【今週のサンモニ】蓮舫氏と『サンデーモーニング』の類似点|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

神宮外苑の再開発は明治神宮のプロジェクト

2024年6月23日の『サンデーモーニング』のトップニュースは、東京都知事選の話題でした。番組は3つの事案をめぐる小池百合子氏と蓮舫氏の発言を紹介しました。

あらためて確信したのは、蓮舫氏と『サンデーモーニング』の主張が非常によく似ていることです。

最初に取り上げたのは神宮外苑の再開発の事案です。

アナウンサー:巨額の予算、膨大な権力を持つことから大統領にもたとえられる東京都知事。木曜日その選挙が告示され、候補者らは火花を散らしています。民間が進める神宮外苑の再開発では…

蓮舫氏:神宮外苑の再開発は一旦立ち止まる。そのことを私は都知事選の争点にしています。

小池百合子氏:今、これが争点になるとおっしゃいましたけど、なりません。なぜなら、今立ち止まっているからです。

蓮舫氏:争点にしないというのであれば、今日この後、都知事名で再要請をしていただけると…

小池百合子氏:事業者が今、改善を進めているところだと承知をしております。

『サンデーモーニング』は2023年9月24日の放送で再開発の懸念を主張しました。

再開発?神宮外苑 イチョウ並木で有名な都民の憩いの場に起きようとしている変化とは?【風をよむ】サンデーモーニング | TBS NEWS DIG フォトギャラリー

神宮外苑の再開発は、公金を一切入れられない宗教法人である明治神宮が、市民にとって重要な存在である明治神宮の内苑・外苑を、公的資金に頼らず維持するために行なうプロジェクトです。そんな殊勝な事業者を『サンデーモーニング』は有無を言わさず、斬りまくったのです。

元村有希子氏(2023年9月24日):この再開発に欠けているものが3つある。
①一つは民主的な手続きだ。住民の方々への丁寧な説明や合意形成のプロセスを軽視してきている。
②それから、生態系の役割への理解が足りない。「木を移植します」と言っているけれども木は部品じゃない。土を含めての生態系を作っている。それから、二酸化炭素を吸収する役割がある。そういったものを軽視し過ぎている。
③もう一つは歴史や文化への理解のなさだ。文化・歴史は新しく作ることもできるが、わざわざ壊してまで作るものではない。イコモスのヘリテージ・アラートも文化的なものの損失に凄く言及していた。
「ノスタルジーとか、木に命があると言っていたら始まらない」と事業者は思っているかもしれないが、そういう時代になってきていることを、もう1回噛みしめるべきだ。

以上は極めて自己中心的な欺瞞に満ちたコメントに他なりません。

権力者が民間事業に介入するのか

まず①について、神宮外苑は基本的に明治神宮の私有地です。

権力者が民間の進める事業に法を超えて介入することは自由主義社会を否定するものです。明治神宮は、神宮外苑を国民が公平に使用でき、施設を低価格で提供するなど献身的な施設運営を行っています。

また、今回のプロジェクトも民主的な法制度に則って環境影響評価を受けています。ここにイコモスが登場して常軌を逸するような不服を述べている状況にあります。

盗人猛々しい、恐ろしい偽善

次に②について、明治神宮は、生態系への役割を十分に配慮してプロジェクトを進めています。

蓮舫氏や元村氏の極めて大きな欺瞞は、神宮外苑と比較にもならない莫大な面積の自然林を好き放題に伐採するメガソーラー建設を推進する一方で、明治神宮の慎重な木々の移植を悪魔化して叩いているのです。

まさに「盗人猛々しい」と言うに相応しい恐ろしい偽善です。

莫大な自然林を伐採して地方に建設したメガソーラーの電気を何の罪悪感もなく利用している東京都民の一部が、都内にある僅かな数量の植林の移設に強烈な不服を申し立てているのは、地方に暮らす人々を完全にバカにした言語道断の差別行為に他なりません。

再考エネルギー:全国で公害化する太陽光発電 出現した黒い山、田んぼは埋まった | 毎日新聞北海道「釧路湿原」侵食するソーラーパネルの深刻和歌山県の大規模山火事、メガソーラーにより「困難な消火活動」に 「2030年に太陽光発電が15%」の目標は非現実的 | ザ・リバティWeb/The Liberty Web

メガソーラー建設を批判せよ

さらに③について、このプロジェクトのそもそもの目的は、東京の歴史と文化を守るためです。しかもイチョウ並木を残すなど、景観に対する配慮も着実と行っています。

元村氏は、歴史と文化を尊重した神宮外苑のプロジェクトに文句をつけるヒマがあったら、奈良の古墳を取り囲んで建設された古代人を冒涜するイカれたメガソーラー建設の批判を優先すべきと考えます。

