【独自】寄付で無関係ポスター…直撃のエステ店長「すごくいい経験できた」正式候補者「本音は売名」 都知事選“掲示板ジャック”108カ所徹底調査

物議を醸している都知事選の“掲示板ジャック騒動”で、Mr.サンデーが掲示板108カ所を独自調査すると、22日までに24枠にポスターが貼られていた掲示板は46カ所あることが分かった。さらに無関係のポスターを貼る人たちを直撃取材すると、孫の絵をポスターにしたユーチューバーや、自分の顔をポスターにして「すごくいい経験ができた」と喜ぶエステサロン店長の女性など、意外な事実にたどり着いた。

一口:2万5千円の寄付でポスター貼れる権利

史上最多の56人が立候補する中、異例の事態が起きているのが、候補者のポスターが貼られる掲示板。

56人の候補者に対し、掲示板に用意されたのは48枠で、あぶれた候補者は、泣く泣くクリアファイルに入れたポスターを掲示板の横に貼り付けていた。

東京都庁の真下にある掲示板には、枠内に貼りきれない候補者のポスターが枠外に貼られていたが、雨に濡れ、風で裏返ってしまい正面からは見えない状態になっていた。枠外になった候補者の支援者に話を聞くと、貼ったポスターが見える場所と見えない場所があったと話した。

そして今、かつてない光景となり、物議をかもしているのが、掲示板の24枠を埋めている候補者とは無関係のポスター。

仕掛けたのは24人を擁立する政治団体。告知日の20日からは一口・2万5千円で団体に寄付した人に対して、掲示板1カ所の24枠に自由なポスターを貼れる権利を譲る…そのため、寄付した人たちが好き好きにポスターを貼り出しているのだ。

実際、どんな人が、何のためにポスターを掲示しているのか?
Mr.サンデーは、11人のスタッフで16の区と八王子市の掲示板を総力取材した。

番組ディレクター:
ピンク色を背景にした様々なポスターがたくさん並んでいます。

番組ディレクター:
動物のイラストが複数貼られております。

撮影できた掲示板は合計108カ所。その内容を独自検証すると、22日までに、24枠にポスターが貼られていた掲示板は46カ所で、24枠にポスターが貼られていなかったのが62カ所だった。

そのポスターを大きくジャンル分けすると、最も多かったのは「候補者に関係のない女性」のポスターで15カ所。次が、政府への批判や、イベント参加の呼びかけなど「文字だけのメッセージ」が7カ所。さらに「子どもの写真」5カ所、「動物の写真」4カ所、「候補者に関係のない男性」4カ所、「イラスト」2カ所、「子どもが描いた絵」1カ所、「候補者」1カ所と続く。

男性ホストに女性専用風俗、「底辺ユーチューバー」まで

一体、貼り出した人の目的とは何なのか?
東京・新宿区歌舞伎町にある掲示板を実際に近くで見てみると…貼られていたポスターの一角に、QRコードが印刷されていた。

読み込んだ先には、当該ポスターに写っているホストクラブの男性のXのアカウントに飛んだ。どうやら、客を呼び込むPRのようだ。

さらに、東京・文京区の掲示板にはショートヘアの活発そうな女性が描かれたポスターがたくさん貼られていて、そこに印刷されていたQRコードを読み込むと、作者らしきイラストレーターのホームページに飛んだ。

今回、確認したポスターには、どれもQRコードが添えられ、そのうち広告目的とみられるものが25件あった。

中には、周辺住民が警戒するものもあった。渋谷区の住宅街に掲示されていた女性専用風俗に関するポスターだ。

近くにいた人に掲示板について話を聞くと、「子どもも見るじゃないですか、そこ、団地で…」「いたずらがすぎるんじゃないかと思いますけど」といった憤慨する声があった。

一方、何が目的なのか謎なポスターもあった。

幼い子どもがクレヨンで描いた女性の姿とたくさんのハートマーク。そのポスターに記載されているQRコードを実際に読み込んでみると、特定のLINEアカウントに繋がった。

そこで、Mr.サンデーは、そのLINE宛てに取材を依頼した。

22日午後8時頃、取材に応じた妻と2人暮らしという69歳の男性の自宅を訪れると、掲示板に貼られていたポスターと同じような絵が壁に貼られていた。

69歳男性:
孫がちっちゃい時に幼稚園前後ですかね。その頃に描いて。
かわいいのがいいなと思ったもんですからね。

5000円で掲示板1カ所24枠にポスターを貼る権利を得て、かわいい孫の絵をポスターに使ったという。だが、一体何のために貼ったのだろうか?

