宿泊税は「客足が遠のく」 観光促進のため導入予定も、宿泊事業者・旅行客からは不安の声も 愛知・常滑

東海地方の空の玄関口、愛知県常滑市で2025年1月から「宿泊税」が導入されます。観光促進のための施策ですが、一部の関係者からは、むしろ「客足が遠のく」と不安の声が上がっています。

常滑市の中部国際空港。新型コロナの影響で、一時は便数ゼロとなった国際線も、コロナ禍前の6割まで回復し、大型連休中は賑わいを見せました。

空港の周辺には大型ホテルが立ち並んでいます。市内あわせて39の宿泊施設では、年間約80万人の利用があります。そんな中、常滑市が打ち出したのが…宿泊客から徴収する「宿泊税」です。

常滑市の宿泊税は、市内のホテルや旅館などに宿泊する人すべてに対し、1人あたり200円を宿泊料金に上乗せして徴収します。2025年1月6日から導入予定で、始まれば東海地方で初の取り組みです。

導入の背景にあるのは、「空港周辺に訪れる客が市街地にまで足を運ばない」という問題です。

伊藤辰矢市長:
「ちょっと(空港島から)橋を渡れば、飲食店もいっぱいある。時間つぶしをする観光地もあるということを、われわれが伝えきれていない。そこが恐らく、かみ合っていない。空港や国際展示場の背後にある地域としての魅力を上げる」

市は宿泊税の導入で年間約2億円の税収を見込んでいます。集めた税金の使い道は、空港周辺と市街地を結ぶシャトルバスの運行や、夜間の観光や飲食の充実、多言語に対応した観光案内の整備などにあてたいとしています。

伊藤辰矢市長:
「本当にわれわれにとってはもったいない状況だし、利用者も不満が残る部分が出ているので、(宿泊税の活用を)やれば、地元の飲食店や店は今の何倍も多くの人に来てもらうことは、想像がついている」

宿泊事業者は「宿泊料金に上乗せはできない」

市内の飲食店からは期待の声が聞こえてきます。愛知県産の食材を使った料理を提供するレストランは…

共栄窯 鈴木雄太店長:
「市の積極的な姿勢については期待している。(宿泊税を活用して)市全体で盛り上がればいいと思う。国際展示場もあるので、そこに来た客が空港島だけでなく、市街地にも来ていただけると、魅力が詰まっているので楽しんでほしい」

しかし、「宿泊費の安さ」をアピールしてきた一部の宿泊事業者からは、むしろ客足が遠のくことを心配する声も…

宿泊事業者:
「大反対です。コロナで散々痛めつけられて、ようやく景気が上向くかなという矢先。1円でも安くという考えがあるので、100円、200円は大きい」

別の宿泊事業者も…

宿泊事業者:
「安い料金でやっていた中で、200円料金が上がるというのは痛手で、物価上昇にあわせて料金を上げたばかりなので、さらに200円上げるというのは、他と競い合う時に大きい」

宿泊料金に上乗せはできないと話します。

宿泊事業者:
「自分たちでお金を支払って、客には通常料金でやってもらう。全体が上がっているので、その中で客から増額するのは難しい」

宿泊税に旅行客からは賛否

反対する宿泊事業者に対し、伊藤市長は…

伊藤辰矢市長::
「(宿泊税を)徴収する事業者には、丁寧に説明していくつもり。ただ、今やらないと、数年後の(観光客の)需要に対応できない。コロナ前を超える旅客数が戻ってくると思うので、安さじゃない価値を事業者と見出しいてきたい」

一方、宿泊税を支払う客はどう受け止めているのでしょうか。常滑市内に住む息子夫婦によく会いにくるという県外在住の女性は…

女性:
「(宿泊税を払うのは)問題ないと思います。京都はホテル(の値段)によって違うし、入湯税があったりする(地域もある)。観光を受け入れるには資源が必要なので、徴収していいと思う」

コンサートのために頻繁に空港を利用するという女性は…

女性:
「北海道から来ていて、ただでさえ(交通費が)高い。今まで(宿泊税は)なかったから、そのままの方がありがたい」

記者:
「1泊1人につき200円」

女性:
「今回3泊したから600円? 大きいね。ちょっとした食事代になる」

現在、宿泊税は東京都や大阪府、京都市など、9つの自治体が導入していて、今後も30を超える自治体で検討が進んでいます。

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