なお、「木に命がある」というのは、すべての物質には生命・魂が宿るとする寓話的な倫理観を情報受信者に喚起させて自説に導く【物活論の誤謬 animistic fallacy】と呼ばれるよく知られた誤謬です。けっして元村氏の言う「そういう時代」にはなっていません。

情弱が関心を持つプロジェクションマッピング

次に番組が取り上げたのは、情報弱者が関心を持ちそうな都庁のプロジェクションマッピングの事案です。

アナウンサー:2月から東京都庁で始まったプロジェクションマッピングでは2年間で48億円以上が投じられますが…

蓮舫氏:住民税非課税の子ども3人世帯に月2万円の家賃補助をした場合、ちょうど同じ48億円かかります。家賃補助に使いたいと思います。

小池百合子氏:そういう論法はよくあるんですけれども、都庁広場、これまで誰もいなかったところが、今人で一杯です。週末には1万人集まります。

小池氏が指摘するこの論法は、『サンデーモーニング』では、青木氏がよく使う論法としてお馴染みです(笑)。

青木理氏(2019年4月14日):F35は1機百何十億する。100機で1兆円だ。ある種、米国の兵器を爆買いしているのは皆さんご存知の通りだが、イージスアショアなんていうのは、何戦億と言われている。もちろん安全保障上の必要があるのであれば、しょうがない面はあるが、例えば、全国の小中学校で、猛暑でエアコンつけると大体7~8百億円かかる。どうなのかな100億×100機。

この爆買いという表現は専門家から批判を受けました。

F-35戦闘機の購入は爆買いではなく政治的でもない、むしろ逆(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

予算の優先順位を決めるのは、政治家の総合的判断です。必要性の程度や受益の公平性など、全体のバランスが重要になります。全体を俯瞰することなく、バラマキで人気取りするのはどうかと思います。

「ガラス張り」なのに「疑わしい」

『サンデーモーニング』が最後に取り上げたのは、蓮舫氏が強い関心を持っている行政改革です。

アナウンサー:民主党政権時代、特命大臣として行政改革を行ってきた蓮舫氏、

蓮舫氏(VTR):行革もやらせてください。得意分野です。

アナウンサー:小池氏が行政改革で財源を確保したと強調した際には…

小池百合子氏(VTR):これまで続いてきた既得権を切って行くことで1000億円の財源をねん出し、この8年間で8100億円にのぼりました。

蓮舫氏(VTR):1000億円、事業評価で財源確保というのは疑わしいと思っています。バックデータの予算のデータも非公開です。

小池百合子氏(VTR):数字については「見える化」を徹底して行っていますので、どうぞ全部出ていますのでご覧下さい。

アナウンサー:投開票日は来月7日です。

小池氏の言う通り、東京都には「都財政の見える化ボード」という都財政に特化した情報サイトがあり、財政の状況(予算・評価・決算・財務諸表・補助金)がいわゆる「ガラス張り」になっています。

・TOKYO予算見える化ボード
・TOKYO政策評価・事業評価・グループ連携事業評価見える化ボード
・TOKYO決算見える化ボード
・TOKYO財務諸表見える化ボード
・TOKYO補助金サーチ 見える化ボード

特に、『TOKYO政策評価・事業評価・グループ連携事業評価見える化ボード』を見れば、政策評価・事業評価・グループ連携事業評価に関するデータをCSV形式で簡単にダウンロードすることが可能です。

TOKYO政策評価・事業評価・グループ連携事業評価見える化ボード|財政|東京都財務局

このように「バックデータの予算のデータ」が明確に「公開」されているのにもかかわらず、蓮舫氏はこれを「非公開」と主張した上で、「事業評価で財源確保というのは疑わしい」と結論付けています。

この公開情報の存在にもかかわらず、根拠もなく「疑わしい」とするのは、残念ながら政治家に求められる論理的な資質に問題があると考えられます。

このような事実に対する態度も、ハマスの実在の画像をAIフェイク画像と根拠なく認定した『サンデーモーニング』とよく似ています。

「言ったもん勝ち」

さてそこで、蓮舫氏と『サンデーモーニング』はなぜ似ているのでしょうか。

それは、政権批判を至上命令とし、少しでも批判できる可能性があるネタを見つけたら、弱者の味方という安易な免罪符を振りかざしながら、本能的にとびついてしまうという共通したサガから来るものと推察します。

蓮舫氏と『サンデーモーニング』が追求しているのは「事実に基づく批判」というよりは「言った者勝ち」であり、勝利するためには暴走も辞さないのです。

しかしながら、このような批判ありきの批判は、後にブーメランとなって帰ってきます。このダブル・スタンダードは、多くの人たちが繰り返し見させられてきた光景です(笑)

藤原かずえ | Hanadaプラス

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