【グッバイ諭吉】新紙幣発行まで残り2週間 券売機や自販機の対応に悲鳴「その予算が出せない」 新1万円札 渋沢栄一ゆかりの町 記念グッズで盛り上がる

7月3日の新紙幣発行まで残り2週間となったが、街の人はどう思っているのだろうか。

「生まれてから紙幣が変わっていないので、初めて変わるから楽しみ」(14歳の北海道民)

「最近は現金をあまり持ち歩かない。チャージをする時くらいしか新紙幣を見ないのではないか」(北海道民)

「いま持っている紙幣や、出し入れするATMはどうなるのか」(北海道民)

20年ぶりの新紙幣発行だ。

スムーズに移行できるのだろうか。

新紙幣非対応の券売機

札幌市白石区のラーメン店「知床鶏麺チキンクレスト」では、注文の際に券売機で食券を購入するシステムを採用している。

「この券売機は前からある古いタイプ」(知床鶏麺チキンクレスト 堀田 翔午さん)

券売機は新紙幣に対応していないという。

新しい機械を導入しない理由があった。

「新紙幣に対応するためには15万~20万円くらいかかる。ラーメンを何杯売ればいいのだろう。150~200杯売って、やっとそれだけの金額になる」(堀田さん)

更新のための費用が重くのしかかる。

新紙幣しか持ち合わせていない客が来店した場合、どう対応するのか。

「旧紙幣をとっておいて、両替で対応しようと思っている」(堀田さん)

旧紙幣と交換した上で、券売機を利用してもらうことにしている。

新紙幣非対応の自動販売機

札幌市豊平区の福住バスターミナルでは、新たに食品の自動販売機が設置されていた。

この時期に設置されたのは新紙幣対応のためなのだろうか。

「こちらは2年前に買った機体なので新紙幣には対応していない。『旧紙幣を使用してください』と張り紙をしている」(ハシエンダインターナショナル 氷室 信康社長)

自動販売機内部の紙幣を判別するシステムの更新が必要になるが、全国から業者に問い合わせが殺到しているとのこと。

交換には早くても1年かかる見込みだ。

さらに、その費用も。

「約30台所有しているので、更新には100万円近くかかる。今その予算が出せない。新紙幣になることでプラスになることは特にない」(氷室さん)

やはり、費用が問題のようだ。

隣の自動販売機には、新紙幣対応のシールが張られているが。

「大手の会社なので対応が完璧なのでは」(氷室さん)

新紙幣発行の背景

利用者に負担を強いてまで、なぜ新しい紙幣を発行するのか。

それは偽造対策だ。

現在の紙幣が発行された20年前と比べ、カラーコピーなどの技術が進歩し偽造のリスクも増加している。

そこで、今回「3Dホログラム」を導入した。

紙幣を傾けると肖像画の顔の向きも変わるという世界初の技術だ。

清水町では歓迎ムード

20年前、現在の紙幣が発行された時には、札幌市内のデパートで原寸大の「お札サブレ」が売り出されるなど大きな盛り上がりを見せた。

そして今回、早くも盛り上がっている町がある。

人口約8800人、北海道十勝地方の清水町だ。

駅前にある清水町の地図には、『渋沢栄一ゆかりの地』と記されている。

新1万円札の肖像に描かれている渋沢栄一。

明治時代に現在の「サッポロビール」など国内500以上の企業の設立にかかわり、「近代日本経済の父」と呼ばれている。

渋沢栄一と清水町の縁

清水町役場には垂れ幕が掲げられるなど、町のいたる所で歓迎ムードが広がっている。

清水町と渋沢栄一にはどんな縁があるのだろうか。

「町内に熊牛という地区がある。そこに渋沢栄一が農業を発展させるため小屋を建てた」(清水町民)

1898年、渋沢は現在の清水町熊牛地区に「十勝開墾合資会社」を設立した。

当時、北海道では最大規模の農場を造り、畑作や酪農を行い、開拓に努めた。

その会社が大正時代に建てた牛舎は、100年以上たった今も現役で使われている。

町の礎を築いた渋沢が新紙幣に起用されることに、清水町は沸いているのだ。

「清水町にゆかりのある人の紙幣を使うのが楽しみ。グッバイ諭吉!」(清水町民)

新紙幣発行にあわせたイベントも

清水町では新紙幣が発行される7月3日に記念式典を行い、町内の小中学校の給食で渋沢の出身地、埼玉県の郷土料理を提供することにしている。

「十勝開墾合資会社で農業を始めたその精神が脈々と受け継がれ、今の清水町があるのだと思う。おいしい農産物を、そのおかげでとれるようになった。おいしいものを届けるのが私の役目だと思う」(清水町 阿部 一男 町長)

新紙幣の発行にあわせて、こんなことも行われる。

「お待たせしました。こちらが『渋沢栄一どら焼き』です」(銘菓と洋菓子 静月 只野 敏彦さん)

「渋沢栄一どら焼き」とは、どんなものなのだろうか。

実は、焼き印で似顔絵が描かれたどら焼きだ。

十勝地方産の小豆をふんだんに使い、甘い仕上がりになっている。

町内ではこれを含めてあわせて7店舗で、渋沢の焼き印入りの記念商品を販売する。

「商売をやっているので、日本経済の発展のもととなった人物をすごく尊敬している」(只野さん)

新しい機械の導入ができず困る人がいる一方で、町をあげて喜んでいる人たちもいる。

新紙幣発行は2週間後に迫っている。

© FNNプライムオンライン