“ほぼ裸選挙ポスター”についての東京都選挙管理委員会の驚きの回答 過激化する選挙活動の背景にあるもの

問題のポスターを掲載した河合悠祐候補(左)とモデルの桜井MIUさん(右)※画像は河合ゆうすけの公式X『@migikatakawai』より 

過去最多となる56人が立候補した東京都知事選挙。7月7日、七夕の夜に終わる17日間の戦いの火蓋が6月20日に切って落とされたわけである。そんななか、有権者からの注目を真っ先に集めたのは、前参院議員の蓮舫氏(56)でも現職の小池百合子氏(71)でもなかった。

「前埼玉県草加市議会議員の河合悠祐候補(43)です。河合候補は、ほぼ裸状態の女性の選挙ポスターを掲示板へと掲載。警視庁は、東京都迷惑防止条例違反の疑いで、河合候補に警告を出しました」(全国紙政治部記者)

選挙ポスターの名を借りて公共の場へと掲載された、女性のあられもない姿。これには多くの有権者も不快感を覚えたようで、X(旧ツイッター)上では《表現の自由って、何してもいいわけでも無い》、《さすがにやりすぎなんよなー》と批判的な声が飛び交った。

現に、都知事選のポスターを巡っては、都の選挙管理委員会にも“みだらな画像が貼ってある”、“1つの掲示板に同じポスターが何枚も貼られているのはなぜか”といった苦情や疑問の声がすでに1000件以上寄せられているそうだ。

だが、河合候補は男性。自身とは性別も異なり、選挙に立候補すらしていない女性を選挙ポスターに起用することは問題にならないのだろうか――。弊サイトは、選挙ポスターに関する規定について東京都選挙管理委員会事務局に聞いた。

「選挙ポスターに関する公職選挙法上の規定は、サイズに関する制限だけです。長さ42センチ、幅30センチを超えなければ問題ありません。たとえば、ポスターに防水加工をしている場合は、加工部分を含めてこのサイズを超えてはいけません」(東京都選挙管理委員会の担当者)

ということで、ポスターの写真に関する規定もほとんどないというのだ。

「候補者の方は大抵、本人の顔写真を使用しますが、似顔絵でも構いませんし、他人の写真でも問題ありません。今回、問題になったポスターも候補者本人の写真を使用したものではありませんが、その点は問題ないのです」(前同)

というから驚きだ。

■「選挙ポスターが大人のバカッターと化している」

少々驚きの選挙ポスターの“NG規定”ナシーーそれでもなぜ今回、過激な選挙ポスターが掲示板へと張り出されることになったのだろうか。『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社)などの著書があり、自身も大手広告代理店・博報堂に勤務し、政党のPR活動にも携わった経験がある中川淳一郎氏に話を聞いた。

「日本で1番大きな地方選挙である都知事選へと立候補すれば連日、新聞やテレビでも取り上げられるわけです。今回、女性を起用した過激なポスターが話題になった河合候補にしたって、“バカな候補者が出た”という文脈で複数のメディアが取り上げている」(中川氏)

河合候補の件を取り上げたのは、産経新聞や東京スポーツなど大手メディアも含まれる。

「産経新聞や東スポの記事は大手ニュースサイトへと配信されます。河合候補本人は、これだけメディアで自分のことが話題になるなら“たとえ落選して300万円の供託金を払ったとしてもおしくはない”と思っているのではないでしょうか」(中川氏)

さらに中川氏は、

「95%の有権者は眉をひそめるかもしれないですが、バカな行動をすることで5%でも自分の支援者が増えれば儲け物。要は選挙ポスターが大人のバカッターと化しているんです」

と話す。バカッターとは2013年にツイッター(現・X)上で話題となった騒動のことだ。自身の反社会的な行動をネット上でさらけ出すことで、自身の承認欲求を満たす行為を指す。

「選挙期間中に子どもの目にも入るのに、ルールで禁止されていないからと、ほぼ裸の女性を起用した選挙ポスターを貼ること自体、あまりにも常識がない。選挙を売名行為の場としか捉えていない候補者が多すぎです」

と中川氏は思いを語る。そして中川氏は今後、より過激な選挙ポスターが登場する可能性を指摘する。

「都知事選や府知事選のような大都市圏の首長を決める選挙は注目度も高く、盛り上がりやすい。今回の河合候補の一件をきっかけに、さらに手の込んだ注目を浴びやすいパフォーマンスを考える候補も出てくるでしょう。

都知事選のように注目度が高い地方選挙を売名行為の場としたくないならば、候補者にも“政治活動歴3年”などの候補者資格を設けてもよいのでは」

市民生活の根幹にも関わる選挙活動。だからこそ、候補者にも投票者にもモラルが求められる。

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