猛暑のアリゾナ、テスラ車に1歳児が閉じ込められる。突如バッテリー切れ、ドア開けられず

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猛暑に見舞われている米アリゾナ州スコッツデールの町で、テスラModel Yのバッテリーが突然あがってしまい、約1歳半の女児が車内から出られなくなってしまう事故が発生した。

地元のニュース局AZFamilyによると、この問題は祖母が女児を連れてアリゾナ州フェニックスの動物園に向かうところで発生したという。女児をチャイルドシートに乗せた祖母はドアを閉め、助手席側へ回り込んでドアを開けようとしたところで、Model Yがカードキーやスマートフォンの解錠アプリに反応しなくなったと説明した。おそらくこのタイミングでバッテリーがあがってしまったか、電装系統に何らかの異常が発生したと考えられる。

祖母はすぐに911(日本で言う119番)に連絡した。ほどなくして到着したレスキュー隊は斧でテスラの窓ガラスを破り、その窓から女児を救出して事なきを得た。

通常なら、テスラは搭載する12Vバッテリーの電圧が低下するとオーナーに数回、警告を発するようになっている。しかし、祖母は問題が発生するまでにそのような警告は全くなかったと述べており、テスラ側もそのことを確認したとのことだ。

なお、Model Yの後部ドアは電動であり、通常は内部から手動で開けることはできない。ただし、窓を開閉するスイッチ付近に目立たないように非常用の手動ラッチが備え付けられている。だが、テスラオーナーも知らない手動ラッチの位置を、2歳に満たない女児に教えられたとしても、それを使ってドアを開けることはほぼ不可能だっただろう。

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同様の事故はこれまでにも多数の報告があり、目立たないように設置された手動ラッチの使い方をメーカーや販売店が十分に周知していないことがうかがえる。地元ニュース局のABC15は、「その存在を知らないのだから、(閉じ込められても)その存在に気づけないだろう」という地元のテスラオーナーのコメントを紹介した。

自動車安全センターのエグゼクティブディレクター、マイケル・ブルックス氏は、Fortuneの取材に対し、「このような車両の製造方法を規定する連邦基準が存在しないなら、テスラがより安全な方法を選択することは期待できない」「彼らはたいてい派手さを優先し、安全性は最後だ」と述べた。

ちなみに、テスラがバッテリー切れを起こした場合、通常の自動車と同様に他のクルマからジャンプケーブルを使って12V電源を拝借し、EVを起動させることが可能だ。しかしそのためには、テスラの車両前部にあるトーカバーと呼ばれる丸いカバーを開け、その穴からケーブルを引っ張り出して外部電源に接続、するとボンネットが開くので、そこからバッテリーにアクセスし、外部電源を使ってドアを開けるという、かなり面倒な手順を踏まなければならない。今回現場に駆けつけたレスキューも、この手順については知らず、すぐに窓ガラスを破って内部にアクセスする判断をした。

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