県内「オオタバコガ」被害急増 県防除所、防除徹底呼びかけ

県内で被害が急増しているオオタバコガの幼虫(県病害虫防除所提供)

 農作物を食い荒らす害虫「オオタバコガ」による被害が、県内で急増している。例年、この時期に本県で被害が発生することはほとんどないが、今年は暖冬の影響で西日本を中心に大量発生しており、そのあおりを受けた。影響は実の肥大期を迎えたスイカやメロンなど、幅広い品目に及ぶ。県病害虫防除所は初となる注意報を出し、防除の徹底を求めている。

 オオタバコガは長距離飛来性害虫で、梅雨期に低気圧が通過する際、気流に乗って移動する。昨シーズンは暖冬だったため、寒さで死なずに越冬した成虫が多く、西日本から本県に飛来してきたとみられる。

 同防除所によると、今月上旬までの成虫の捕獲数は、寒河江市の圃場で110匹(平年3.6匹)、酒田市で23匹(同0.5匹)、山形市で39匹(9カ年平均3.8匹)となり、例年より10~46倍ほど多い。

 今月3~5日に酒田や尾花沢など6市町で行った巡回調査では、幼虫によるスイカの平均被害花率は2.7%(平年0%)、メロンは5.3%(同)だった。いずれも肥大期に入り、被害が広がれば出荷に影響する恐れがある。

 尾花沢市などの特産「尾花沢すいか」を生産する大山功・JAみちのく村山すいか生産部会長(69)=尾花沢市北郷=は「消毒が遅れた場所では既に幼果の表面に穴が空いたものもある」と困った様子。商品価値の低下に直結するため、「収穫まで気が抜けない」と警戒を強める。

 メロンとスイカを栽培する農家奥山和樹さん(50)=酒田市浜中=は「例年より虫が目立つ」と話す。メロンは防除を徹底しているが、スイカはまだミツバチが花粉を運ぶ時期で薬剤散布ができない。「虫が食べた実は確実に取り除き、品質と収量を確保したい」と気を引き締める。

 同防除所は幼果やつぼみの中に幼虫が残っている場合があるため、被害部位を適切に処分するなど迅速な対応が必要だと強調。「園地を回ってよく観察し、被害を見つけ次第、防除を行ってほしい」としている。

【オオタバコガ】雌は一晩に200~300個産卵することもあり、繁殖能力の高さから被害拡大が懸念されている。成虫の体長は20ミリほど。幼虫は食欲旺盛で、花蕾(からい)や果実内に潜り込んで食害する。

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