WANIMA、ツアー『Catch Up TOUR -1 Time 1 Chance-』78本目・Zepp Hanedaで伝えきった愛と情熱

振り返れば2022年の3月から約2年にわたって続いてきたWANIMAのツアー『Catch Up TOUR -1 Time 1 Chance-』。その78本目(!)となるZepp Hanedaでのワンマンライブが6月18日に開催された。SE「Catch Up」に乗って登場したその瞬間から、KENTA(Vo/Ba)、KO-SHIN(Gt/Cho)、FUJI(Dr/Cho)の3人(全員が真っ白なTシャツ姿だ)はかなりアッパーなノリでオーディエンスを盛り上げる。そしてFUJIが叩き出すどっしりとしたビートからKENTAが「ONCE AGAIN」を歌い始めた。KO-SHINのコーラスもどデカい声量で鳴り響き、フロアはのっけから大盛り上がり。すし詰めになったオーディエンスを前にKENTAが叫ぶ。「めちゃくちゃ気合い入ってます!」。その言葉はまったく嘘ではないというか、この瞬間から音が鳴り止む最後の瞬間まで、ステージからはとんでもない気合いが溢れまくっていた。

続く「舞台の上で」、KENTAはマイクスタンドごとステージの上手に移動、フロアのすぐ近くで声を張り上げる。キレキレの演奏は、激動の季節をひたすらにライブを繰り返しながら駆け抜けてきた日々の正しさを証明にしているようだ。「全曲、最後の1曲ぐらいの気持ちで、たったひとりのおまえに届けにきました! 熱く、強くいくぞ!」――すでに最高潮のフロアをさらに煽り立てるKENTA。「この調子だと俺、もたんかもしれん(笑)」と言いながら、ギアを緩めるつもりは毛頭ないようだ。

「Japanese Pride」で一面のジャンプと合いの手を生み出し、少し雰囲気を変えて届けた「曖昧」ではシンガロングを巻き起こし、「懐かしい曲」といって「アゲイン」を繰り出す。もちろんここでもオーディエンスはイントロから大歓声、最高の合唱がZepp Hanedaを包み込んだ。まさに縦横無尽、出し惜しみなし。これが最後になっても後悔しない、というWANIMAの気持ちは本物だ。驚くべきは、そんなライブを彼らはこれまで70本以上もやってきたということ。僕はこれまで何度も彼らのライブを観てきたが、この前のめりで向こう見ずな姿はなんだかとても新鮮だ。「アゲイン」のギターソロでKO-SHINがかっこよく弾き倒している時にKENTAは彼の股の間から顔を出したりしてふざけていたが、そういう悪ガキっぽいノリ、カラッとした気分のいいやりすぎ感が、WANIMAのライブを明らかにアップデートしている。

「Do you get it now?」「1CHANCE」、そして「Chopped Grill Chicken」……リズムも曲調も、そして歌い方も変幻自在にシフトさせながら、WANIMAのパフォーマンスはどこまでも熱を上げていく。冒頭からオーディエンスの声が響きわたり、「羽田!」や「WANIMA!」のコール&レスポンスも起きた「つづくもの」を歌い終えると、KENTAはベースを高々と掲げてみせた。10曲目に披露されたのは、WANIMAにとってとてつもなく大事な曲としてライブの場で育ってきた「眩光」。「おまえに届くんやったら、今日くたばっても構わないよ」という言葉通り、全身全霊をかけて目の前の一人ひとりに向けて放たれるKENTAの歌。それに応えるようにフロアからも声が上がり、クラウドサーファーも続出。めちゃくちゃ濃い一体感が会場を覆っていった。「体がたぎってるよ、体の底から熱い気持ちが溢れてるよ!」。KENTAが語りかける言葉も、実感と確信に満ち満ちている。その後も楽曲を間断なく鳴らし続けながら、ライブはあっという間にクライマックスへと上り詰めていった。

