弟と「再会」あきらめず 雨でぬかるむ中、不明者の捜索再開 石川県警、手掛かり発見に懸命

行方不明者の捜索を続ける石川県警機動隊員や建設作業員=24日午前11時、輪島市市ノ瀬町

  ●輪島・市ノ瀬町で垣地さん見守る

 石川県警は24日、能登半島地震による土砂崩れが発生した輪島市市ノ瀬町で、行方不明となっている男性1人の捜索を再開した。二次被害の恐れがあるとして、3月5日以降、捜索を中断し、安全確保のための応急対策工事が進められていた。前日の雨で足場がぬかるむ中、重機で土砂が掘り返され、機動隊員約20人が男性の発見につながる手掛かりを注意深く探した。

  ●兄「一筋の光」

 行方が不明なのは、瓦ぶき職人の垣地英次さん(56)。兄弘明さん(59)=金沢市=は祈るような表情で捜索の様子を見守り「ようやく再開された。一筋の光が見えたようだ」と望みをつないだ。

 英次さんは昨年11月に母親が亡くなり、実家で1人で暮らしていた。弘明さんは毎週末、自宅から崩落現場に通い、この日も前日に近くの河原田公民館に泊まった。正月は兄弟一緒に、テレビで駅伝を見る約束をしていたといい、「気持ちは1月1日から変わっていない。待ってるので早く出てこい」と語った。

 市ノ瀬町では約170万立方メートルの土砂が崩れた。応急の対策工事が完了したものの、危険な状態が続き、14世帯が長期避難中。現場は梅雨の出水に備え、土のうで二重に囲まれている。

 捜索には約40人が参加。対策工事を担った国土交通省の職員や建設作業員も加わった。県警災害対策課の竹原和宏次席は「一日も早く発見できるよう、全力を尽くす」と語った。

 県警によると、輪島市では名舟町と町野町寺山の2カ所でも2人が行方不明となっているが、捜索再開のめどは立っていない。

再捜索の様子を見守る垣地弘明さん=24日午前9時半

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