花譜Ch登録者100万人到達、しぐれうい「ロリ神」1億回再生 大台を記録したVTuber業界の動き

『KAMITSUBAKI STUDIO』所属のバーチャルシンガー・花譜が、6月21日にYouTubeのチャンネル登録者数100万人を達成した。2018年10月にデビューし、圧巻ともいえる歌唱力・表現力・世界観をもって、バーチャルアーティストの第一線で活躍し続けてきた一人が、大台に乗った形だ。『KAMITSUBAKI STUDIO』からも初の100万登録達成となる。

直近ではシンガーソングライター・廻花としても活動を始め、いまなおその歩みは止まる気配はない。彼女にとっては、この大台もひとつの通過点となるだろうか。

なお、この記録達成の裏で『KAMITSUBAKI STUDIO』の母体であるTHINKRが第三者割当増資と自己株式取得、エイベックス・ミュージック・クリエイティヴ保有の全株式取得により、エイベックスの連結範囲から離れ、事実上の独立となった。8月に向けて新スタジオ体制も移行中の同社は、今後どのように展開していくのだろうか。

今週はもうひとつ、VTuber業界に大きな記録が生まれた。イラストレーター 兼 VTuber・しぐれういのオリジナル楽曲『粛聖!! ロリ神レクイエム☆』のMVが、1億回再生を突破したのだ。VTuber楽曲としては、おそらく初の境地と推測される。

もはや楽曲にとどまらず、ミームとして世界中に拡散し、本人すら“制御し得なくなった結果”と思えば、この数値も妥当だろうか。これを越えてくる一曲が出る日は……現状ではさすがに予想がつかない。

グループ総出の『グランド・セフト・オート5』企画が流行中のにじさんじからは、「司賀りこ(しが りこ)」「珠乃井ナナ(たまのい なな)」「綺沙良(きさら)」「梢桃音(こずえ もね)」「ルンルン」の4人と1匹からなる新人ユニット「いずれ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)」がデビューした。

大きな特徴は「4人と1匹」というデビュー者の内訳。同グループにとって久方ぶりとなる「マスコット枠」の登場だ。コンセプトやビジュアルは、どことなく『原神』などを思い起こさせるアジアンな色が漂う「いずれ菖蒲か杜若」。女性4人とマスコット、架空の街を世界観に持つスタイルは、それ単体でIP展開ができそうな気配もある。ユニットそのものの雰囲気を統一し、一種のハコかつIPとするスタイルは、直近のにじさんじの新人に多く見られる傾向だ。

■HIKAKINも手に取る『Apple Vision Pro』 『PS VR2』の今後の可能性やいかに

XR方面もにわかに活気づいてきた。特に大きな話題といえば、6月28日より『Apple Vision Pro』の国内販売が始まることだろう。599,800円(税込)という価格はやはりハードルが高いが、空間コンピュータという概念がいよいよ本格的に上陸することになる。

これにともなって、国内企業でも導入計画や、コンテンツ開発に乗り出す動きがにわかに見え始めている。そして、著名人も少なからず接触するだろう。実際、HIKAKINは予約をしたようだ。こうした著名人の接触・発信により、「これが何であるか」という認識がより多くの人へ広がっていくことに期待したい。

ソニー・インタラクティブエンタテインメントが販売する『PlayStation VR2』(PS VR2)も、8月7日発売の『PlayStation VR2 PCアダプター』によって、PC接続解禁という大きな節目を迎えつつある。これまで『PlayStation 5』でのみ使えた『PS VR2』を、豊富なPCVRコンテンツでも活用できるようになることで、エントリーモデルとしてオススメできるように見える。

とはいえ、PC接続時にはオミットされる機能も多く、デバイスとしてのチャームポイントが十分に活きない可能性がある。そのあたりの事情も含めた『PS VR2』の可能性については、別記事で詳しく検討しているので、そちらを参照してほしい。

■『serial experiments lain』の展示など、ユニークなワールドが多数登場した『VRChat』

先週は、日本発のユニークなVRChatワールドが話題になった。以下で紹介するワールドは、いずれも一週間以内に1万人が訪れる盛況ぶりを見せている。

ひとつは、カルト的人気を誇るメディアミックス作品『serial experiments lain』のVRミュージアムだ。Anique株式会社によるプロジェクトとして、『VRChat』に建設されたバーチャルミュージアムの第1弾展示企画 『Weird展 ようこそ、ワイヤードへ』が、6月21日より開催中だ。

展示内容は、アニメ作中の印象的なシーンの抜粋を、ひとつの作品として展示するものが多い。岩倉玲音の顔が映るシーンだけを集めた「巨大なブラウン管の塔」など、アート性を意識した作品も見られる。

そして、アニメ版で幾度となく登場する「通学路」の再現空間もある。耳に残る効果音もろとも再現した白い道は、VRで足を踏み入れるとなかなかにインパクトがある。平面の1シーンを立体空間として再構築するシンプルなコンテンツなのだが、やはりこういうものほど訴求力があるものだ。

ひとつのミュージアムとしてもかなり丁寧に作られており、順路の最後にお土産コーナーまで設置されているのはニクい設計だと感じた。エントランスホールでは、『serial experiments lain』アニメ版本編の視聴ができ、これからこの作品に触れる人も取りこぼさない意思が感じられる。会場への誘い文句も、自然と「lainを好きになりましょう」になるだろうか。

『VRChat』内でのインタビュー企画動画が話題となったVTuber・エンジンかずみは、その活動の集大成ともいえるワールド『NAGiSA』を発表した。いわゆる集会場的な空間なのだが、「1対1の5分間の会話」をコンセプトに据えているのが大きな特徴だ。

すでにできあがった輪に入り、話しかけるタイミングをうかがうのではなく、ランダムにマッチングした人と1対1の空間に転送され、5分間だけ会話する。実際にためしてみると、ちょうどいいスパンでローテーションしていくので、コミュニケーションが苦でないならいくらでも続けられそうだと感じた。「見知らぬ誰かとちょっとだけ交流したい」という需要を満たす、VR空間のコミュニケーションの一番楽しい部分を気軽に体験できる場だ。

『VRChat』関連コンテンツに注力する株式会社Vは、新たな自社開発ワールド『VRC-JP 初心者プラザ』を公開した。これまで有志による制作が多かった、初心者に有用な情報などを提供する「初心者向けワールド」を、企業主導で作り出したものになる。

方向性としては、操作説明、おすすめワールド紹介、サンプルアバター展示、イベントスペースなど、多機能であることを最重視している。そして、このワールドは同社運営のDiscordコミュニティ「VRC-JP」の派生企画でもある。

「Discordコミュニティと接続する企業運営の初心者向けワールド」という空間が、UGCの空気が強い『VRChat』で今後どう発展していくかは気になるところだ。

(文=浅田カズラ)

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