求人誌で見かける「月収50万」「手取り30万円」という求人。どこまで素直に信じていい?

求人票の給与と実際の給与は異なる場合がある

企業は求人票に採用時の給与を記載すべきですが、「実際の給与だと募集が来ない」などの理由で、実際の給与より高い額面を提示する場合があります。本来ならばこのような「詐欺求人」は法律違反ですが、程度によっては即違法とまで言い切れないのが現状です。

企業は、求人票に提示した金額を下回る給与に変更する場合、採用面接時や入社時に給与の変更について説明したうえで双方の合意を得る必要があります。

しかし、言い換えれば「事前説明さえあれば、ある程度求人票の給与はかさ増しをしてもよい」とも捉えられてしまいます。極端に条件と異なるものは「詐欺求人」と認められますが、実際は法律に触れるか否か微妙なものがほとんどです。

採用通知の後、引っ越しや退職手続きを済ませてしまっている場合もあるでしょう。もう一度職を探す不安や収入の空白を避けたいために、労働者側は急な給与の変更を説明されても合意せざるを得ないケースもあります。

そのため、求職活動をする際は、求人票の給与の記載方法を注意深く見る必要があります。また、採用面接時には給与についてよく確認を取ることが大切です。

求人票で注意すべきフレーズ

本項では、提示された給与と採用後の給与が異なる求人票でよく見られるフレーズを3点紹介します。表記されているからといって必ず給与の引き下げが起こるとはかぎりませんが、以下のフレーズには注意しましょう。

見込み

求人票の給与欄に記載された「見込み」という言葉には、採用段階である程度給与が変動する意味が含まれています。

実際は、採用面接時や試用期間中の能力を見て、支給すべき給与を決めるためのものと予想されますが、企業によっては最初から給与を下げる前提で「見込み」と記載しているかもしれません。

求人票に「見込み」の記載がある場合は、そこからある程度給与が下がる可能性を考慮しましょう。

固定残業代含む

求人票の月給の欄に「固定残業代含む」と記載してあり、基本給について明確な金額の記載がない求人には注意が必要です。一見すると高い給与のように見えても、実際は基本給が低いだけかもしれません。

このような求人は給与内訳の全貌があいまいにされているため、企業側である程度給与額をコントロールできてしまいます。求人票の給与を見るときは、基本給の金額が明記されているか確認しましょう。

求人票の給与と採用後の給与が違ったときの対処

求人票の給与と採用後の給与が異なる場合、まずは会社へ理由の開示を求めましょう。会社側が求人票の給与と実際の給与が違う事実を認識していなかった可能性があるため、確認の意味も込めて問い合わせる必要があります。

また、本来なら企業が給与の変更を行うには合理的な理由が必要となるため、一方的に給与を変更することはできません。給与を変更する場合には、変動する額面の大きさにかかわらず、十分な情報提供と理由を説明する必要があります。

採用後に引っ越ししていた場合は必要な費用を請求できる

採用時と実際の労働条件が異なる場合、労働基準法第15条2項において、労働者は契約を即座に解除できます。このとき、契約解除日から14日以内に帰郷する場合は、必要な旅費を企業に負担してもらえます。

これは労働基準法第15条3項に明記されているため、法的な拘束力を持って請求可能です。そのため、就職にあたって引っ越しを済ませていた方でも、無駄な出費をしなくて済みます。

正確な給与は雇用契約書を確認しよう

求人票の給与は採用後に変更される可能性があるため、採用面接時や入社前には必ず給与のことについて確認を取っておかなくてはなりません。

正確な給与は雇用契約書に必ず記載されているため、採用時に求人票の給与が保証されると考えず、契約内容を今一度確認することが大切です。

出典

デジタル庁 e-GOV法令検索 労働基準法
デジタル庁 e-GOV法令検索 職業安定法
厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク 固定残業代 を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。
厚生労働省 確かめよう労働条件 Q&A 雇用契約 Q 求人票や求人広告に書いてあった給料や勤務時間などの条件が、採用面接で説明された条件と違っていた場合は、どうすればよいのでしょうか?
厚生労働省・愛知労働局・ハローワーク 求職者とのトラブル防止のために、求人内容を明確に記載しましょう!

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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