漁師一家、進水式

第三長栄丸を前に記念撮影する(左から)木幡さん、宮本さん、武夫さん、亮佑さん

 真野川漁港(南相馬市)の漁師桑折亮佑さん(26)は漁船「第三長栄丸」(6.6トン)の進水に合わせ、船長として船を仕切り、祖父武夫さん(74)ら親族4人と共に漁に臨む。亮佑さんは「じじたちに仕事を教えてもらいながら頑張りたい」と意気込む。

 亮佑さんは、武夫さんと武夫さんの兄宮本茂春さん(77)、いとこの木幡修一さん(23)とスズキやタコ漁に出ている。東日本大震災前は、宮本さんと武夫さん兄弟はそれぞれ別の船に乗っていたが、震災の津波で船が壊れたり、流されたりした。震災後、2人が同じ船に乗って漁を再開すると、高校を卒業した亮佑さんが「じじに小さい頃から魚を食べさせてもらった。魚が好き」と漁に加わり、その後、木幡さんも船に乗るようになった。

 漁の再開から10年ほどたった今年、「孫に新しい船を渡したい」と武夫さんの思いにより、新たな船が造られた。これまで乗っていた船より0.4トン大きく、内部にはソナーなど最新機械を搭載した。

 武夫さんはこれまで亮佑さんと2人で船を仕切ってきたが「孫は一人前」と漁を任せることを決めた。亮佑さんは「少しずつやれることをやっていきたい」と謙虚ながらも力強く語った。

 進水式が22日、同漁港で行われた。家族や漁師仲間らが見守る中、大漁旗をなびかせた第三長栄丸が沖合に出て、航海の安全と大漁を祈った。

© 福島民友新聞株式会社