『光る君へ』高杉真宙の“違和感炸裂”が面白い まひろ×宣孝に「衝撃はやっぱり強かった」

吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第25回「決意」の放送後には、藤原惟規役の高杉真宙、藤原顕光役の宮川一朗太が登場した。

第25回では、越前にいるまひろ(吉高由里子)のもとに宣孝(佐々木蔵之介)から恋文がマメに届いており、為時(岸谷五朗)からの勧めもあって、まひろは都に戻った。まひろが都の屋敷に戻ると、弟・惟規と惟規の乳母・いと(信川清順)が出迎える。まひろはいとの近くに見慣れぬ男性の姿を見る。その男・福丸(勢登健雄)が「いとのいい人」だと惟規から聞かされ、まひろは驚いた。一方、惟規は乙丸(矢部太郎)が越前からきぬ(蔵下穂波)という女性を連れてきたことに驚く。

劇中、いとと福丸がまひろの荷物を仲睦まじく運ぶのを眺めていた惟規は、「いとは俺だけがいればいいかと思ってたけど、違ったんだなあ、これが」と口にした。「違ったんだなあ、これが」という口ぶりは、のんびり、ひょうひょうとした性格をした惟規らしい物言いだったが、「いとは俺だけがいればいいかと思ってたけど」と言った時、演じている高杉の面持ちがどことなく寂しげに思えた。

高杉はインタビューで「幼いころからずっとつきっきりで見てもらってた、いとにいい人ができるっていうのはどこか寂しい気持ちが最初はありましたね」「自分にだけずっと時間を割いてくれていた、いとが取られちゃうという気持ちが若干あったんですけど、母親代わり的な存在だと思うので」「でもやっぱりその中でも幸せになってほしいって気持ちはすごくあったので、寂しいやら喜ばしいやらっていう気持ちが少しあって、複雑でした」と話した。

高杉が語った言葉は、まひろのある言葉を聞き入る惟規の面持ちに強く表れていた。まひろが「世話になった人には幸せになってもらいたい」と言った時、惟規の顔つきはどことなく切ない。高杉が話していたように、惟規はいとにいい人ができたことに若干の寂しさを覚えている。だが、それと同時に、切なげな惟規の面持ちからはいとに幸せになってほしいという気持ちも深く感じられた。

第25回では、惟規がまひろと宣孝の関係に困惑する演技も面白かった。インタビューでは「目の前で姉さん(まひろ)に対して、(宣孝が)熱い気持ちと熱い歌と熱いまなざしで見ているときに思うのってやっぱり若干……なんだろう、恥ずかしい気持ちもありますし、衝撃はやっぱり強かったですね。不思議な感じでしたね」とコメントしている。高杉はまひろと宣孝の関係に対して「台本にも『違和感炸裂』って書いてあって」と話していたが、それをふまえて、宴の場で2人の顔を交互に見る「違和感炸裂」な表情を見返すとまた面白い。

顕光を演じる宮川一朗太のインタビューも面白い。劇中で顕光は他の公卿たちからの頼みを聞き入れ、「わしに任せよ。きつく言ってやろう、左大臣に」と意気込む。しかし道長(柄本佑)を前にした途端、尻込み、大雨が降りしきる中「今日はよい日でございますな」などとんちんかんなことを言って、道長を困惑させる。

クランクイン前に藤原顕光について調べた宮川は「本当に仕事ができない人間というので有名っていうことを知りまして」と話したうえで、「できない人間なんですが、ただアホにはしたくないなと」「一生懸命やっているんだけど、なんかちょっとズレている」「ものすごくできるわけじゃないんだけど争いや敵は作らない」「人当たりのいい感じというのをちょっと意識した部分はありますね」と語った。

藤原兼家(段田安則)の兄・藤原兼道の長男である顕光と道長はいとこの関係にある。宮川が語った顕光の人となり、またインタビューで語った道長に対する心情を合わせて、あのコミカルな一場面を見返すと、顕光の憎めない人物像がより際立つ。

(文=片山香帆)

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