コンビニの「無料引換券」なぜ増加? “店側の思惑や現状”を有識者が分析・解説

コンビニの「お得なキャンペーン」について調査してみた

「対象商品を買うと、また別の対象商品をプレゼント」というコンビニの無料引換券のキャンペーン。大体が、対象商品を購入するとレシートに無料引換券がついており、また数日後の期間限定で使用できる.....といった仕組み。新商品が対象の時もあれば、定番商品が対象となっている時もあります。このキャンペーン、最近は特によく見かけるようになったと筆者は感じています。

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客側からするとかなりお得な内容ですし、コンビニ側も集客などメリットがあるのだろうとうっすら思いながらも、この値上げが続く今においてあまりにも太っ腹過ぎて大丈夫なのかと心配と疑問が。今、無料引換券が増えている背景にどういった思惑があるのでしょうか。各社大手コンビニと、コンビニの専門家に話を聞きました。

◆各社コンビニからの回答

【ファミリーマート】最近、無料引換券の対象商品をいつもより増やすキャンペーンを行っていたのが同社。6月25日から引換期間を迎える商品は8メーカー17種類となっています。同社広報によると、同社が無料引換券サービスを始めたのは2021年9月の創立40周年を迎えるタイミングだったとのこと。

「『1個買うと、1個もらえるキャンペーン』は、2021年以来継続して取り組んでいる『たのしいおトク』の一環です。商品によっては、実質半額となる大変お得な企画であり、対象商品は、おなじみのお菓子やドリンクをはじめ新商品など様々用意しています。いつもご購入いただいている商品が対象商品の場合は大変お得になりますし、新商品をお試しできるチャンスとなっています」(ファミリーマート広報)

なお、無料引換分はメーカーとコンビニのどちか負担になるのか.....という質問には「社外秘になります」と同社広報は回答しました。

【セブンイレブン】「回答を差し控えたい」と返答。

【ローソン】返答なし。

◆「メーカー、コンビニの双方に大きなメリット」とコンビニジャーナリスト

無料引換券について、コンビニジャーナリストの吉岡秀子さんは「コンビニ」「メーカー」のどちらにも大きなメリットがあると説明します。

「まず、コンビニ側のメリットとしてわかりやすいのは『客の来店機会を増やすことができる』ということです。無料引換券のためにコンビニを訪れる、という新たな顧客を獲得し、無料引換券を使用するためにまた店を訪れる、というリピーターを増やすこともできます」(吉岡さん)

また、コンビニはかつてのイメージから脱却を図ろうとしているのでは、と吉岡さんは推察します。「多くの人にとってコンビニは『定価販売だけど24時間いつでも行けるから便利』という場所であり、『コンビニといえばお得』というイメージを持っている方は少ないと思います。無料引換券は実際にかなりお得なキャンペーンであり、コンビニは新たな価値の一つとして『お得』のイメージを定着させようとしているのだと考えられます」と持論を展開。

吉岡さんによると、コンビニでの無料引換券自体は数年前からあり、コロナ禍以降に「徐々に増えてきたイメージ」とのこと。さらに最近増加している理由としては、「世間的に値上げの波が押し寄せているからこそ、お得のイメージを定着させるチャンスだから」なのだとしています。一方、メーカー側のメリットについて、吉岡さんはいわゆる“推し変”がポイントだと説明します。

「習慣としてコンビニに行く人は、大体が毎回商品を購入しますが、メーカー側はそこを何とか自社の商品に変えてもらいたいと考えています。例えば、いつもは『このコーヒーを買う』という客も、無料引換券があるとなれば『こっちのコーヒーを買ってみようかな』と飲んでもらうきっかけが生まれます。もしかしたらそれをきっかけに推し変をするかもしれません。これをメーカーは期待しているのです」(吉岡さん)

コンビニ側・メーカー側のメリットがわかったところで、実質半額に相当する無料引換券において“負担”は無いのでしょうか。吉岡さんは「無料分をメーカー・コンビニどちらが負担しているのかはケースバイケースでしょうし、はっきりとはわからない」とした上で「負担があったとしても、生まれるメリットはそれを補うほどの効果があると考えます」と説明。

「メーカーとの付き合いも深く、全国に多くの店舗を持ち販売量も多いコンビニだからこそ実現できるキャンペーンなのだと考えます。店舗数の多くない小売店で同じことをするのはなかなか難しいのではないでしょうか」(吉岡さん)

(取材・文=宮田智也)

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