KENTAの「東京!」という声にオーディエンスの美しいコーラスが響いた「サシヨリ」、ものすごいスピードで駆け抜けた「サブマリン」などを経て、「人生一回きりやから、誰がなんと言おうと行きたい方向に行ってください。楽しんでいこう」という言葉から「JOY」へ。KENTAはまたしてもマイクスタンドを手にステージを行ったり来たり。FUJIとKO-SHINがしっかりとサウンドの屋台骨を支えているからこそ、彼もまた自由に感情を爆発させることができる。独立を経て、さらに強くなったWANIMAの連帯感を、こののびのびとしたステージが象徴しているようだ。その後「BIG UP」を経て「Damn away」へ。KENTAがしれっと「ラストの曲です!」と叫ぶ。ん、今ラストって言った?と思う間もなくあっという間に曲を駆け抜け、「ありがとう、WANIMAでした!」と3人はステージから去っていった。

体感としてはあっという間、でも振り返ればここまで18曲、すでに1時間半が経過していた。ライブハウスで与えられた30分のスロットにすべてをぶち込むようなその密度に呆気に取られたが、もちろんライブはこれでは終わらない。スクリーンに2022年から続いてきたツアーを振り返る映像が流れ、この日まで78公演行われてきた『Catch Up TOUR -1 Time 1 Chance-』のファイナルとして、11月9日、10日に東京 有明アリーナ、11月23日、24日に兵庫 ワールド記念ホールにて『Catch Up TOUR Final 2022-2024』が開催されるという告知がなされてフロアが歓喜に沸くなか、3人はステージに戻ってきた。

「去年の11月から新体制になって、『今まで通ってきた道にリスペクトを忘れず、ここから先は愛と情熱を持ってやっていこう』と仲間たちとメンバーと決めて今までやってきました」と熱気冷めやらぬオーディエンスに向けて語り始めるKENTA。「若い時は技術不足、力不足でみんなに伝えきれんかったところもある。でも、今やったらいろんなことを取り返しながら、巻き返しながら、またやっていけるんじゃないかな」。この日のライブは、まさにそんな彼の言葉をそのまま体現するようなものだった。愛と情熱、あらためて伝えたいこと……そしてそれをいちばん伝えきることができるのは、KENTAの爆笑MCではなく楽曲と3人の演奏だ。そんなプライドを示すように、怒涛のアンコールがここからスタートしていった。

「2億年ぶりにやります」と披露された「Drive」から続けて披露された「花火」では、歌をほとんどオーディエンスに任せてKENTAはステージをうろうろ。KO-SHINも笑顔でギターをかき鳴らしている。さらにバキバキの照明のなか、アルバム『Catch Up』から「This That Shit」を繰り出すと、「ここで問題です、何回だって繰り返しやってもいいのはなんでしょうか?」といきなりのKENTAクイズを挟んだりしつつ次々と曲を重ねていく3人(ちなみにクイズの答えはその後演奏された「リベンジ」だ)。彼らがアンコールでやる曲は、ステージ上でその場で決められている。KENTAの合図に即座に応えるメンバーも照明やPAのスタッフもとんでもないスリルだと思うが、それも含めてヒリヒリした熱がどんどんと高まっていく。

そんな熱い夜を締め括ったのは「いいから」だった。KO-SHINが思わずギターを弾くのをやめてコーラスを歌い出したりするぐらいに自由な空気を醸し出しながら(KENTAは「KO-SHIN、おまえがギターを弾かないと俺は歌えない……ほら見ろ、歌詞が飛んだ!」と困っていたが)、Zepp Hanedaは最後の最後まで盛り上がりきった。「これがライブやぞ、これが生きるってことやぞ!」。そんなKENTAの言葉がすべて。生々しくて荒々しくて、そして清々しい、最高にフレッシュなWANIMAのワンマンライブだった。

(文=小川智宏)

© 株式会社blueprint