高齢化が進み、高くなる「介護保険料」。所得額や居住地でかなりの差がある?

新規に改定された介護保険料は

介護保険制度の運用主体は市区町村で、年齢と所得に応じて介護保険料は算定されます。同時に、保険料は居住地域によりかなりの差が生じています。所得が高い方ほど保険料も高く設定されていますが、さらに差が生まれる理由として、高齢化の比率や利用実態などが地域によって異なるためです。行政区分の小さい市区町村が運営主体となっているため、利用実態の違いが、保険料に差に直結する結果になっています。

介護保険料は3年ごとに改定されており、2024年4月から新しい保険料になりました。新しく確定した保険料の通知は6月以降手元に届きます。厚生労働省の「第9期計画期間における各都道府県平均保険料基準額」によると、65歳以上の方が支払う都道府県別の保険料は、全国平均で月額6225円になります。これまでと比較して約3.5%上昇しています。いわゆる団塊世代が75歳を超えたことに加え、介護報酬が改定されたことも影響しています。

都道府県単位での平均値を見ると、最も高い大阪府が月額7486円、最も低い山口県が5568円となっています。ちなみに東京都は6320円で、全国平均をやや上回る金額です。次回の保険料改定は2027年ですが、高齢化が急速に進み介護サービスを受ける方も増加するため、今後も介護保険料は上がると予想されます。

実際に運用をしている市区町村単位の保険料では、最も高い大阪府大阪市が月額9249円、最も低い東京都小笠原村が3374円で、実に3倍近い格差が生じています。大阪市の場合、独居高齢者の比率が高く制度利用率も高いことが、保険料が上がる要因の一つといわれています。

小笠原村は何といっても若年層の比率が高いことが、保険料が抑えられる要因です。高齢者を中心に、高額の介護保険料を負担することや、居住地により介護保険料に差が出ることへの抵抗感が生じることも十分に考えられます。

介護保険制度の仕組み

そもそも介護保険制度は、体の機能が衰えてきたことで、その方が受けたいと各種の介護サービスを、比較的安く受けられることを目的に制定された保険制度です。

具体的には、デイサービスの利用、介護ヘルパーの派遣、入浴サービスの実施など、制度があることで安い自己負担額で利用できることです。市区町村が提供する各種の介護サービスを、多くの方が1割負担で、所得の多少高い方でも2~3割負担で受けられる仕組みです。この負担率は医療保険制度の仕組みとほぼ同様です。

例えば、最も介護が必要な重度の「要介護5」と認定されている方で、月額最大約36万円のサービスを利用できますが、支払額は1割負担の方で約3万6000円だけです。介護サービス全体の費用は50%が公費で賄われ、残りが利用者の負担と介護保険料で賄われています。

介護保険を支えている仕組みのなかでは、公費分を除くと40歳以上の介護保険加入者が支払う介護保険料と、利用者が介護サービスを利用した際に支払う利用料で賄っています。ただ地域によって、加入者が支払う介護保険料に大きな差があります。

その要因としては、住民の高齢化の割合、介護認定者の割合、介護サービスの利用頻度、重度の介護認定者(要介護4、5)の割合などが、高いほど介護費用の増加につながっています。実際に介護保険料が高い自治体は、介護サービスの利用頻度などが高い傾向にあります。

介護保険料の支払い方法と対象者

介護保険料は、40歳以上の国民全員が負担します。40~64歳までの方(第2号被保険者と呼ぶ)と、65歳以上の方(第1号被保険者と呼ぶ)とでは、仕組みが異なります。また40~64歳の方では、加入している健康保険によって支払い方法が変わります。

40~64歳で、会社員・公務員など職場の組合健康保険に加入されている方は、その方の月額賃金に一定の保険料率を掛けた保険料額の半分が、支払う保険料になります。残りの半額分は勤務先の企業などが負担します。本人の居住地の違いによる支払額の変動はありません。介護保険料は加入している健康保険組合から支払われますが、健康保険料と同様、本人の給与から天引きされます。

40~64歳で、自営業やフリーランスを含む個人事業主など、国民健康保険に加入されている方は、本人に通知される市区町村が定めた金額を納付します。その際、本人の居住地、本人の所得額、世帯人数などにより、納付額に差が生まれます。多くの場合、国民健康保険料などと一緒に金融機関を通じて支払います。

実際に介護保険を利用する65歳以上の方は、本人の所得額などに応じて市区町村が決めた金額を支払います。所得額によって支払額が異なりますが、居住地によっても金額が変わってきます。同じ所得の方でも、住んでいる地域によって支払額に差がありますが、その金額を市区町村に支払います。直接納付することもできますが、支給される年金から天引きにすることも可能です。また実際に介護サービスを受ける立場になっても、決められた保険料は払い続けます。

介護従事者への待遇改善など、制度の存続に保険料の増加はやむ負えない面もありますが、一方で月額1万円近い保険料となると、負担に耐えられない高齢者を生むことにもなり、今後は制度のあり方も問われることになりそうです。

出典

厚生労働省 介護保険制度の概要
厚生労働省 第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について
厚生労働省 介護事業所・生活関連情報検索 介護サービス情報公表システム サービスにかかる利用料

執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト

監修:中嶋正廣
行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

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