仕事にプライベートは、持ち込まない派? うまく利用して活かす派⁉ 一流の上司が絶対にやらないことは、平安時代も同じだった 【NHK大河『光る君へ』#25】

*TOP画像/為時(岸谷五朗) 25話(6月23日放送)より(C)NHK

紫式部を中心に平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第25話が6月23日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。

最愛の娘の頼みでも例外なし。紙1枚だって私的使用を許さない為時

まひろ(吉高由里子) 為時(岸谷五朗) 25話(6月23日放送)より(C)NHK

雪が降る冬のとある日、為時(岸谷五朗)が訪れた村では、女たちが紙をすいていました。この村の人びとには租税として紙 ※1 が課されているため、紙つくりに勤しんでいるのです。

まひろ(吉高由里子) 25話(6月23日放送)より(C)NHK

為時が納められた紙の確認をしていると、まひろ(吉高由里子)は「これが あの紙なのですね」「一枚頂いても よろしいかしら」と満面の笑顔で口にします。

為時は「ならぬ」とまひろを厳しく注意します。一枚くらい…と譲らない娘に、彼は「これらは 民人らが納めた租税であるぞ」「全て 都に送るのだ」と説明します。書物が好きなまひろが紙に心惹かれる気持ちを為時は十分すぎるほど理解しているはず。それでも、紙が欲しいという娘の頼みをズバッと断るところには、為時の真面目さ、不正や特権を許さない信念がうかがえます。

さらに、為時は決められた租税よりも納められた紙が多いこと、そしてそれは国守の懐に入る分としてこれまで納められてきたことに気づきます。

権力や地位におごりたかぶらない為時ですが、民を守るため、あるいは社会の歪を正すためであればその地位の利用を躊躇しません。このような者が上に立てば、民の暮らしは少しでもラクになると期待できますが、現実はそうあまくはないようです。

為時が男に余分な紙を返すと申し出ると、「紙は お返しいただかなくて結構でございます」「手前どもは 今のままでようございます」「恐れながら 4年で 都にお帰りになる国守様には お分かりにはなりますまい」と言われます。長期間にわたって抑圧されてきた弱き者は、救いの手を容易につかむことができないのです。この男は為時の温情を受け入れたばかりに、この国守が去ったあとに自分たちにさらなる困難が降りかかることを予想しているのでしょう。

為時のような賢く、わずかな不正も許さず、民を思いやる国守によって、越前はどのように変わっていくのか今後の展開が楽しみですね。

※1 平安時代において紙は高級品であり、上流貴族しか手にできなかった。越前和紙は日本に紙が渡来した4~5世紀頃にはすでに作られていた。

帝の失敗を自分事として捉える道長。民を最優先に動きたいが立場的に困難な場面も

道長(柄本佑) 25話(6月23日放送)より(C)NHK

同じ頃、道長(柄本佑)は民のために左大臣としの仕事に都で忙しくしていました。

道長は安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)から都に凶事が続くだろうと聞かされます。

安倍晴明(ユースケ・サンタマリア) 藤原道長(柄本佑) 大河ドラマ「光る君へ」25回(6月23日放送)より(C)NHK

安倍晴明によると、地震、疫病、日食、嵐、大水の全てが都で起こるというのです。さらに、「災いの根本を取り除かねば何をやっても無駄にございます」と、道長は告げられます。

この“根本”というのが、どうやら一条天皇(塩野瑛久)のよう。彼は定子(高畑充希)を愛するあまり政をおろそかにしていました。鴨川の堤の修繕を早急に行わなければ一大事になると懸念されていたものの、一条天皇は急ぐには及ばずと関心を向けません。さらに、大宰府から戻った伊周(三浦翔平)を身内だからと贔屓したため、実資(秋山竜次)など帝を非難する貴族も出てきました。

一条天皇が政を怠り、定子にぞっこんになっている間、安倍晴明が予言したとおり都が大水に見舞われ、鴨川の堤が崩れて多くの民たちが犠牲になりました。

道長は一条天皇に堤の修繕を繰り返し頼み、帝の許しがないまま修繕に入りましたが、結果的には対応が遅れてしまい、民を守りきれなかったことを悔いています。この事件を「早く修繕を始めなかった私の煮えきらなさゆえ」とし、左大臣の職を退きたいと申し出ます。

ききょう/清少納言(ファーストサマーウイカ) 藤原道長(柄本佑) 大河ドラマ「光る君へ」25回(6月23日放送)より(C)NHK

道長が政を率いようと思ったきっかけは、最愛の女性であるまひろとした“あの夜の約束”です。しかし、彼はまひろとの約束を守るためだからと、政を私的利用するようなことはありません。このことは、自分の犯した過ちは地位を捨ててでも責任を取ろうという決断にも表れています。

また、一条天皇は民に比較的寄り添っていた時期もありましたが、自分が恋に現を抜かしたせいで、多くの民を犠牲にしたことはさほど気にしていないようです。当時、貴族にとって民は守るべき存在ではなかったため、彼の反応はある意味では自然なのでしょう。

民中心の政を目指し、愚直なまでに誠実な道長は今回の失敗を繰り返さないよう、安倍晴明が予言した都の災いにどのように対応していくのだろうか。次週以降の彼の活躍も期待できますね。

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