20代会社員の孫が「奨学金の返済でお金がない」と言います。一括返済してあげたいのですが、奨学金は教育費なので贈与税はかかりませんよね?

奨学金の繰上げ返済

日本学生支援機構の奨学金返済(返還)は、卒業までに借りた総額で返済年数が決まります。Aさんの孫は4年間で約400万円を借りたので、毎月約1万8000円を20年間、返済する予定だそうです。

卒業したときが23歳なら完済するのは43歳。その頃には結婚して子どもが生まれ、住宅ローンの返済もしているかもしれないと考えると、奨学金の返済は大きな負担となるでしょう。Aさんが孫のために一括返済してあげたいと思う気持ちもよく分かります。

住宅ローンと同じように、奨学金も繰上げ返済ができます。繰上げ返済の方法は「全額繰上返還」と「一部繰上返還」の2つ。一部繰上げの場合、繰上げ返済の金額に応じて返済期間が短くなります。

祖父母からもらった教育費は非課税?

祖父母から贈与されたお金にかかる贈与税についても知っておきましょう。基本的に、1年間(1月1日〜12月31日)に110万円を超える贈与を受けた場合には、贈与税がかかります。

ただし、祖父母が孫の生活や教育に通常必要と考えられる費用を出してあげた場合、それは扶養義務の範囲という考えから、非課税として扱われます。非課税額の上限は定められていませんが、必要な金額を必要な時に渡していなければなりません。

例えば、孫の入学金や授業料をその都度、祖父母が払う場合は1年に110万円を超えていても非課税ですが、孫の入学時に卒業までの授業料を4年分まとめて一括で渡した場合は、入学時に必要な費用以外が贈与税の対象となります。

Aさんが孫の奨学金を一括返済する場合は?

今回のケースについて考えましょう。まず、奨学金返済は教育費といえるでしょうか。Aさんの孫は、大学の授業料に充てるためのお金を4年間で約400万円、奨学金という形で借りました。大学の授業料は教育費ですが、卒業後に奨学金の返済に充てるお金は教育費には当たりません。

Aさんの孫の奨学金返済は、まだ350万円以上残っています。祖父が孫の奨学金を一括で返済してしまえば、110万円を超えた部分に贈与税が課税されます。

350万円を贈与した場合の贈与税額を計算してみましょう。

__課税価格:350万円-110万円=240万円

贈与税額:200万円×10%+40万円×15%=26万円__

贈与税がかかるのは贈与を受けた側ですので、贈与を受けた翌年にAさんの孫が申告をして、26万円の贈与税を納付します。そこで、贈与税がかからないように孫を援助する方法を考えます。

非課税の範囲で援助する方法

Aさんの孫の奨学金を一括返済できる金額をまとめて贈与すれば、贈与税が課税されますが、数年に分けて非課税の範囲(年間110万円)以内で贈与すれば、贈与税が課税されることはありません。

そこで、1年に100万円ずつ3年間贈与し、その都度一部繰上げ返済していくプランをAさんに提案しました。その間、孫は毎月の返済を続けることになりますが、3年後には完済できるでしょう。

援助を決める前に検討してほしいこと

Aさんには検討してほしいことを2つ、お話しました。まず、老後資金が足りているかです。Aさん夫婦はともに70代。今後20年くらいは生活に困らないようなマネープランを立てておくと安心です。そして余裕資金があれば、その中から孫への援助を考えましょう。

もう1つは他の孫とのバランスです。Aさんには3人の孫がいます。そのうち1人だけに300万円を援助すれば、いずれ相続のときにトラブルの種になるかもしれません。子どもや孫にはできるだけ公平に、バランスを取って援助することが重要です。

まとめ

Aさんが孫の奨学金を一括返済してあげると、基礎控除額110万円を超える部分に贈与税がかかります。非課税の範囲で贈与したい場合は、1年間に110万円以下の金額で、数年に分けるとよいでしょう。ただし、自分の老後資金をしっかり確保した上で、他の孫とのバランスも考えながら、贈与を決めましょう。

執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者

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