熊本市役所本庁舎「NTT桜町ビル跡地」への移転案を市議会に提示 中央区役所は別棟で建設の方針

熊本市役所本庁舎の建て替えを巡り、熊本市は6月24日、移転先を「NTT桜町ビル跡地」とする案を市議会に示しました。また、中央区役所は本庁舎とは別に建てる方針です。

熊本市役所本庁舎の建て替えを巡っては、熊本市が今年3月に基本構想の素案を示し、いずれも熊本市中央区の
▽白川公園(草葉町)
▽城東エリア(城東町)
▽今の庁舎の敷地(手取本町)
▽NTT桜町ビル跡地(桜町)
の4か所を候補地としていました。

市は新しい本庁舎を災害時の防災拠点とするほか、職員の執務スペースの狭さの解消などを理由に、5万2200平方メートル以上の延べ床面積で建築できることを建設地の条件としていました。

なぜ「NTT桜町跡地」に?

市はこの条件をベースに候補地を比較・検討したうえで、NTT桜町ビル跡地を最終的な候補地としました。

市や関係者によると、3か所を除外した主な理由は以下の通りです。

【白川公園】
・公園として市民に利用されている
・災害時の避難場所であり、代替地が近くにない
【城東エリア】
・地権者(日本郵政グループ)などとの交渉が進まない
【現庁舎】
・仮庁舎を別の場所に建設する必要があるなど事業が長期化する(NTT桜町ビル跡地は約4年、現庁舎の場合は約14年)
・今の場所を跡地として利活用できない
・(NTT桜町ビル跡地案と比べて)概算事業費が高額になる

一方、NTT桜町ビル跡地に絞り込んだ理由については、

【NTT桜町ビル跡地】
・交通の利便性が高い
・徒歩圏内に商店街がある
・地権者に売却の意向がある
・この場所への移転で今の庁舎の土地の売却や利活用ができる
などを挙げています。

中央区役所はどこに?

本庁舎を建て替える場合、もう一つの課題が中央区役所の場所です。

現在、本庁舎の中にある中央区役所について、市は6月7日、本庁舎とは別に建てる意向を表明しました。

その場所の候補地は
▽花畑町別館跡地
▽市役所駐車場周辺
の2か所です。

市は、本庁舎と一体化せず分棟にする理由について、熊本城への景観などを挙げてます。仮に中央区役所を本庁舎と一体化した場合、建物の高さは海抜約67メートルになり、「熊本城ホール側(城の南側)からの眺望が悪くなる」としています。

一方、中央区役所を分棟にした場合、本庁舎の高さは市の景観計画で定める海抜約55メートルに収まり、「熊本城の景観は守られる」としています。

熊本市の大西一史(おおにし かずふみ)市長は6月7日の本会議で、区役所を分けて建てた方が消費行動の対象となる中心市街地のエリアは広くなるため、経済効果もあると強調しています。

では、市は建て替えに関する費用はいくらになると見ているのでしょうか。

建て替えにはいくらかかる?

市はこれまでに
・現庁舎の解体
・新庁舎の設計・建設
の概算事業費を約470億円としています。

そのうち約136億円とされる国の交付税措置「合併推進債」を活用することなどで、「実質的な市の負担額は294億円」としてきました。

一方、今回示された事業費では土地取得費などの概算が初めて示されました。

【NTT桜町跡地×花畑町別館跡地】
概算事業費: 約616億円+α

(主な支出)
現庁舎解体費: 約90億円
設計費や駐車場整備費など: 約100億円
新庁舎建設費: 約353億円
NTT桜町跡地土地取得費: 約70億円

(主な収入)
合併推進債など: 約226億円
現庁舎跡地売却費: 約133億円

→実質的な市の負担額: 約255億円

【NTT桜町跡地×市役所駐車場】
概算事業費: 約629億円+α

(主な支出)
現庁舎解体費: 約90億円
設計費や駐車場整備費など: 約100億円
新庁舎建設費: 約353億円
NTT桜町跡地土地取得費: 約70億円
市役所駐車場土地取得費: 約7.6億円

(主な収入)
合併推進債など: 約231億円
現庁舎跡地売却費: 約133億円

→実質的な市の負担額: 約263億円

建て替え案での課題は?

市は二つの案のいずれも、今の庁舎の跡地を売却することなどで「これまで示してきた実質的な市の負担額よりも下回る」としています。

しかし国の合併推進債を市が使うには、来年3月末までに新しい庁舎について実施設計に着手する必要があり、ギリギリのタイミングです。もし間に合わなければ使うことができません。

また市議会の中には、今の庁舎の場所について「売却せず、貸し出すことで利益を得た方がいい」との声もあります。

超えるべき課題は他にもあります。全国的に建築資材は高騰していて、人手も不足しているため、事業費が上振れする可能性もあります。

また中央区役所の候補地は浸水地域にあり、市のハザードマップなどによると、
・NTT桜町ビル跡地: 最大3.97メートル
・花畑町別館跡地: 最大3メートル程度
・市役所駐車場周辺: 最大5メートル以上
の浸水の恐れがありますが、市は今回、具体的な災害リスクなどについては示しませんでした。

一方、市民や市議の一部からは「今の庁舎でも耐震性はある」「費用が高額なため、財政が悪化して市民生活に悪影響が出ないか不安」などの声も根強く、市民の理解も欠かせません。

市はどう進めたい?

そうした中、市は議会での議論を経て今年8月までに本庁舎と中央区役所の建設地を決定し、9月の定例市議会に建て替えの関連予算を提案したい考えです。

また、合併推進債の活用のため、大西市長は9月の定例市議会で関連予算の議決を得たうえで、今年度中に業者と実施設計の契約を結びたい考えです。

© 株式会社熊本放送