三笘薫の所属クラブも発電!英プレミアリーグに広がる環境活動

ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン 写真:Getty Images

イギリスを拠点に活動している新進気鋭の団体『スポーツ・ポジティブ』は、サッカークラブを含む世界中のスポーツ関連組織が「気候変動、持続可能性、環境保護、生物多様性」などの問題へ取り組む際、それを後押しする存在として近年密かに注目を集めている。

2024年4月、同団体はプレミアリーグ(英1部)に所属するサッカークラブが前述の問題について2023年3月から1年間に取り組んだ内容を公開した。この記事では、その中でも特に興味深い取り組みについて厳選し紹介していく。


トッテナム・ホットスパー 写真:Getty Images

環境活動をリードするトッテナム

まず最初に取り上げたいのが、サッカークラブのエネルギー源についてだ。 スポーツ・ポジティブの調査によると、2023年3月から2024年2月までの期間内でプレミアリーグ全20クラブ中、実に13クラブが電力に100%再生可能エネルギーを採用。さらに、その内6クラブがスタジアムや練習場・アカデミーで、太陽光や風力などCO2(温室効果ガス)を排出しにくい自然エネルギー発電を行っているという。なかでも現在MF三笘薫が所属するブライトン・アンド・ホーブ・アルビオンやトッテナム・ホットスパーはいずれの取り組みにも該当し、まさにプレミアリーグの環境リーダーとして他クラブを牽引する存在と言える。

再生可能エネルギーを100%利用しているクラブ

  • アーセナル
  • ボーンマス
  • ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン
  • バーンリー
  • チェルシー
  • クリスタル・パレス
  • エバートン
  • フラム
  • リバプール
  • マンチェスター・シティ
  • トッテナム・ホットスパー
  • ウェストハム・ユナイテッド
  • ウルバーハンプトン・ワンダラーズ

自然エネルギー発電を実施しているクラブ

  • ブレントフォード(太陽光発電)
  • ブライトン・アンド・ホーブ・アルビオン(太陽光発電)
  • ニューカッスル・ユナイテッド(CHP ※熱電併給)
  • ノッティンガム・フォレスト(太陽光発電)
  • シェフィールド・ユナイテッド(太陽光発電)
  • トッテナム・ホットスパー(太陽光発電、空気熱)

特にトッテナムは、自然エネルギー発電のため75平方メートルのソーラーパネルを設置しているほか、選手たちが普段練習しているトレーニングセンター全体に空気熱源ヒートポンプを導入し、ホームスタジアムへと電力を供給している。スパーズファンには、ぜひ実際のスタジアムで「スパーズ発電」の明るさを感じてほしい。

現時点で自然エネルギー発電の取り組みは全20クラブ中6クラブのみに留まっており、英国内ではやや物足りない数値として捉えられているかもしれない。しかし、設備投資の面も含めトッテナムのような徹底した取り組みは、日本のサッカークラブも学ぶべき点だろう。

マンチェスター・ユナイテッド 写真:Getty Images

トレンドはプラ削減とヴィーガン食

次に、イギリスのサッカークラブでトレンド化している環境活動について取り上げよう。実はプレミアリーグに所属する全てのクラブが共通して取り組んでいることがある。それは、各スタジアムで営業する飲食店での「使い捨てプラスチックの削減」と「ヴィーガン食品(完全菜食メニュー)の提供」だ。

プラスチック削減については、近年声高に叫ばれているゴミ問題解決のための取り組みだが、ヴィーガン食品の提供は、肉食によって発生するCO2の排出量を抑えるための取り組みだ。「そこまで徹底する必要があるのか?」と疑問視する声も聞こえてきそうだが、プレミアリーグともなれば1試合に訪れる観客は相当な数にのぼる。例えば2023/24シーズンのマンチェスター・ユナイテッドでは、ホームスタジアム(オールド・トラッフォード)の平均入場者数は約7万人。それを踏まえると、スタジアムで食事する観客の多くが肉食を選択した場合、人々の声援と共に大量のCO2が排出される事態が想定される。

国際連合(UN)によると、人から排出される年間のCO2量は肉食から菜食に切り替えることで大幅に削減できるとのこと。その量はヴィーガン食(完全菜食)で最大2.1トン、ベジタリアン食(肉と魚以外の食)では最大1.5トンも減らすことができるとされている。日本のサッカークラブでも取り組みが始まるのか気になるところだ。


プレミアリーグのロゴ 写真:Getty Images

世界ランキング9位、環境先進国イギリス

プレミアリーグの拠点イングランドを含め、イギリス全体が環境保護に関する取り組みを先進的に行っている。2024年6月17日に『持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)』が発表した2024年版SDGs(持続可能な開発目標)の取り組み達成度ランキングで、イギリスは全167カ国中9位、日本は18位となった(1位はフィンランド)。

この結果からわかるように、環境先進国のイギリスではサッカークラブでも環境問題について取り組む姿勢や体制が自然に出来上がっている。これは「サッカーをする場所なのに発電」ではなく「サッカーをする場所でも発電」という考え方が浸透している結果だろう。

近い将来、プレミアリーグで多くのファンが熱狂するパワーを「サポーター発電」として、スタジアムを明るく照らす日が来るかもしれない。

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