ユーチューバーだという男性の部屋を見ると、照明や撮影機材があった。

ーー挨拶の言葉とかあるんですか?
寄付でポスター掲示板枠を得た男性ユーチューバー(69):
決まりの(挨拶)ありますよ。「こんにちは~ 〇〇ちゃんでーす」
まだまだ底辺ユーチューバーでね。
趣味で始めて1年か2年ぐらいになりますけども、だんだん登録者も増えてきたので、ここのところでもうちょっと多くの方に見てもらいたいなと思ったんですね。
法律違反してるわけじゃないし、宣伝の意味が一番なので。

ーーPRの効果は? 寄付でポスター掲示板枠を得た男性ユーチューバー(69):
1人の方がLINEで来ましたね。
「見ました。ポスターを」って。一人でもそういう効果があったらいいなと思っていましたのでうれしかったですね。

そう満足そうに語る男性は、都知事選挙について「私は東京都に住んでるわけじゃないので投票もできないしね。だから関心はないんですね。実際のところ」と答えた。

30代エステサロン店長「すごくいい経験ができた」

都民の税金が使われる掲示板を利用し、都民以外が宣伝効果を得る。

ピンク色のポスターに写るのは、都知事選の立候補者とは全く関係の無いパッチリとした目の女性。そのポスターに写る女性本人が取材に答えた。

ーーいつ貼ったんですか?
寄付でポスター掲示板を得たエステサロン店長(30代):
(6月)20日の夜ですね。旦那と旦那の友だちに貼りに行ってもらいました。
私としては(店の)宣伝とかっていうよりは多くの人の目につくことで。
うちの店に行きたいですってことじゃなくって普通に応援してますとか、友達とかが「すごい何これ?出馬するの?」とか。
いろんな人がびっくりして連絡をくれたりするっていうのは個人的にはやっぱすごくうれしいっていうのがあって、(人と)つながるツールにそれを使うなって言われたらそうなんだけど、すごくいい経験ができたというか。

女性は、税金が使われている掲示板を利用し、人とつながる喜びを味わえたと話すと同時に、ある思いも口にした。

寄付でポスター掲示板を得たエステサロン店長(30代):
自分がそれを体験してみることで、こういうお金もかかってるんだなと。
選挙ポスター全然いらないんじゃない?って思います。
そこにお金使うんだったら、もっと違うものに税金使ってほしいですし、今時代的に違うんじゃないかなと。

正式な候補者「本音としては売名」

一方で、掲示板の24枠を寄付した人に譲った政治団体の正式な候補者はこう話す。

「ある政治団体」から立候補したA氏:
政治家志望なので、もし都知事になれればなりたいですが、本音としては売名です。
YouTubeやSNSでバズると、次の選挙でも有利になることもあります。例えば次、区議会選に出たとしたら、「何か見たことある」となるわけです。

“名を売りたい”と出馬したにも関わらず、掲示板の枠が他に譲られたこの候補者はこうも話した。

「ある政治団体」から立候補したA氏:
自分も寄付をして掲示板2カ所にポスターを貼っています。5000円を2口です。

専門家「選挙に対する正しい政治的な情報が有権者側に伝わってこない」

こうした掲示板の枠を取り引きする行為について、専門家はこう指摘する。

法政大学大学院 公共政策研究科 白鳥浩教授:
そもそも掲示板は誰のものなのか、何のために使われるものなのか。
税金を使って作ったものを使ってですね、私的に営利目的に使うっていうことは果たして許されるのかどうかっていうところは議論するべきじゃないかなと思いますけどね。

さらに、投開票へ大きな懸念を指摘した。

法政大学大学院 公共政策研究科 白鳥浩教授:
選挙に対する正しい政治的な情報というのが、有権者の側に伝わってこない。つまり、有権者の知る権利というものを大きく害しているという可能性がある。
(「Mr.サンデー」 6月23日放送より)

© FNNプライムオンライン