「180のベッドがこつ然としてなくなった」 佐世保「杏林病院」破産手続き開始決定で地域への影響は

長崎県佐世保市の「杏林病院」の運営法人が6月20日に破産手続き開始の申し立てを行い、翌日、開始の決定を受けた。負債額は約11億7000万円にのぼる。半世紀にわたり地域医療を支えてきた病院の破産が及ぼす影響は大きい。

医療スタッフ140人と入院患者90人

佐世保市早苗町の「杏林病院」を運営する医療法人「篤信会」は6月20日、長崎地裁佐世保支部に破産手続き開始の申し立てを行い、翌日、手続き開始の決定を受けた。

負債額は約11億7000万円。民間の信用調査会社帝国データバンクによると、外来・入院患者の減少などで2024年3月債務超過状態に陥り、資金繰りが悪くなったという。

病院には常勤の医師8人を含む約140人が勤めているほか、約90人の入院患者も抱えていて、これから転院などを行うとみられる。

通院する人は「みなさん口々に待合室でこれからどうなるんだろうと話していた。担当の先生にきょうも相談して、次の病院を話し合って決めてきた。地域の者としてはすごく助かった病院で心強い病院だった」と話し、戸惑った様子だった。

180のベッドがこつ然としてなくなった

1974年に開業した「杏林病院」は個人病院が前身だ。半世紀にわたり佐世保市の地域医療を支え、夜間や休日に患者を受け入れる輪番病院の役割も担っていただけに、佐世保の地域医療に与える影響は大きい。

救急の受け入れ態勢の構築を行っている市は「ゼロから態勢を練り直さなければ」と頭を抱えている。

佐世保市役所 井上文夫 保健所長は「180のベッドがこつ然としてなくなった。地域にとってはかなり大きな影響といえる。大切なのは入院患者を速やかに他の医療機関に転院させること。行政としてもやれることは何でもやろうと思っている」と語った。

佐世保市医師会は、現在スムーズに入院患者の転院が行えるよう各病院の受け入れ態勢などの取りまとめを進めている。

医療機関の破産は増加傾向

医療機関の破産は2023年度から急増している。帝国データバンクによると、全国で2023年度に破産した医療機関は55件。前の年度より17件増えていて、長崎県内でも2022年に長崎市内の病院が破産している。

帝国データバンクは、患者が最新鋭の医療サービスを受けるため県外の医療機関を選んでいるのではと分析している。

(テレビ長崎)

© FNNプライムオンライン